TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

イギリスにも夏が来た。打ち明けてからというものの、マタニティグッズが届いたりベビー用品が突然配達されたりと祝ってるのか煽っているのか分からないが配慮は増えた。そして俺自身はいくら体がだるいといっても運動はしなければならないもので、夜だけは外に出て散歩をしている。

菊もこの間オランダが日本に来たと、にこやかに言ってきたため200年ぶりの仲を取り戻せたのではないだろうか。あちらの夫婦仲が良いところでこっちは散々である。


「アーーーサーーー!!」

毎朝門でそう叫ぶアルフレッドがいるのだ。最早ここまでくるとあの声が目覚ましのようだ。1度だけエドワードが哀れに思って屋敷に入れたのだが、その時は一直線に俺の部屋まで来たらしくガードマンが大層頑張ってくれたらしい。 予定日まであと2ヶ月となった。




「マシュー。君なにか知ってるだろ」

何をしても家に入れてくれないアーサーに別の理由があるのではとカナダの家へ向かってきた。片手に本を持ち、もう片方に紅茶をいれたカップを持ったマシューは慌てふためくことなくいつもの顔をしていた。するとアルフレッドは顔近くまで迫ってきた。それでもマシューは顔色を変えない。

ふぅーとため息をつくと熱いカップをアルフレッドの頬に押し付ける。

「あづ!!!」

「そう血気盛んにならないでよ。ほら、さっきクッキー焼いたから食べな」

先程の様子は何だったのかというほどアルフレッドは落ち着き、静かにクッキーを頬張る。ひとまず僕もおさめるしかないかないのかとマシューはまた本のページをめくり出す。サクッと音を立てモグモグと頬を膨らませていると


「,,,お腹の子の父はフランシスなのかい?」

「,,,え?,,,は?」

なぜフランシスの名が出てきたのかマシューは困惑したが、よく考えてみれば昔から2人はあの人たちを見ていた。おやすみと言い部屋を出る時にはフランシスが出待ちをしていたし、船に乗っていた時もフランシスはアーサーと一緒だった気がするのだ。

もう1枚と手を伸ばした手が止まり、アルフレッドはうなだれる。マシューはその光景に呆れた。やはりこの人たちはアーサーさんのことを考えず、己のことしか考えてないのだと。

カップを置き、ペンに持ち替え引き出しから紙を出す。アルフレッドは徐々に顔を上げ何を書いているのかと覗く姿勢にしたが、覗く前に書き終えたようでスっと椅子からたつと奥で何かカチャカチャと触り、バシッと手紙を顔面に 押し付けられた。

「な、なにするんだい!」

「それ。ガードマンでも使用人でもいいからこれを【エドワードに】って渡しな。」

「え,,,?なにこれ」

「中身はみないでね。絶対」

「う、うん。」



【アルフレッド目線】


アーサーが妊娠した。俺もあの人とそういうことはしたけれど、フランシスもしただろう。だって見てきたのだから。せめて真実だけでも知りたいと思って何回も訪ねているのにガードマンに拒否され、エドワードにも申し訳ございませんと頭を下げられる始末。最終手段としてマシューに聞いてみれば中身を見てはいけないものをエドワードに渡せと言われる。

一体何が起こっているのだとここまできたら怒りが込み上げてくるが堪える。


アーサーの屋敷の前まで来た。いつも通りガードマンがスっと手を出してくる。

「申し訳ございません。カークランドはお会いしたくないと申し上げております。」

「これ。エドワードに渡してくれないかい?なんか返事があるまで静かに待っておくからさ」

「え?手紙、ですか?,,,はい。承知しました」

待っている間空を見上げているとギィと音がする。振り向くとエドワードがいた。仰向けにした手のひらを屋敷の中に指している。その瞬間、やっと許可がおりたのだと走って向かう。

