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#ライトノベル
umaimon
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ライラック💜💫【🎨🫧】
50
――総体終了から数日後。
源中学校、朝。
体育館には全校生徒が集められていた。
「今日は全校集会を始めます。まずは、先日の総合体育大会で優秀な成績を収めた部活動の表彰です」
壇上に立った校長先生が、手元の資料を確認する。
生徒たちは静かに話を聞いていた。
「最初は卓球部です」
その瞬間。
卓球部の7人は、そろって顔を上げた。
「……来たな」
あやが小さく呟く。
「来たな、じゃないよ。絶対長くなるじゃん」
みくが隣でぼそっと言った。
「仕方ないでしょ。優勝したんだから」
まゆらは平然としている。
一方、1年生たちは少し緊張していた。
「さな先輩、私たちも前に出るんだよね……?」
なつきが小声で尋ねる。
「うん……たぶん」
さなも落ち着かない様子だった。
そして、校長先生が読み上げ始めた。
「女子個人戦、第1位、源中学校、2年、あや!」
「はい」
あやが立ち上がる。
「第2位、みく!」
「はい!」
「第3位、まゆら!」
「はい」
続いて、男子個人戦。
「第1位、はるや!」
「はい」
「第2位、りゅうせい!」
「はい」
「第3位、けいすけ!」
「はい」
「第4位、れんと!」
「はい」
体育館の生徒たちがざわめき始めた。
「え、男子も女子もほぼ源中じゃん……」
「卓球部、強すぎない?」
「いや、何人入賞してんの!?」
しかし、表彰はまだ終わらない。
校長先生は資料をめくった。
「続いて、女子ダブルス!」
あやとみく、まゆらとここあ、さきとさなの名前が呼ばれる。
さらに男子ダブルス。
はるやとりゅうせい、けいすけとれんと、こうしとそうし。
次々と名前が読み上げられ、そのたびに卓球部員たちが立ち上がって壇上へ向かった。
「……まだあるの?」
体育館の後ろの方で、誰かが呟いた。
「まだあるみたい……」
別の生徒が答える。
卓球部の表彰は、なかなか終わらなかった。
1.壇上が大変なことに
「それでは、賞状とトロフィーを受け取ってください」
校長先生の合図で、卓球部員たちが賞状やトロフィーを受け取り始めた。
あやは賞状を受け取り、次にトロフィーを受け取る。
みくも受け取る。
まゆらも受け取る。
はるや、りゅうせい、けいすけ、れんとも続く。
そして1年生たちも。
「……あの、先生」
あやが小さく手を挙げた。
「なんだ、あや?」
「これ、どこに置けばいいですか?」
あやの両手には賞状とトロフィー。
その後ろにも、まだ賞状を抱えた部員たちが並んでいた。
校長先生は壇上を見渡した。
「……ああ、そうだな。いったん端に置いておこうか」
壇上の端には、受け取ったトロフィーが次々と並べられていく。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
よっつ。
……まだまだ増える。
「多くない!?」
全校生徒の誰かが叫んだ。
体育館に笑い声が広がる。
あやはトロフィーの山を見つめた。
「……これ、卓球部だけで何個あるんだ?」
「知らない」
みくが即答する。
「数える?」
まゆらが真顔で尋ねた。
「いや、いい。怖いから」
はるやが首を振った。
りゅうせいは、積み上がった賞状を見て苦笑する。
「持って帰るとき、どうするんだろうね」
「部室に置けばいいだろ」
けいすけが言う。
「部室の棚、もう埋まってるけど?」
れんとが指摘した。
「……あ」
7人はそろって黙った。
2.全校生徒、卓球部に注目
表彰が続く間、ほかの部活の生徒たちは壇上を見つめていた。
「卓球部って、あんなに強かったんだ……」
「個人戦もダブルスも上位独占って、どういうこと?」
「しかも、1年生まで入賞してるじゃん!」
「県大会って、どれくらい強い人が集まるんだろう……」
2年A組の生徒たちも驚いていた。
「なあ、あやって普段、授業中めっちゃ眠そうじゃん?」
「分かる。体育のときも、たまに変な動きするし」
「いや、あれが部活だとああなるのか……?」
一方、2年C組では。
「りゅうせい、昨日まで普通に俺たちと話してたよな……」
「けいすけも、れんとも……」
「なんか、急にすごい人に見えてきた」
