テラーノベル
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「僕たちはネットの中で知り合った中です。ずっとナナさんはネットのつぶやきで家族の不満を書いていて、どの人が見ても明らかにその家族のやってることは理不尽でナナさんは家政婦扱い、僕ら見てる側は逃げろ、離婚しろ、それしかできなかった」
隣にいたナナはうつむいている。虹雨はハッとした。何かを思い出したのだ。
「最近、死んだやろ。あの山の崖から車で落ちた……」
ミツオは頷いた。一年も経ってない、当時人妻とネットで知り合った男が心中をしたのではないかと大騒動になった事件。
ブレーキ痕はなかったが、のちに車が調べられブレーキの不具合があり、ナナのこれからは一からやり直し自由に生きていきたいという書き込みと、新天地である県外の施設の住所があったことで心中でなくミツオがナナの新しい生活をする場所までの後押しとして車を出した矢先の事故と警察はそう見解を示した。だがしばらくはあらゆる噂が錯綜した。
「……ナナをはやく遠くに逃がしたかった。〇〇県の山奥に同じ思いで苦しんで逃げてきた女性をかくまう施設があることをネットの仲間から聞いて……」
虹雨はううむ、と口元を触る。ミツオは手が震えている。
「ミツオ君はナナさんを逃した後どうするつもりだった」
「……普通の生活に戻るつもりです」
「でも戻れんかったな、死んだから」
「……」
「それにナナさんをその場所に連れて行ってもナナさんは大変な思いをしただけでしたよ」
「なんで? そこは絶対ナナさんを救ってくれるって」
「誰から聞いた」
虹雨はミツオに詰め寄った。ミツオはおろおろする。
「ネットで……」
ナナも頷く。
「ネットでか、ネットでって。鵜呑みにしたんか……」
「鵜呑みというか……」
「藁にもすがる気持ちやったのはわかるが、事故で死んだ方がまだマシやったわ」
「なんで!!!」
虹雨はカバンの中からいつものサングラスと革手袋をつけた。服はスエットのままだがこの方が気合が入るようだ。
「なぁ虹雨、なんで死んだ方がまだマシやったってどういうことや」
「たわけか。〇〇県の山奥、施設でピンとこないか」
「……ええと……」
由貴は考える。カメラが下を向いたのを虹雨が直して自分の顔を映した。
「俺らの天敵である一つ、女王蜂たちの巣どこだ……」
「あっ……」
由貴は思い出した。ナナとミツオは2人の顔を覗き込む。
「何ですか、女王蜂って」
「……そなんお前らが今知っても意味がない、成仏せぇ」
虹雨はミツオの額に指を当てた。
「え」
ミツオとナナは消えた。
「……ふぅ」
虹雨はサングラスを外した。
消えた後、虹雨はこの家の管理している不動産に連絡、その間に由貴は早速編集作業をしている。
電話を終えた虹雨はため息をついている。
「どした、やっぱ曰く付きだったか」
「……」
虹雨はサッシの鍵の辺りを見る。何箇所も。そしてようやくわかった。
「一箇所だけ鍵の種類が違った」
「違った?」
由貴は近くのサッシの鍵を見るが……。
「あのベランダのところだけここ最近、しかも本当にごく最近鍵を変えられている。ここは昭和に造られリフォームはされているものの、サッシとかは綺麗に掃除すれば使えた……だがあそこはサッシごと全部ここ最近変えられている」
「確かにあそこだけ綺麗やな」
「この家、一年近く空き家だったらしいがその間に人に入られている」
「え、それ聞いてない。事故物件扱いにならないんか」
虹雨はうなずいた。
「管理人いわく、人がここのガラスを割って鍵を開けて一晩くらい過ごした形跡があると。ゴミとか落ちてたらしい」
「まー空き家とかは空き巣や侵入者とかあるって聞くけど誰も住んでなくてライフライン止まってるのによく入るよな」
「寒さ凌ぎとか、曰く付きのところだっなら肝試し、とかあるがここは事故物件ではないから寒さ凌ぎとか……子供たちの悪戯、犯罪やらあとは男女のあれやらこれやら」
虹雨が言葉を濁す。
「男女のあれやらこれやらってさ、ラブホ目的で忍び込むってやつか。虹雨、濁さへんでもええんやで」
「……ん、まぁ。でな、そのあの二人が事故の二日前から大雨だった。そうとなると管理人さんが毎日掃除するにもいけなかった。ここに二人が現れたのも事故起こす直前までこの家で待機していたんじゃいかと。ネットニュース見てナナさんは数日行方不明の後に事故で見つかったようだし」
「二人はここでやったんかな」
虹雨は首を傾げた。由貴は覗き込む。
「こういう話は苦手か、まぁ昔からやけどな」
「うん。にしてもさ……まだあいつらはいたんやな」
由貴もうなずいた。
そう、女王蜂。
#衝撃のラスト
山根利広
1,673
52
418
二人にとってはこの名前は恐ろしい名前である。だが多くのものが2人が子供の頃霊退治をして活躍していたのを忘れたのと同様に忘れ去られている。
女王蜂によって悲惨な事件が起きたことも。
「あの時に天狗様が身を投げてまで破滅したはずなのに……」
「だよな。天狗様も奇跡的に回復したけど……しぶといやつやな」
「明日仕事の前に寺に行って報告するか。ってそういえば仕事の内容確認したか?」
「しとらん」
やれやれと虹雨が依頼の紙を封筒から出した。
コメント
1件
ミツオとナナの成仏、あっさりしてたけど“成仏せぇ”の一言が逆に重くて胸に残りました。ネットの情報を信じた結果の悲劇、そしてふたりの背後に「女王蜂」の影がちらつく不気味さ…。ラストの鍵の違和感と空き家の侵入者、ホラーとミステリーが混ざってゾクゾクしました。次回が気になります!