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放課後───…

學くんと横に並んで帰路を歩いていると


制服のプリーツスカートをひらひらさせながら、目の前を歩く女子高生二人が熱心に語っているのが耳に入った。


「最近推してるBL漫画家さんがヤバくて〜!」


「わかる!あの人の絵柄好きすぎるんよ」


またもやBLというワードを聞いて


昼休みにクラスの男子に


〝お前らって俗に言う…BLっぽくね?〟と言われたことが自然と脳裏で反芻した。


気になって仕方がなくて、僕は學くんに尋ねた。


「ねぇ、まなぶくん」


「ん?」


「昼休みに言ってた『びーえる』ってどういう意味なの?」


僕の問いに、「ちょっと待って?」と學くんはズボンのポケットからスマホを取り出した。


そして慣れた手つきで検索画面に〝びーえる〟と入力していく。


検索結果が出て、僕たちは二人でスマホの画面を覗き込んだ。


一番上に表示された︎✧AIの概要を、學くんが代わりに読み始めた。


「んーと…『ボーイズラブ。男性同士の恋愛をテーマにした作品ジャンル、男性同性愛者の性的指向や関係性を指す』…っていうものらしいよ?」


「へえぇ…BLってそういう意味なんだ…!」


初めて聞く世界に、僕は少し驚いた。


「まなぶくんは知ってたの?」


「俺も今知ったとこ。女子に人気とは聞いたことあるけど…」


「だからかな?僕とまなぶくんのこと『BLっぽい』って言ってたの」


「でも俺ら親友だしBLって呼ばないんじゃない?」


「あはっ、たしかに!恋愛とかじゃないもんね」


「そゆことっ、俺らはズッ友だし」


二人の間に笑い声が響く。


僕たちはそんなふうにBLのことを他愛のない話として流した。


家に帰宅してすぐ自室に向かうなり、本棚に仕舞っていた参考書をパラパラと捲り始めた。


いつもなら集中できるはずの文字が、頭の中に入ってこない。


昼間の男子たちの言葉と、學くんとスマホを覗き込んで笑った光景が、なぜか印象的に頭の隅に残っている。


…ま、いっか。


そう思いながら、僕はいつのまにか眠っていた。



◆◇◆◇


翌朝――…


ハッとして目覚めたとき


すでに時計は8時50分を回っていて、僕は飛び起きた。


「やっばっ!遅刻!!」


急いで制服に着替えて階段を駆け下りる。


リビングに目を向ければ


「もう、ひとみってばやっと起きたのね!ご飯冷めちゃってるわよ」


お母さんが呆れ顔で立っている。


「き、今日いらない!走っていかなきゃ確実に遅刻しそうだし、って、お弁当できてる?!」


「できてるから、顔洗って歯磨きだけしてきなさい」


僕は慌てて洗面所に向かう。


歯磨きをしながら鏡を見ると


目の下には寝不足のクマが出来ているのが映った。昨日はなんだか落ち着かなかったせいか、寝るのが遅くなったせいだ。


「ん〜〜」


なんとも言えないモヤモヤ感が胸に残るまま


蛇口を捻って勢いよく水を出すと、冷たい水で顔を洗った。


さっぱりとした気持ちでリビングに戻り


お母さんからお弁当を受け取って鞄に入れ込む。


「行ってきます!!」


ドアを開けると同時に


学校へと続く道を駆け出した。


なんとか朝のホームルームに間に合い席に着くと、息切れする僕に頭上から


「ひとみが遅刻ってめずらし~」という|親友《まなぶくん》の陽気な声が降ってきて、顔を上げる。


そこには案の定いつも通りに笑いかけてくれる學くんが立っていて


「ギリギリセーフだし遅刻じゃないもん!」


なんて言い返していると


「ほら席つけ~、朝のホームルーム始めるぞー」


担任の先生が教室にやって来たため、僕と學くんはそれぞれ自分の席に座った。



◆◇◆◇


それから一週間後…


文化祭の準備期間に入り、授業は午前中に切り上げられることになった。


クラスのみんなで役割を分担しながら準備を進めていくなかで


僕は學くんと一緒に買い出しに行くことに。


必要なものをメモした紙を見ながらショッピングセンターを回る。


「まず何買うんだっけ?」


「えっと、テーブルクロスと紙皿、紙コップ、あとウィッグ!」


「ならここで揃いそうだね。入ろっか」


そんな会話をしながら店内に足を踏み入れる。


女子高生や女性客で賑わう店内で目当ての物を見つけ


次々と買い物カゴに品物を入れていく。


「これで最後かな?」


學くんが確認するためにメモと見比べる姿を見て新鮮な気持ちになる


普段はあまり役割を決める時に積極的な方ではないのに、こうやって真剣に取り組む彼を見るのはやっぱり嬉しい。


「よし!まなぶくん、レジ行こ」


レジでの会計を済ませたあと


學くんは両手で一つずつ持ち「持つよ」と僕が一つ持とうとする前に言ってくれた。


「え?でも重いよ?」


「平気平気!」


學くんは両手に袋を持っても表情ひとつ変えずに歩き出す。


僕は隣を歩きながらその頼もしい姿を眺めると


なぜか胸が温かくなるのを感じた。


不思議な感覚。今まで感じたことのない感情に戸惑いを覚える。


どうしたんだろう……


そんな戸惑いを隠すように俯いて歩く。


学校に着き


教室に戻ると黒板の前にはクラスメイトたちが集まりワイワイとしている様子が目に入る。


「みんな~買ってきたよ〜」


「おぉ!二人ともありがとね〜!」


學くんがクラスメイトたちに報告すると


早速今いる男子たちだけでも試しに試着してみようということになり


教室の隅に机で区切られて作られた簡易のスペースに荷物を置きに行った。

瞳の代わりに、学の代わりに。

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