当の本人たちは、壇上でひたすら賞状を受け取っていた。
あやは隣のみくに小声で話しかける。
「……長くね?」
「長い」
「まだ終わんない?」
「終わんないね」
「帰りたい」
「部長がそれ言う!?」
みくが小声でツッコむ。
まゆらは前を向いたまま言った。
「静かに。校長先生に聞こえる」
「はい……」
あやは素直に黙った。
しかし、数秒後。
「……腹減った」
「だから黙ってて!!」
3.校長先生からの追加発表
ようやく表彰が終わった。
……と思った、そのとき。
「続いて、校長先生からお話があります」
司会の先生が告げた。
あやは嫌な予感がした。
「……みく」
「なに?」
「これ、まだ何かある?」
「知らないよ」
校長先生がマイクを持つ。
「卓球部の皆さん、素晴らしい成績を収めてくれました。個人戦、ダブルスともに多くの入賞者が出たことを、学校全体として誇りに思います」
体育館から拍手が起こった。
「そして、卓球部の皆さんは、これから県大会に出場します」
再び拍手。
「県大会でも、源中学校の代表として頑張ってください」
「ありがとうございます!」
卓球部員たちが一斉に返事をした。
校長先生は笑顔で頷く。
「なお、賞状とトロフィーは、後ほど職員室前の展示スペースに飾る予定です」
その瞬間。
あやが小声で呟いた。
「……展示スペース、足りるのかな」
はるやが肩を震わせた。
「お前、今それ言う?」
りゅうせいも笑いをこらえている。
みくはあやの腕を軽くつついた。
「お願いだから、全校集会で余計なこと言わないで」
「まだ何も言ってねぇだろ」
「顔が言ってる!」
4.集会終了後、卓球部に質問殺到
全校集会が終わると、生徒たちは各教室へ戻っていった。
しかし、卓球部の周囲には人だかりができていた。
「ねえ、あや! 県大会っていつ?」
「みく、どうやったらそんなに強くなれるの?」
「はるや、昨日の試合見た! あのスマッシュすごかった!」
「りゅうせい、あの返球どうやったの!?」
質問が次々と飛んでくる。
あやは困ったように頭を掻いた。
「いや、普通に練習してるだけだけど……」
「絶対うそ!」
「毎日どれくらい練習してるの!?」
「えーっと……」
あやは隣のみくを見る。
みくは笑顔で答えた。
「秘密!」
「ええーっ!?」
まゆらも淡々と続ける。
「練習すれば強くなるよ」
「その練習量が知りたいんだけど!」
はるやは肩をすくめた。
「まあ、県大会を見に来れば分かるんじゃない?」
「絶対見に行く!」
生徒たちが盛り上がる。
その様子を見ながら、あやは小さく笑った。
(……県大会か)
県大会には、今回の総体で勝ち上がった選手たちが集まる。
もちろん、今まで以上に強い相手もいるだろう。
だが、あやには未来が見えていた。
本気で戦えば、勝てる。
それでも――。
「……楽しみだな」
あやが呟く。
みくが笑った。
「でしょ?」
「うん。県大会でも、全部取る」
「また煽る気?」
「当然」
「もうやめてよ!?」
7人の笑い声が廊下に響いた。
5.そして、県大会へ
その日の放課後。
卓球部の部室には、賞状とトロフィーが持ち込まれていた。
棚には入りきらず、机の上にもトロフィーが並んでいる。
「……どうする、これ」
れんとが呟いた。
「先生に棚を増やしてもらおう」
けいすけが答える。
「いや、それまでどこに置くんだよ」
はるやが頭を抱えた。
1年生たちは、トロフィーを眺めながら嬉しそうにしていた。
「これ、私たちも取ったんだよね……!」
さなが目を輝かせる。
「うん! 県大会も頑張ろうね!」
さきが笑った。
あやはラケットを取り出す。
「よし。今日も練習するぞ」
「えっ、今日も!?」
こうしが驚く。
「当たり前だろ。県大会は総体より強い奴らが来るんだから」
あやの声に、全員の表情が引き締まった。
みくがラケットを握る。
まゆらも、はるやも、りゅうせいも、けいすけも、れんとも。
それぞれが卓球台へ向かった。
誰にも知られてはいけない能力。
誰にも見せてはいけない、本当の力。
それでも、卓球で勝つことだけは譲れない。
あやは赤い瞳を普段の色のまま、仲間たちを振り返った。
「県大会でも、源中が一番強いって証明してやろうぜ」
「おう!」
7人の声が、部室に響き渡った。
次の舞台は、県大会。
そして、まだ誰も知らない。
県大会で、あやたちの力がどこまで通用するのかを――。
源中学校、放課後。
