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「どんなやつなの…?」俺は不安げに李灯に聞いた。すると
「なんか髪型はリーゼントで…そうだ!めちゃくちゃ不良ぽかったぞ!それであのーえーと。『夜星裕翔を出せ。栗原叶璃を倒す前に俺を倒してみろ!』って言ってたぜ。」
「俺は嫌だ。っと言ったんだがなかなか引かなくてな。多分もうすぐ寮の前くらいには来ると思うぜ。裕翔、警戒しておけ。俺が裕翔を守ってやるからな。」
李灯の言葉で理解した。動画を見た奴らの仕業だな。あと、李灯優しすぎか?
俺が無能力者だと動画を見て知っているのにも関わらず挑んで来るなんて、とんだいじめっ子だな。
と、後ろから急に誰かの声がした。
「そこら辺は俺がなんとかしときましょう。」
声が部屋に響き渡り、叶璃がリビングに入ってきた。叶璃は両手をまえで組み、真剣な顔をしている。
「叶璃。どうする気なんだ?確かにお前は強いけど、学園内での能力の戦闘は問題になるんじゃ…。叶璃の地位のためにもやめといたほうがいいと思うぜ?」
「大丈夫です。ちょっとばかし教育するだけですよ。それに俺の能力なら穏便に済むはずです。全て俺に任せて下さい。それにしてもあの動画…。俺のためになっていないことを勝手にしやがって…。とんだ迷惑ですね。」
と叶璃は自身のファンに対する怒りと勝敗に関して自信満々に答えた。でもやっぱり俺は叶璃が心配だ。無能力者だから能力での戦闘なんていうのは分からないけど…「俺のため」というところも、叶璃には朝の出来事で少々苛つくけど、申し訳なくなってしまう。俺のためなんてのは自信過剰かもたけど。そんな俺の表情から俺の心情を理解した叶璃はすかさず言った。
「忘れたのですか?」
そうすると叶璃は俺の方へと歩いてきて、少し微笑んで俺に言った。
「貴方に小声で言ったはずですよ。『一般庶民と同じにするなよ。下民。』と。俺が一般の生徒になんて負けることはありません。」
俺は無言になり、叶璃の方をゆっくりと向いた。真っ直ぐな眼差しで心が安心して、同時に叶璃を信用してみようとも思った。
「それに貴方は『今は』弱いんですから。怪我されても困りますし、俺に任せて下さい。それに俺の実力を一回見てもらわないと…。あなたが知らない次元を俺が教えてあげます。」
こんなことを言うと叶璃はくるりと後を振り返ってまっすぐと玄関に向かっていった。
「お、おい!待て叶璃!」
「とりあえず、3人で外に出るか。」
李灯の言葉ににうなずきながら、叶璃の背中について行った。
廊下を歩いているときに、
「裕くんは後ろの方から叶璃さんの戦いを見てて。攻撃が来たら僕が守るから。」
と雨下が優しく言ってくれた。これで俺も安心して叶璃の戦いを見られる。雨下に感謝だ。
「夕方頃にはもういるんだよな?李灯。」
「多分いると思うぜ。気をつけろよ。」
と、叶璃と李灯も話していた。
もうすっかり夕日が紅く染まってきていた。
そして李灯の予想通り、ドアの前には不良組3人がいた。寮の前で不良集団は大声を上げている。
「おーいw夜星裕翔は来ないのか?」
「怖気ついたのか?www」
そんなことを言って裕翔を煽っているとガチャと言う音と共にドアが開いた。そこには…
最強。「栗原叶璃』がいた。
「ごめんなさいね。夜星裕翔ではなく俺がきました。まぁ、俺から裕翔くんに言って、きたんですけどね。」
「お前は…栗原叶璃!?!?」
不良達も叶璃のことは知っていたみたいだ。一瞬びっくりしていたがすぐに言葉で攻撃を開始し始めた。
「はっ!なんだ?俺らに倒されたいんか?坊っちゃんだろうが叩きのめすぞ?」
「最強さんよぉ。何がすごいかはわからないけど一回やられないとわからないみたいだな!!!」
そういうと急に場の空気が引き締まり、不良集団の一人から能力での攻撃がきた。
「行け!魔法弾!」
不良の一人が手を前に合わせると、手の先から魔法でできた紫の弾が何発も飛んできた。当たると痛そうだ。
流れに乗り出して他の2人も攻撃を始めた。不良3人組は叶璃に攻撃を仕掛ける。3対1なんて卑怯じゃないかとは思ったが、そんな思考も容易に吹き飛ぶほどの凄い光景を、俺達は見ることになる。
叶璃は能力を使わずにするすると弾の間を避けていった。不良の能力はあまり強くはなかった。幼い頃から莉愛達の能力を見てきたからこそそう思えた。
外野でこっそりと見ていた俺達にも弾が飛んできたが、雨下の能力でできたバリアで容易に防ぐことができた。そういえば雨下の能力は何なんだろうな?また今度聞いてみよう。
そんなこんなで戦闘が続いていたが、不良達はつかれてきているように見えた。
「クソッ…!なんで1発も当たらねぇんだよ!」
「チートだろチート!なんなんだよ!」
一方、叶璃は汗一つかかずに凛とした顔をしていた。
そこで不良達の攻撃が止んだ。叶璃は無言で不良達に近づいた。
「ひぃ…!近づくな化け物!!!!」
不良達はひどく怯えていて尻もちをついていた。ある程度近づいた叶璃はそこでぽつりとつぶやいた。
「はぁ…腕試しぐらいにはなれよ。」
そう言った途端。叶璃は一瞬にして俺達と不良3人組の前から消えた。
「は?あいつどこいった!!」
先程の声はいつもの叶璃ではなかった。そして今度は怒りの声で高速移動をしながら不良に言った。
「…俺のサンドバッグになるぐらいの耐性は持っててくれよ!」
そして叶璃は能力を使った。それは、俺達には理解できない能力だったのだ。そこで隣にいた李灯が叶璃の方を見ながらぼそっと言っていた。それが叶璃の能力なのだろう。
「…完全なる全能(パーフェクトアビリティ)」
と。
叶璃が能力を使ったその瞬間、視界が光で覆われた。その一瞬は目を開くことはできなかった。見えたらこの世とは思えないに凄いものを見ることになるだろう。だが俺には見えていたんだ。…叶璃が眩い光の中で、能力で編み出した剣を使い、素早く、綺麗に敵を切っている姿を。
そしてこれが…叶璃の能力が、俺の運命を変えるものなんてこのときは知らなかった。