「こはる――っ!」
どこからか聞こえたその声は、懐かしく、温かく、そして切実だった。
こはるはびくっとして顔を上げた。
目の前の兵士が何かを言いかけたそのとき――
「その子から手を離せ!」
荒々しくも怒気を含んだ日本語。
広場の方から駆け寄ってくる影、それは兄、拓也だった。
彼は息を切らせながら、こはると兵士の間に立ちはだかるように割り込んだ。
「こはる、大丈夫か!?」
こはるの目から、涙があふれ出た。
「お兄ちゃん……!」
ようやく、強ばっていた体がほどけるように、兄の胸に飛び込んだ。
兵士は困惑した様子を見せたが、すぐに身を引いた。
その顔は少し寂しそうでもあった。
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