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第五話「次の食材」





🔪ユリウスの夢


暗闇の中で、ユリウスは息を潜めていた。


――足音が響く。


重く、湿った音。まるで血の海を踏みしめるかのような、粘ついた音だった。


“誰か”が近づいてくる。


視界はぼやけ、世界は夢と現実の狭間にある。


そこにいたのは、”次の食材”。


黒い影が形をなす。

細身の体、長い髪。

そして、虚ろな瞳の中に、”渇望”が滲んでいた。


「……私、食べられるの?」


その声が響いた瞬間、ユリウスの意識は現実へと引き戻された。


目を開くと、すぐそばにスケアリーが座っていた。


「おはよう、ユリウス。今夜の”食材”はどうだった?」





🔪新たな犯人:アリア


「次の”料理”は、どんな味がするの?」


スケアリーが愉快そうに尋ねると、ユリウスは少し考えてから答えた。


「……乾いた味。」


「へぇ、乾いてるの?」


スケアリーは興味深げに目を細めた。


「つまり、”水分”が足りない……”血”が足りないってことかな?」


ユリウスは、夢で見た少女の姿を思い出す。


細くしなやかな肢体。

くすんだ灰色の長髪。

肌は青白く、目の下には深い隈が刻まれていた。

唇はひび割れ、まるで何日も水を飲んでいないかのようだった。


「”渇望”していた。」


「なるほど……」


スケアリーは指を舐めながら、不敵に笑う。


「じゃあ、”潤してあげる”しかないねぇ。」





🔪存在定義への冒涜 → 「絶対名辞の侵犯」


「お前って、まるで”恐怖の哲学者”みたいだな。」


ユリウスが何気なく呟いた瞬間だった。


バァン!!


テーブルが弾け飛んだ。


スケアリーが立ち上がり、紅茶のカップが床に落ちて割れる。


「は?」


目が、血走っていた。


「今、なんつった?」


ユリウスは、反射的に身構える。


スケアリーの指がピクピクと震えていた。


「”哲学者”だと? 俺を?」


「いや、ただの例えだ。」


「違うねぇ……お前は”俺”をどう見てるんだ?」


空気が冷える。


次の瞬間――


「俺を”学者”なんかと一緒にすんなよォ!!!」


ガンッ!!!


スケアリーの拳が壁にめり込む。

石膏が砕け、粉が宙を舞う。


「俺は”思考”しねぇ。”考察”しねぇ。”分析”しねぇ!!」


彼の目が、まるで奈落のような闇に沈む。


「”感じる”だけなんだよォ!!」


ユリウスは、冷や汗をかきながら息を整えた。


「……悪かった。」


スケアリーは、数秒沈黙した後、ふっと笑う。


「ま、いいや。”次の料理”に集中しよう。」


だが、ユリウスの脳裏には、彼の狂気が深く刻まれていた。





🔪スケアリーの実況「乾いた料理」


「さてさて、今回の食材は”乾燥系”だねぇ。」


スケアリーは、目の前のアリアを観察する。


「うん、見事な”干物”だ。」


アリアは、虚ろな目でスケアリーを見つめる。

彼女の唇は乾ききってひび割れ、肌には生気がなかった。


「”乾いた恐怖”は、”湿らせる”ことで旨味が出る。」


スケアリーは、指を鳴らした。


「じゃあ、たっぷり”血”を加えて、”瑞々しい恐怖”に仕上げようか。」


アリアは、ふっと薄く笑った。


「……楽しみ。」





🔪「次の料理」への準備


「さて、ユリウス。どう料理する?」


スケアリーは、満足げに紅茶を飲みながら問いかける。


ユリウスは、アリアを見つめる。


彼女の目の奥には、”渇望”があった。

何かを求めている。

それが”恐怖”なのか、それとも”死”なのか――


「……”渇きを潤す”しかない。」


スケアリーは、その言葉に嬉しそうに頷く。


「そうそう、それでこそ”観察者”だよ。」


そして、彼はにぃっと笑いながら告げた。


「次の料理、始めようか。」






次回 → 「渇望する者」



スケアリーイズム - 完全犯罪のレシピ

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