テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第2章 第9話
「同床異夢」
少し時は遡る。
同じ頃、B班とC班は移動中だった。
馬車は二台。森道を並走しながら目的地へ向かっていた。
班分けはされたが、「誰がどっちに乗るか」は自由。だからこの配置になっている。
■馬車の乗員(この時点)
C班側の馬車(刹那・エペ・みずき・ゼグレ)
刹那/エペ/みずき/ゼグレ
B班側の馬車(光月・クレイ)
光月/クレイ
「暇なのだー!!」
「みずきちゃん。我とカード遊びでもしましょうか!」
「イヤなのだー!!!」
二班が一緒に動いてる理由は単純だった。
「ボクらB班だけ任務が曖昧だったからさぁ。ついてきたわけ」
クレイがいつも通りヘラッと言う。
エペが即座に噛みつく。
「言い訳はやめてください!どうせ男塵の考えることなんてたかが知れてます!
我らの功績を横取りするつもりに決まってます!……ですよね、刹那ちゃん!?」
刹那は淡々と返す。
「今回の場合は、B班は他の班と行動したほうがいいんじゃないかしら。クレイくんの言う通りよ」
「せ、刹那ちゃん……!」
エペがわかりやすく悔しそうな顔をする。
クレイは嫌なドヤ顔。
みずきがゼグレを横目で見る。
「……ずっと黙って景色ばっか見てるのだ。森ばっかなのに……変なやつなのだ……」
刹那が静かに言う。
「きっと集中しているのよ。あともう少しで着くから」
「でも……不気味です……」とエペ。
刹那は少しだけ間を置いて
「それに、さっきワタシがお茶を配った時——ゼグレさん、ちゃんとお礼を言ってくれたわ。悪い人じゃないと思うの」
みずきは目を丸くする。
「えっ、そうなのだ?」
エペがその瞬間、急に目をキラキラさせた。
「さすがです!女子の温もりというやつですね!!」
「当然よ」
刹那は当然の顔で頷く。
会話は全部、本人にも聞こえている。
それでもゼグレは、窓の外から目を逸らさず、何も言わない。顔色も変えない。
一方、もう一台の馬車。
手綱を握る光月が、斜め後ろを振り返る。
「なァ……あっちの馬車、賑やかでいいなァ」
クレイは寝そべったまま、だるそうに言う。
「そう?ボクはリラックスできていいけどね」
「こ、このやろォ!オレ様が一生懸命手綱ひいてやってんのに!!」
「あは。がんばってねー」
冗談で笑う光月。
それにクレイもニヤッとする。
——案外、こいつら仲は悪くないのかもしれない。
二時間後。目的地に到着。
戦いはあった。
A班ほど異常じゃないが、様子のおかしい敵が混じっていた。
それでも任務は成功。
二人の捕獲・拘束に成功した。
この拘束で一番効いたのが、ゼグレの氷魔術だった。
刹那が言う。
「無事に二人拘束できたわね。あなたのお陰よ、ゼグレさん」
ゼグレは頷きもしない。
ただ、視線だけが一瞬動いたように見えた。
るるくらげ
#オリジナル
横でクレイが血まみれのクレイモアを必死に拭いている。
「汚いなぁ……」
光月はふらついていた。
「はァはァ……つ、つかれたぜェ……おっと……」
水魔術の使いすぎで気力が底をついてる。
その時、みずきが手を添える。
「ほい!」
一瞬、眩い光。
「おおおおおッ!元気100%オレ様復活だァ!!」
「んふふー感謝するのだ!」
「ふッ……まぁこんなのなくても歩けたけどなァ!」
髪をかきあげる光月。
「むきー!ウザイのだー!!!」
「……何が起きている」
「キミしゃべるんだ。
それ、エナジートレードってやつだよ。
他人の気力を奪って、別の誰かに渡せる魔術」
「……エナジートレード」
クレイが捕虜へ視線を投げる。
「ほら。捕まえた二人、へとへとでしょ?
ちびっ子はあそこから奪って、ナルシくんに渡したんじゃない?」
ゼグレは考えるように見えるだけで、無言。
クレイが楽しそうに笑う。
「……キミとは仲良くなれそうにないねぇ。つまらなくはないんだけど」
で、帰路で揉める。
クレイが言い出す。
「——だからやだね。めんどくっさい。ボク、C班の馬車で帰るわ」
「はァ!?」
エペがキレる。
「これだから男塵は!さっさと降りてください!」
「いや、すでに乗ってますけど?」
みずきが追い打ちする。
「たのむのだー!そいつをC班の馬車に乗せてってほしいのだ!
いつもいつもエナジートレードの仕組み聞いてきてうざいのだー!」
刹那が困ったように笑う。
「困ったわね。こういう時、この二人は曲げないわよ」
光月が叫ぶ。
「クレイィ!女子に迷惑かけんなよォ!!」
「じゃああなたが引きずり下ろしてくださいよ!」
光月、詰む。
そこで、ゼグレが短く言った。
「……いい。俺がいく」
「おっサンキュー♡」
みずきは絶望顔。
「……なのだぁ」
刹那が決める。
「仕方ないわね。じゃあワタシたちは予定通り帰るわよ。健闘を祈るわ」
こうして——
C班側の馬車:刹那/エペ/クレイ(誓刃校へ帰還)
B班側の馬車:光月/みずき/ゼグレ(A班へ合流に向かう)
みずきが叫ぶ。
「最悪なのだ!どうしてあいつが乗り込んでくるのだ!」
光月もうるさい。
「しらねェよ!てかお前の声はでかいんだ!ヤツに聞こえるだろォ!!」
「光月の声は響くのだ!静かにするのだ!」
光月が腕を組む。
「てかよォ……オレ様たち、明確な指示出されてねぇわけだろォ?帰ってもいい気がしねェか」
「さんせーなのだ!さっさと帰——」
「——いや。A班の所へ向かう」
ゼグレの声が落ちる。
「はァ??」
「……なのだ??」
「俺が手綱を握る。馬車で休んでいろ」
「て、てめェ!勝手な真似はゆ、ゆるさねェぞ!」
「そーだ!そーなのだ!」
ゼグレは淡々と言う。
「ここで降りるか?」
二人、絶望(笑)
こうしてB班は、夕方にA班へ向けて動き出した。ゼグレの息が一瞬止まったことに気がつくものはいない。
ちょうどその頃、A班側では——ジャメラポムが「魔族の血」って線を引き当てていた。