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「…………美花?」
「ちょっ…………ちょっと…………寒くて……」
美花が自身の腕を摩りながら、圭から視線を外した。
(今の反応…………何なんだ……?)
彼は片眉を僅かに上げると、冷静さを保ちながら美花の肩に触れる。
「だったら……もっと俺に寄ればいいだろ?」
彼女の二の腕に触れるのを諦めた圭は、向かい合わせで細身の肢体を引き寄せる。
小さな後頭部を撫でながらも、圭の脳裏に焼き付いているのは、美花の左手首の上にある傷跡。
(せっかく彼女と想いを通わせたんだ。今は……美花と一緒にいる時間を…………大切にしよう……)
圭は、そのままベッドに横たわりながら、彼女の額に唇を落とした。
ほっそりとした首の下に筋張った腕を通し、惰眠を貪る二人。
時折、視線をもつれさせながら口付けを交わし、圭が美花を強く抱きしめて艶髪を指先で絡ませる。
自堕落に過ごす休日を、久しぶりに過ごしている圭は、隣で寄り添う美花に眼差しを注ぐ。
「なぁ、美花」
「…………ん?」
「どこか行きたい場所はあるか?」
「う〜ん…………」
黒に塗りつぶされた天井に視線を這わせながら、美花は考え込んでいるようだ。
「…………特に、ないかも」
「マジか」
ガックリと首を落とす圭が、ため息混じりに苦笑する。
「休みの日は、いつも音楽作ってるし……」
「フッ…………さすがDTM界の有名人だ」
「私には…………DTMしか……取り柄がないし……」
美花が眉尻を下げながら、寂しそうに笑う。
「初めての彼と半年付き合って…………振られて。そこから私は趣味に生きるって決意して数年後に…………圭ちゃんと……出会った。だから……」
圭の視線が、彼女の揺れる瞳に見上げられた。
コメント
1件
圭さんにしたら虚しいよ…