「私、約束守るの下手なんだ!!」
と、春乃が言っていた。
本当は笑えることではないが、私は少しふふっと笑ってしまう。
何回も集合時間に遅れたことはあるし、提出物は出さないし、先生に頼まれたことも完璧に忘れてるし。
どうせ、あのことだって忘れてるんだろうな。
私が幼稚園に通っていた時、1人で寂しく部屋の隅で指いじりをしていたら、春乃は笑顔でこっちに来て、「ねぇ、はるかちゃんも、いっしょにあそぼ!」って言ってくれた。友達がいなかった私はそれが嬉しくて、すぐにみんなと遊んだ。すぐに仲良くなれた。
その帰り、春乃は「これからもずっとおともだちだからね!」って言ってくれた。
その時、私に初めて、「ずっとおともだち」が出来た。
それから、小学3年生くらいまではずっと仲良くしてたんだけど、小学5年生あたりで春乃に他の仲良しの子ができて、私と帰ることが少なくなった。
そして、中学校に入った今でも、あの頃のように沢山話すことはなくなってしまっていた。
入学式を飾った薄いピンク色の桜がひらひらと散っていて、アスファルトには沢山の花びらが不規則に落ちていた。
今日も1人か…と、通学路を歩いていると、
「わぁっ!!」
と、誰かが私の通学カバンを押した。
びっくりして後ろを見ると、そこにはいつの間にか見た目が全く変わった春乃が立っていた。
3年生まで二つくくりだった髪の毛はさらさらとしたポニーテールになっていて、ぷにぷにしていた頬もシュッとして、美人になっていた。
今まで私はそれに気づいていなかったんだ。
距離を置いてしまったのは私なんだ。
勝手にもう仲良くできないなんて思い込んで、春乃から遠くなっていたのは私だった。
すると、
「春夏、もしかしてあの約束、忘れたとでも思ってるの?」
え?と私は間抜けな声が出てしまう。なにか約束したっけ。
そう、と春乃は続けて言った。
「ずっとお友達だからね!!」
春乃が唯一破ることのなかった、いちばん大切な約束を、気づかないうちに、私は破っていた。
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