軽快な音を立てて黒板にチョークで数式を記入する駿。
「連立方程式を解く時は、まず一方の式を他の式に代入する方法がいいな!例えば」
すると数学の授業を遮るように、スマホの着信音が鳴り響く。
「コラコラ!誰だ?授業中は電源切っとけっていつも言ってるだろ?」
駿の問いかけに生徒たちは「俺じゃないっスよ?」「私でもないよ!」皆首を横に振る。
「駿くんなんじゃない?」聖奈がからかうように言う。
するとそれに合わせてクラスメイトが笑う。
「バカ言うなよ!俺な訳・・・あ!ごめん!俺だった!」
着信音の正体は駿のスマホだった。
「ほ〜ら!やっぱ駿くんじゃん!教師しとしての自覚が足りないんじゃな〜い?」聖奈が再びからかう様に言い、クラスメイトが笑う。
「教師をバカにするな!」駿は顔を赤くして言い返す。
「いいから早くスマホ切ってよ!授業になんないじゃん!」
「分かった!分かった!すぐに切るから!ちょっと待」駿はスマホの画面を確認すると目を見開き「ちょっと、し、しばらくの間自習で!」と言って教室を飛び出していった。
「あらら・・行っちゃったよ!何考えてんの?駿くん」聖奈な呆れた様に腕を組む。
「もしかして彼女からなんじゃね?」「あ!それありえる!」「帰ってきたら質問責めだね」
クラスメイトが電話の主は彼女なのではないか?という話題で盛り上がる。
「彼女って・・ねぇ?」沙月が物言いたげな様子で梓に語りかける。
「いや・・でも・・・」梓はうつむく。
「何落ち込んでんの?駿くんに彼女なんている訳ないじゃん!」沙月が梓を励ますように梓の脇腹を突っつく。
「もう!からかわないで!」梓は頬を膨らませる。
「でも本当に誰かなんだろ?駿くんが授業放棄するなんて」
皆が首を傾げていると、駿が慌てた様子で教室に入ってくる。
「いやぁ!ごめん!ごめん授業中断しちゃって!えーっと、どこまで話したっけ?」駿が黒板を眺めながら言うと、1人のクラスメイトが「連立方程式の話の途中でしたよ!」と教える。
「あ!そうだった!そうだった!じゃあ続きからだな!えーっと連立方程式は」
駿が何事も無かったかのように授業を進めるが聖奈が手を上げて駿に呼びかける。
「駿くーん!さっきの電話誰からだったのー?まさかの彼女だったりしてー!」聖奈は茶化すように言う。
するとそれに合わせてクラスメイトが騒ぎ出す。
「えー!まじで彼女?」「どんな人?どんな人?」皆が駿の彼女に興味津々と言った様子で、身を乗り出して駿に質問をする。
「ま、まぁ、彼女だよ・・そう彼女からの電話だったんだ」駿は苦笑いをしながら応える。
皆が歓喜に沸く中、梓、聖奈、沙月は首を傾げる。
「どんな人?その彼女って?」聖奈が周りに合わせて駿に質問を投げかける。
「まぁ、なんだ・・この子の為なら何でもしてやりたい・・そう思える子かな?あはは」
駿の言葉にクラスはさらに歓喜に沸く。
「はい!はい!俺の話はいいから!授業続けるぞ!授業!」駿は皆を黙らせ授業は再開される。
授業が終わり昼休みになり、皆が続々と教室から廊下へと出ていく。
「ねぇ?駿?」梓が不安そうな顔で駿に近づいていく?
「ああ、梓か・・」「さっきの・・彼女って嘘だよね?」梓が今にも泣き出しそうな顔で駿を見上げる。
「何そんな不安そうな顔してんだよ!俺に彼女が居ないのは知ってるだろ?」
駿の言葉を聞いた梓は安心したように微笑み「そうだよね・・よかった・・」と呟く。
「なら誰からだったの?」聖奈が問いかける。
「あ、今この場所で言うのはアレだから!こっちに!学食奢るから!」
駿が梓、聖奈、沙月を学食に来るよに、小さく手招きする。
「うっそ!?まじて!?やったー!」
聖奈が両手をあげて喜ぶ。
「バカ!大きな声出すなよ!他の人に聞こえるだろ!」駿は聖奈の頭を優しく叩く。
「ごめん!ごめん!」聖奈は小さく舌を出す。
「とりあえず行くぞ!」駿が皆を引き連れて学食に向かおうとすると、つかさが呼び止める。
「何コソコソしてるんですか!?」
つかさは仁王立ちで駿を睨みつける。
「あ、雛形先生・・・」
「生徒引き連れて何処に行くつもりですか!?」
つかさは駿をジト目で見つめる。
「雛形先生も一緒に来てください!大事な話なんで!」「え?一緒に?」つかはさ駿のいきなりの言葉に困惑する。
「とりあえず来てください!詳しい話は学食でしますから!」
「え、えぇ・・わかりました」
明確な理由を告げずに、とりあえず来いと言う駿を疑問に思いながらも、つかさは駿について行く。
「探偵から連絡があった!?」駿の言葉に皆が驚いたように声を腹はあげる。
「ならさっきの電話って探偵さんからだったの?」梓の問いかけに駿「ああ!お母さんが見つかったんだってさ!」と微笑みながら言う。
「そっか・・よかった・・ぐすっ」梓はやっと母の行方が判明した事で安堵の涙を流す。
「実はだいぶ前からあの裏路地周辺は目星をつけてたらしくてな!」
「あ!そうだったんだ!」聖奈は食後のアイスを食べながら言う。
「でもホラ!1週間って言う依頼だったから、裏路地に限定して探して、仮に的外れだったらアレだろ?だからいろんな場所を捜査してたらしいんだけど」
「あ!そっか!それで私たちの情報が役に立ったって訳ね!」沙月が手を叩きながら納得した表情をする。
「そういう事!みんなの情報のおかげで、他の候補を捨てて裏路地に限定して捜索出来たって訳だ!」
「でも、何でわざわざ学食に来てまで話したんですか?話すんなら廊下で話しても良かったですよね?」つかさが素朴な疑問を駿に投げかける。
「いや、ホラ!誰が聞いてるか分かりませんし!用心ですよ!用心!」駿がそう言うと、つかさが「ぷっ」と吹き出す。
「え?俺、なんか変な事言いました?」駿が首を傾げる。
「いや、これだけの人にバレ出るくせに用心って(笑)」
つかさは駿をバカにするように笑う。
「うっ」つかさの口から放たれた、もっともな言葉と書かれた矢が駿の胸に突き刺さる。
「あははは!雛形先生!クリティカルヒット!」聖奈は手を叩いて笑う。
「まぁ、それを言われてしまうと、言い返す言葉がないです・・あはは」駿は苦笑いするしか出来なかった。
「で?今日学校終わったら探偵事務所行くの?」梓は駿に聞く。
「ああ!そのつもりだ!それに、出来たらみんなに同席してもらいたいんだけど、大丈夫かな?」
駿は聖奈、沙月、つかさの目を見て尋ねる。
「当たり前じゃん!友達の為だし!」
「そうそう!てか来るなって言われても、無理矢理ついていくし!」聖奈と沙月は当然だと言った様子で、同席を了承する。
「まぁ、皆川先生ひとりだけでは心配ですから!私も同席させてもらいますから!」つかさは腕を組んでうなずく。
「ありがとうございます。では今日の放課後に!みんなよろしく!」
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