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第2章 第10話
「宣戦布告」
そして時は戻り、場所はA班。 彼らは撤退を決め、帰路につくための馬車の準備をしていた。
「そういえば……魔族ってそもそも何なのかなぁ?」
ジャックがふと聞くと、ジャメラポムが肩を鳴らして笑った。
「魔族はなぁ。簡単に言っちまえば、別世界のバケモンってとこだぜぇ」
「別世界……?」
アクラが眉を顰める。
「厳密に言えば“魔界”からはるばるやってくるんだけどよ……まあ、ここ数年は安全って言われてやがったが……」
ジャメラポムは、ツヴァイを顎でクイッと指した。 明らかに挙動不審のツヴァイ。
「あんたの隊は去年、魔族に血祭りにされちまったもんなぁ!ギャハハハハハ!」
「お、おいやめろよジャメラポ……!」
アクラが止めに入るが、ジャメラポムは悪びれない。
「だが心配はご無用だぜぇ。ウチが安全に城まで届けてやる」
ピンクの髪が揺れ、疲れきったタレ目がツヴァイを射抜く。
「すごいね……わたしと同い年の女の子とは思えないなぁ……」
ジャックがぽつりと言う。 ジャメラポムは胸を張った。
「ったりめーだ!ウチはもう3年目なんだぜぇ?」
——3年目。それは、孤誓隊に入隊してから、という意味だろう。
「よし!準備はできた!!いつでも行けるぞ!」
バロロが大きな声で言う
「ツヴァイ先輩、歩けそう……?」
ジャックが心配そうに駆け寄り肩を撫でる 「うっ……まだ吐き気が……」
「男のくせにだらしねぇぜ!ほらウチが御者になってやっから、あんたら尻軽ちゃんどもは後ろだ!」
こうして彼らは、先ほど来た道を引き返す。 もう夕方だ。地平線が赤く染まる。春特有の涼しい気候が、戦闘終わりの身体に、ほんの少しだけ安らぎをくれた。
そして、朝に立ち寄った“屈強な店長がいた村”へ寄ることになった。 アズラル村。小規模ながら道沿いにある便利な村で、多くの旅人や隊員がここで食料を揃えたり宿を借りる。
「ウチは別に野宿でもいいけどよぉ。安全性に欠けやがるからな」
そう言い出したのはジャメラポムだった。
時刻は五時半頃。空が紅く光る。幻想的ではあるが、何かを惑わしているような赤さだった。
「おーい、おっちゃん!」
バロロの大きな声。しかし闇に打ち消されていく。
「店長さーん!」
彼女の暗がりなど無縁の明るい声も闇には勝てない。
「もう寝てるんだよ、きっと」
アクラが周りを見渡しながら言う。
「でも暖簾はかかってますよ……」
「しゃあねぇ。食料は後回しだ。先に宿に荷物置いておきてぇしな。今日の盗品はレアモノばっかだしなぁ」 ジャメラポムが目を光らせ、下品に笑う。
そこで、一番距離の近い宿へ足を踏み入れた。
「チッ、誰もいねーじゃねぇか。おーいお客様だぞ。五人の尻軽がおでましだ。部屋は男女で二つでなるべく広——」
べちゃり。
ラウンジに入ったその時。 何か赤黒い液体を踏んだ。
——血。 そして、頭部のない遺体。
「——だな」 「きゃぁぁぁぁ!!」 「も、もう無理ですぅ……」(気絶) 「ど、どうなってんだ!?」
首の断面は黒く焦げていて、よく見ると壁や床にも穴が空いている。
「これはまずい。一旦外に出るぞ!」
バロロの掛け声と同時に外へ出て馬車で少し走ると、今まで気づきづらかった物陰や家の中に、頭部のない遺体がちらほら転がっていた。
「ツヴァイはオレが担ぐ!ジャメラポム!このまま馬を走らせるか!?」
「そのほうがよさそうだ。このまま城まで走り抜けるぜぇ。最高速度でぶっ飛ばすからビビんじゃねぇぞ!!」
その刹那——
激しい爆発音。 目の前に映ったのは、玉砕した馬車と、吹き飛ばされた仲間たちだった。
アクラは受け身を取れた。だが腕を強く打ち、強烈な痛みが走る。
「敵襲だーーッ!!」
バロロの叫び声とともに皆が立ち上がる。 ただ一人を除いて。
ジャメラポム。 いや、彼女だったものが、黒焦げになって馬車の残骸とともに転がっていた。
胸の糸が苦しい。逃げ出せと叫ぶ。 どうすれば——一体誰が—— いや、わかったところで勝てるのか。 いや、生き延びられるのか。
「ジャメラポムゥゥウ!!!!」
アクラの叫び声が残酷に響き渡った。
そして彼らは戦慄した。気がついたのだ。 地平線の向こうから、新たな異形が迫っていることに。
ゼグレの胸の糸が騒ぐ。
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