体育館では、いつも通り卓球部とバスケ部がコートを半分ずつ使って練習していた。
卓球部のコートでは、あやたち2年生と1年生がラリーを続けている。
「さな、今の球、もう少しコースを変えてみて!」
「はい! あや先輩!」
「こうし、足止まってるぞー!」
「うわっ、すみません、りゅうせい先輩!」
そんな賑やかな声が飛び交う中、体育館のステージには長机と椅子が並べられていた。
今日は、各部活動の部長会議の日だ。
卓球部部長・あや。
バスケ部部長・まさたか。
バレー部部長・ひろと。
サッカー部部長・しどう。
テニス部部長・りょうた。
吹奏楽部部長・はる。
芸術部部長・りゅうと。
この7人が集まる。
ただし――。
この7人、仲がものすごく悪い。
顔を合わせれば言い合い。言い合いになれば喧嘩寸前。誰かが一言余計なことを言えば、全員が乗っかってくる。
そして今回、最初の火種を投げ込んだのは。
「……なんで俺が、こいつらと会議しなきゃいけねぇんだよ」
あやだった。
ステージに上がったあやは、椅子に座るなり頬杖をついた。
「それ、こっちのセリフなんだけど?」
バスケ部部長のまさたかが即座に返す。
「は? 何? 喧嘩売ってんの?」
「売ってねぇよ。お前が勝手に買ってんだろ」
「んだと?」
「やんのか?」
「おう?」
「おい、そこ! 会議始まる前から揉めるな!」
バレー部部長のひろとが怒鳴った。
すると、しどうが鼻で笑う。
「お前が一番うるせぇんだけど」
「はぁ!?」
「声でけぇんだよ。バレー部の練習中もそうなのか?」
「お前に関係ねぇだろ!」
「あるわけねぇだろ、馬鹿か」
「お前今、馬鹿って言ったな!?」
「言ったけど?」
「てめぇ……!」
「はいはい、元気だねぇ」
テニス部部長のりょうたが、面倒くさそうに椅子へ座った。
「お前も笑ってんじゃねぇよ、りょうた!」
ひろとが睨む。
「笑ってねぇよ。呆れてんだよ」
「同じだろうが!」
「全然違うわ」
「おい、黙れ。会議が進まねぇ」
吹奏楽部部長のはるが、机を指先で叩いた。
その瞬間。
「お前が仕切んな」
あやが即答した。
「……あ?」
はるの視線が、あやへ向く。
「卓球部の部長だからって偉そうにすんなよ」
「誰も偉そうにしてねぇだろ。耳鼻科行くか?」
「お前、マジで一回黙れ」
「そっちが先に黙れば?」
「……あや?」
「何?」
「表出ろ」
「ここ体育館だけど。外に出たいなら一人で行けよ」
「お前なぁ……!」
「はい、ストップ! まだ議題すら出てないんだけど!」
芸術部部長のりゅうとが、両手を上げた。
「お前ら、いい加減に――」
「お前も黙れ」
あや、まさたか、ひろと、しどう、りょうた、はる。
六人の声が見事に重なった。
「……は?」
りゅうとの笑顔が消えた。
「お前ら、今、俺だけに言った?」
「そうだけど?」
あやが平然と答える。
「よし。全員、覚えとけよ」
「怖ぇ怖ぇ」
あやは全く怖がっていなかった。
ステージの下。
卓球部の1年生たちは、ラケットを持ったまま会議の様子を見上げていた。
「……さな先輩。あれ、毎回ああなんですか?」
こうしが小声で聞く。
「いや、私たちも初めて見るけど……」
さなが苦笑する。
「でも、あや先輩があんなに口悪いのは、いつも通りだよね」
さきが頷いた。
「まさたか先輩とあや先輩、絶対に仲悪いですよね……」
そうしが呟く。
「仲悪いっていうか、顔合わせるとすぐ喧嘩してる感じ……」
ここあもステージを見つめた。
そのとき、あやがふと下を見た。
「おい、卓球部。練習止めんなよー」
「「「はいっ!」」」
1年生たちは慌てて返事をする。
「お前、会議中に部員へ指示出すなよ!」
まさたかが怒鳴った。
「うちの部員に何しようが俺の勝手だろ」
「ここは部長会議だ!」
「知ってるけど?」
「だったら集中しろ!」
「お前らがうるせぇから無理」
「お前が一番うるせぇんだよ!!」
ステージの下で、卓球部の2年生たちが一斉にため息をついた。
みくはラケットを肩に乗せ、呆れ顔で言った。
「……あや、絶対に会議を荒らすと思った」
まゆらも頷く。
「予想を裏切らないよね」
はるやは練習の球を拾いながら、ステージを見上げた。
「いや、まだ始まって数分だぞ……」
りゅうせいは笑いを堪えている。
「これ、最後まで会議できるのかな」
けいすけが冷静に答えた。
「無理だろ」
れんとは楽しそうに笑った。
「賭ける? 俺は十分以内に誰かが机叩く方に一票」
その直後。
バンッ!!
