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「うわぁ! すごいっ」
さっきまで、表情を曇らせていた美花が、メールの内容を読み終えると、顔を綻ばせながら声を上げる。
「ちょっ……美花? いきなりどうしたの!?」
「楽器メーカーから、オファーが来たぁっ」
「そっかぁ。美花は、パソコンで音楽を作って、ネットに投稿しているんだよね。楽器メーカーから依頼があるなんてすごい!」
美花がDTMで音楽を作曲し、Hanaとしてネット上に投稿している事を知っているのは、母を除くと、小中学校時代からの親友、奈美と音羽奏だけである。
「ねぇ、美花。ちなみにだけど、どこの楽器メーカー?」
「んっとねぇ、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツだよ」
「え!? ホント!? こんな事ってあるんだ!?」
今度は奈美が目を見開き、両手で口を覆わせている。
「っていうかさぁ、なみプーがビックリしているのが謎なんだけどぉ……」
「奏の彼が、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツに勤めているんだよ。あの子も、ハヤマの特約店でピアノの先生やってるし……」
「え!? かなチー、いつの間に彼氏できたのぉ!?」
「あの二人が出会ったのは、私の結婚式で、奏の彼が豪さんの高校時代の親友だったんだよねぇ」
「うわぁ…………私、全く気付かなかったよぉ。結婚式での出会いって、意外とあるモンなんだねぇ……」
美花は、遠くに視線を這わせながら、コクコクと頷いていた。
「そうそう、美花。ずっと聞きたくて聞けなかったんだけどさ、クリスマスの日、ベンチで横になっている人がいて、心配だから見てくるって言ったでしょ? あの後、大丈夫だったの?」
美花は、昨年のクリスマスの出来事を思い出すと、顔が紅潮していく。
「なに顔を赤くしてるのかなぁ?」
奈美がニヤリとしながら、美花の顔を覗き込む。
「それがさぁ…………ベンチで寝てた人…………すごいイケメンだったんだよねぇ。多分、私よりもけっこう歳上っぽい感じ? しかも、この前、うちの店にご飯食べに来ててさぁ…………。ビックリだよぉ」
美花の話を聞いた奈美が、アーモンドアイを丸くさせ、パチパチと瞬きをさせている。
「ひょっとしたら…………何かあるかもしれないよぉ?」
「いやいや……ないない。そのイケメンおにーさん、私をすっごい目つきで睨んでたし」
昼食を取るのもそっちのけで、美花と奈美が話し込んでいるうちに、午後の始業時間まで、あと十分になっていた。
「え? お昼休み、もう終わりだ! さて、午後も頑張ろうっと! 美花、またね」
「うん、じゃあねぇ」
ベンチの前で解散すると、二人は、それぞれの持ち場に戻っていった。