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ーーリヨンは、この国に嫁いでからというもの、私室から外へ足を踏み出していなかった。
王の不在の宮殿には、他国からの使者もほとんどない。
本来ならば、王の隣に座り、作り笑いなど、たむけるものなのだが、それもなく、じっと私室に控えているばかりの日が続く。
輿入れしてから五年。いまだ王は、彼女に指一本触れようとしない。
――代わりばえしない生活。
窓から見える主《あるじ》不在の、王の私室。
そして、あの女の声……。
今日もまた、ドンレが女官長ぜんとして、リヨンの元にやって来ている。
他人の顔色を伺いながら息をする生活は、うんざりだった。
「お前、子を産めといいながら、王は、どこにいる?ん?王無くして、どうすればよいのだっ!!」
「それは……」
ドンレは、言葉を濁すしかなかった。
王は見事に王妃をさけた。
指一本触れぬ中で、子を産むことなど到底できる訳がない。
「私に恥をかかせおって……。退屈しのぎに、宦官と交わってどこが悪い?」
「交わるとは!!お慎みください!」
「皆、やっておる。そうだろ?」
ののしりあいのごとく会話は続く――。
リヨンの言うように、後宮に詰める女達が、宦官や守護兵と、情を交わすのは日常茶飯事のこと。
内の世界に閉じこめられて、息抜きと向かう先は宮の中にいる、美しくたくましい男の腕の中と相場は決まっている。
それを、王妃だからと責め立てられては、たまったものではない。
美しい宦官相手に、日々過ごして何が悪いのだろう。
そもそも、国の表舞台、治朝ですら阿片が蔓延し、乱れきっているというのに。