ステージから、机を叩く大きな音が響いた。
叩いたのは、あやだった。
「お前ら、いい加減にしろ!! 議題出せ、議題!!」
「お前が言うな!!」
六人の部長が一斉に叫んだ。
体育館に、怒号が響き渡る。
卓球部の1年生たちは、ラケットを握ったまま固まった。
「……あや先輩、部長会議でもあの感じなんだ……」
「むしろ、いつもよりひどくない?」
「でも……」
こうしが、ぽつりと呟く。
「なんか、ちょっと面白い」
「分かる」
そうしが頷いた。
もちろん、会議はまだ始まったばかり。
そして、今日の議題は――。
体育館の使用時間と、各部活動の練習場所について。
よりにもよって、この7人が最も揉めそうな議題だった。
「まず、体育館の使用時間について――」
先生が配った資料を、あやが手に取る。
数秒後。
「……は?」
あやの目が細くなった。
「おい、まさたか」
「何だよ」
「これ、バスケ部の使用時間、増えてねぇ?」
「そうだけど?」
「ふざけんな。卓球部の時間、削られてんだけど」
「人数が多いからだろ」
「うちだって大会前なんだよ」
「バスケ部だって大会前だ!」
「だから何?」
「お前、マジで……!」
あやは資料を机に置き、にやりと笑った。
「いいぜ。じゃあ勝負するか?」
「……何の?」
「体育館を使う権利。バスケ部と卓球部、どっちが必要か、先生の前で証明してやるよ」
「上等だ!」
まさたかが立ち上がる。
「おい、待て! ここで勝負を始めるな!」
ひろとが止める。
しかし、あやとまさたかは互いに睨み合ったまま。
ステージの下では、卓球部の1年生たちが目を輝かせていた。
「……あや先輩、絶対に引かないな」
みくは額に手を当てた。
「県大会前なのに、なんで部長会議でまで戦おうとするのよ……!」
あやは笑った。
「決まってんだろ」
そして、まさたかを指差す。
「売られた喧嘩は、買う主義なんでね。」
「売ってきたのはお前だろうが!!」
体育館に、再び怒号が響き渡った。
部長会議がまともに進む日は、果たして来るのだろうか――。
日頃からも仲が悪いがあやとはるとりょうたは普段は仲いい。2年は通常運転だと思ってる。1年はびっくり。続きを書いて
第8話「え、あや先輩たちって仲いいの!?」
体育館のステージ。
「だから、卓球部の使用時間を削る必要ねぇだろ!」
あやが資料を机に叩きつける。
「バスケ部だって譲れねぇんだよ!」
まさたかも負けじと言い返す。
「お前ら、声がでけぇ!」
ひろとが怒鳴る。
「お前もな」
しどうが即座に返す。
「しどう、てめぇ!」
「何?」
「喧嘩売ってんのか!?」
「お前が勝手に買ってんだろ」
「それ、俺のセリフなんだけど!?」
りゅうとまで口を挟み、会議は完全に収拾がつかなくなっていた。
そんな中――。
「……あー、もう。うるせぇな」
あやは椅子の背もたれに寄りかかった。
すると、隣に座っていたはるが、あやの資料を覗き込む。
「なあ、あや。これ、体育館の使用時間だけじゃなくて、楽器の搬入時間も変更になってるぞ」
「は? マジ?」
「ほら、ここ」
「うわ、ほんとだ。これ、吹奏楽部も困るやつじゃん」
「だろ? 俺もそれを言おうとしてたんだよ」
「じゃあ最初から言えよ」
「お前らが喧嘩してて言えなかったんだろうが」
「それはごめん」
「……え?」
はるが固まった。
あやは何事もなかったように資料を受け取る。
「じゃあ、吹奏楽部と卓球部で一緒に先生に相談するか?」
「おう。それがいいな」
「あと、りょうた。テニス部も関係ある?」
あやが反対側を向く。
りょうたは椅子に座ったまま、資料を確認した。
「ある。用具の運搬と重なってる。俺も一緒に言うわ」
「よし、三部活でまとめて相談しようぜ」