「どうも!すまないね!」

「いいえ。これまで申し訳ございませんでした。お部屋は,,,分かっていらっしゃいますね」

「もちろんさ!,,,でもどうして?」

「,,,さぁ。どうしてでしょうかね」

少し笑みを浮かべたあと、エドワードは下がっていった。


ノックは3回。まずは名乗り出てそれから要件を言う。許可が入ったのなら部屋に入れ。


コンコンコン


「,,,アルフレッドだ。君と話がしたい」

数秒沈黙が続く。第2関門がここで来るかと思い少し気が落ちる。

「,,,,,,入れ」「!!!」

勢いよくドアを開けたかったが大人の姿を見せようと思ってゆっくり開ける。

アーサーはベッドの中にいた。体は起こしていたけれど体調が悪そうだった。

「すまないね。急に」

「別に今までの見てたら急でもねぇよ。こっち来い」

「うん」


用意されている椅子に座らずそのまま真っ直ぐ近づき立膝をする。ぎょっとした顔をしたが、気にせず質問する。

「もっと詳しく教えてくれないかい?」

「,,,会議で言ったことが全てだ」

「会議でも言ってないことだよ。父親は誰なんだい?」

「,,,!」

「,,,やっぱりフランシスなのかい?」

「,,,はぁ?」

そうなのだと思い立ち上がる。

「やっぱり!そうだったんだね!じゃあ子供はどんな舌になるのかなぁ。遺伝はどっちに偏るんだろう,,,」「おい」

「あっ俺とマシューのことなら気にしないで!弟ができたようなもの,,,」

「アルフレッド。聞け」

あの会議後のような声が響く。スっとアーサーが立ち上がりクローゼットの方へ向かう。

「ちょ、アーサー大丈夫なのかい?」

「ほら。見ろ」

見せつけられたのは子供のDNA検査表。

父親の欄に【アルフレッド・F・ジョーンズ】と名前が書かれていた。思わずくしゃっと紙を寄せつけてしまう。アーサーの顔と紙を行ったり来たりしながら見返す。

「,,,え?,,,,,,俺、なの、かい?」

「,,,あぁそうだよ。秘密にしとくつもりだったんだけどなぁ,,,,,,どうだ?パパになる気分は」

「,,,,,,,,,」

「,,,アル?」

「,,,,,,,,,ッッッッ最高だよ!!!」

腰を掴み持ち上げる。

「うっっわぁ!何すんだお前っ!」

「あはははは!とんでもなく嬉しい!」

「,,,泣くなよ」

「泣いてないよー!」

「降ろせ。さすがに怖ぇ。」

「はーい」

降ろされたあともギュッと抱きしめる。

「,,,嫌じゃないのか?」

「言っただろ?最高で嬉しいよ。ありがとう」

「,,,はっ。そっか。」

アーサーがすっと突き放す。

「でも、これ以降お前とはああいう行為はしない。これはフランシスにも言ったからな」

「ええー。パパとママは愛し合ってなきゃダメじゃないか!」

「うるせぇ!」

そのとき、スマホがなる。仕事からだ。

「,,,ほら。行ってこい。今は自分優先で行け」

「,,,うん分かった。アーサー。本当にありがとう。」

「,,,おう」


おまけ

アーサー視点


エドワードから届けられた手紙を見る。

【アーサーさんへ

きっとエドワードさん伝いで届けられたと思います。僕とエドワードさんは仲良いから多分マシューって名前を見てアーサーさんには1発でいけたんじゃないのかな?今はアルの人気がだだ下がりだと思うからね!

まぁ話は変わって。アルにも話してあげたらどうですか?僕の1意見ですので参考程度でお願いしますが、やっぱりパパは必要だ。それにアルは子供の扱いが上手だから良いパパになれるよ。どうか、もう一度考えて。

マシューより】


「,,,通せ」

「え?いいんですか?」

「,,,ああ。」

案の定、足音を凄まじく立てながら来たが、ノックの仕方をきちんと整えドアも大人しく開けたので見直してやろう。

予想した通り父親名を聞いてきた。どう言ってやろうか迷っていると、

「やっぱりフランシスなのかい?」

「,,,はぁ?」

ここでフランシスという名前が出てきて思わず声が出てしまった。そのままアルの劇が続いたので検査表を見せた方が早いと思い急いで取りに行く。まぁ、当然ボーッとしている訳だが。

「ま、まぁ。俺はお前が父親でも,,, 」

その瞬間、ガッと持ち上げられる。

最高だよ。嬉しい。ありがとう。

その言葉から涙が出そうになるがアルフレッドの目にも溜まっているのを見て必死に抑え込む。

少しだけ、2ヶ月後が楽しみになった。

loading

この作品はいかがでしたか?

487

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