「おう」
「賛成」
三人は、ごく自然に話を進めていく。
そして。
「……で、まさたか。お前はどうすんの?」
あやが振り返った瞬間。
「なんで俺だけ呼び捨てなんだよ!?」
「お前も俺を呼び捨てにしてんだろ」
「そういう問題じゃねぇ!」
「じゃあ何の問題だよ」
「お前の態度の問題だよ!!」
「はいはい」
「聞けや!!」
再び火花が散った。
その様子を、ステージの下から見ていた卓球部の1年生たちは、ぽかんとしていた。
「……ねえ、さき」
「何?」
「今、あや先輩とはる先輩、普通に仲良く話してなかった?」
「うん……」
「りょうた先輩とも、めちゃくちゃ自然だったよね?」
「うん……」
こうしは、ステージの上を見つめたまま呟いた。
「なのに、まさたか先輩とはあんなに喧嘩するの……?」
そうしも首を傾げる。
「部長同士って、みんな仲悪いんじゃないの?」
「いや、あや先輩とはる先輩とりょうた先輩は、普通に仲いいんじゃない?」
ここあがそう言った、そのとき。
「おい、あや。今日、帰りにコンビニ寄らね?」
はるがあやの肩を軽く叩いた。
「いいぞ。なんか食うもんある?」
「お前、また食うのかよ」
「腹減ってんだよ」
「じゃあ俺も行くわ」
りょうたも会話に加わった。
「お前、今日テニス部の片付けは?」
「終わったら行く」
「じゃあ待ってる」
「おう」
三人は、まるで放課後の予定を決めているだけの友達だった。
その直後。
「おい、あや! 会議中に何くつろいでんだ!」
まさたかが怒鳴った。
あやは面倒くさそうに顔を向ける。
「うるせぇな。今、大事な話してんだよ」
「コンビニの話だろうが!!」
「俺らにとっては大事なんだよ」
「どこがだよ!?」
「肉まん食うかどうか」
「知らねぇよ!!」
「じゃあ黙ってろ」
「お前ぇぇぇ!!」
ひろとが机を叩いた。
「もうお前ら、ほんっとに仲悪いな!!」
「誰のせいだと思ってんだ!」
まさたかとあやの声が重なった。
「お前だろ!」
「お前だろうが!」
「はぁ!?」
「んだと!?」
「はいはい、いつものね」
はるが頬杖をつく。
りょうたも、まったく動じずに資料を整理していた。
「この二人、放っといていいぞ。どうせいつものことだから」
「だな」
あやがまさたかに言い返しながら、はるの方へ手を伸ばす。
「はる、そのペン貸して」
「ん」
はるは何も言わずにペンを渡した。
「さんきゅ」
「おう」
――その間も、あやとまさたかは口喧嘩を続けている。
「だから、卓球部の時間は削らせねぇ!」
「こっちだって譲らねぇ!」
「じゃあ先生に聞こうぜ!」
「最初からそうしろ!」
「お前が言えよ!」
「お前が言え!」
「……お前ら、本当に仲悪いな」
りゅうとが呆れたように呟いた。
「今さら?」
りょうたが返す。
「いや、今さらだけどさ……」
りゅうとは、あやとはるとりょうたを交互に見た。
「お前ら三人は、なんで普通に仲いいんだよ?」
「は?」
あやが顔を上げる。
「なんでって、普通に仲いいからだろ」
「いや、そういうことじゃなくて!」
「どういうことだよ」
「さっきまで喧嘩してたのに、はるとはコンビニの話してるし、りょうたとは普通に協力してるし……!」
「別に、はるとりょうたに喧嘩売られてねぇし」
あやはあっさり答えた。
「売られたら買うけど?」
「お前の基準、そこなの!?」
りゅうとが思わず叫んだ。
はるは笑いを堪え、りょうたは肩をすくめた。
「まあ、あやはそういうやつだから」
「否定しろよ、はる」
「事実だろ?」
「……お前、あとで覚えとけよ」
「はいはい」
あやはペンをくるりと回す。
そのやり取りを見て、卓球部の1年生たちはさらに混乱していた。
「……あれ?」
なながおそるおそる口を開いた。
「もしかして、あや先輩って……仲いい人には、普通に優しい?」
「いや、優しいというか……」
さきが考え込む。
「はる先輩には、ちょっと甘くない?」
「りょうた先輩にも、かなり自然だよね」
さなが頷く。
「でも、まさたか先輩には……」
全員がステージの上を見た。
「おい、まさたか。お前、さっきから同じことしか言ってねぇぞ」
「お前もだろうが!」
「俺は話を進めようとしてんの!」
「どこがだよ!」
「お前の目、節穴か!?」
「お前の口を塞いでやろうか!?」
「やってみろよ!」
「上等だ!!」
「……あれは、仲良くなるの無理そうだね」
こうしが呟いた。
「うん……」
そうしも真剣な顔で頷く。
すると、練習を見ていた卓球部の2年生、みくが二人に声をかけた。
「一年生、あれで驚いてるの?」
「えっ!?」
「だって、あや先輩たち、すごい喧嘩してますよ!?」
「いつものことだよ」
「いつものこと!?」
「うん。私たち二年は、もう誰も止めないもん」
まゆらも平然と付け足した。
「止めても無駄だしね。本人たちが満足するまで言い合うから」
「満足するまで……?」
「そう。で、終わったら普通に練習する」
その言葉を証明するように、ステージの上では。
「……チッ。もういい。先生に相談するぞ」
あやが資料をまとめた。
「最初からそうしろって言ってんだよ」
まさたかも座り直す。
「じゃあ、体育館の使用時間は各部活の大会日程を確認して調整する。これでいいな?」
ひろとが全員を見回す。
「俺はいい」
しどうが腕を組む。
「テニス部も問題ない」
りょうたが答える。
「吹奏楽部も、搬入時間さえ確保できればいい」
はるも頷いた。
「芸術部も異議なし」
りゅうとも手を挙げた。
最後に、ひろとがあやとまさたかを見た。
「卓球部とバスケ部は?」
「いいぞ」
あやが答える。
「……俺もいい」
まさたかも渋々頷いた。
「よし。じゃあ次の議題――」
「終わったらコンビニな」
あやがはるに話しかける。
「おう」
「俺も行く」
りょうたが続ける。
「お前ら、まだ会議中だぞ!!」
ひろとの叫びが体育館に響いた。
三人は同時にひろとを見る。
「「「聞こえてる」」」
返事まで揃った。
そして三人は、何事もなかったように資料へ視線を戻した。
体育館の下では、卓球部の1年生たちが、まだ信じられないという顔で立ち尽くしていた。
「……二年生って、すごいですね」
こうしがぽつりと言う。
「何が?」
みくが聞き返した。
「いや……あの状況を普通だと思ってるところが……」
みくとまゆらは顔を見合わせた。
そして、そろって笑った。
「あれが、いつもの二年生だから。」
一年生たちは、まだ知らなかった。
この部長会議の本当の恐ろしさは、喧嘩が多いことではない。
あやたちは、喧嘩をしている相手とも、翌日には何事もなかったように同じ体育館で顔を合わせる。
そして、次の部長会議でも――きっと同じことが繰り返されるのだ。
コメント
1件
第8話、読み終えたよ〜! あやとはる先輩、りょうた先輩とは普通に仲良くしてるのに、まさたか先輩とはあの大喧嘩…っていうギャップがなんかすごくて好きだな。1年生が「えっ!?って驚いてるのも可愛いし、2年生が「いつものことだよって流すのもチームの空気感が伝わってきた。会議室で「肉まん食うかどうか」って言い合ってるところとか、あやのキャラがますます立ってる。決して仲悪いわけじゃないんだな、っていうバランスが絶妙で自然。県大会の前にこんな緩い空気も読めて、すごい温度が伝わる話だった。あっとくん推しさんのこういう「日常と部活の温度差」みたいな描写、すごい好きです🌙