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「ルー姉様、見て。湖で鳥が泳いでいるよ」

「あっ、本当だ! ジュリアン、行ってみよう?」


楽しそうに駆けだすルシンダを義弟のジュリアンが追いかける。


「ふふっ、二人とも元気ね」

「たまにはこうして家族で出掛けるのもいいな。湖のそばに別荘を作ってよかったよ」


水鳥を指差してはしゃいでいる様子の娘と息子を眺めながら、フィールズ公爵夫妻が微笑み合う。


「ユージーンも、仕事が忙しいって言っていたけど、一緒に来られてよかったわね」


アニエスがもう一人の息子に声を掛ける。名前を呼ばれたユージーンは少し得意げに口角を上げた。


「せっかくの家族旅行なのに、僕だけ置いてけぼりなのは嫌ですからね。急ぎの仕事は全部終わらせてきました」

「さすが私の息子だ」


ベルトランが誇らしげにユージーンの肩を叩く。


「こんなに優秀なら、早く跡を継いでもらって、私はアニエスとのんびり暮らそうかな」

「気が早いですよ。父上にはまだまだ現役でいていただかないと」

「そうか? だが、いつでも爵位を譲る準備はできているからな」


ユージーンが苦笑を浮かべていると、ルシンダとジュリアンが湖から戻ってきた。


「お兄ちゃん、あっちにボートがあったの! 私、乗ってみたいな」

「よし、じゃあ僕が漕いであげよう」


ユージーンがルシンダの頭を優しく撫でると、木陰のほうからアニエスが呼ぶ声が聞こえてきた。


「みんな、そろそろティータイムよ。こっちにいらっしゃい」


使用人たちが屋外用のテーブルセットにお茶とお菓子を用意してくれたようだ。みんな揃ってアニエスの元へと向かう。


「ほら、あなたの好きなジャムクッキーもあるわよ」

「本当だ。では早速いただくよ。うん、美味しい」


好物のクッキーを頬張り、ベルトランが満足そうに顔を綻ばせる。家族旅行だからか普段よりリラックスしているようだ。


微笑ましい姿にルシンダが目を細めていると、ティーカップを片手にアニエスが尋ねてきた。


「そういえば、ルシンダのお仕事は順調? 怪我をしたりしていない?」

「はい、大丈夫です。それに、怪我をしても自分で治せますから」

「……そうよね、ルシンダは治癒の魔術が使えるものね。でも、つい心配になってしまうのよ」


アニエスが頬に手を添え、眉を下げる。

義母が自分を心配してくれるのが嬉しくて、ルシンダが口もとを緩ませる。


「ありがとうございます。でも、もう王宮魔術師団に入って三年目で仕事にも慣れてきましたし、安心してください」


ルシンダは二年前に魔術学園を卒業し、念願だった王宮魔術師団で働いていた。


真面目に勉強して成績優秀だったルシンダは学園の推薦枠から出願し、試験にも上位の点数で合格して、無事入団したのだった。


治癒の魔術が使えるうえ、全属性に適性のあるルシンダは、魔術師団でも重宝され、これまでさまざまな仕事に同行させてもらっていた。そして最近はルシンダがメインで仕事を任せてもらうことも増え、ますますやりがいを感じているところだった。


「そうね、ルシンダはしっかりしているから大丈夫よね」


それから話題は魔術学園二年生となったジュリアンのことに移った。ジュリアンは学園生活について質問攻めにあったが、ユージーンやルシンダが自分のときはこうだったと話すのを興味深そうに聞いていた。


ひとしきりお喋りを楽しみ、少し会話が途切れたところで、ユージーンがルシンダに声を掛けた。


「ルー、さっきボートに乗りたいって言ってただろう? お菓子も食べたし、今から乗りに行かないか?」

「うん、行きたい! ジュリアンも一緒に行く?」

「あ、ぼくは少し眠くなってきたので、ここでうとうとしてようと思います。兄上とルー姉様で行ってきてください」


そう返事したジュリアンは、たしかに眠たそうな目をしている。お菓子を食べた後で眠くなるなんて、まるで小さな子供みたいだ。もう十七歳で体つきもしっかりしてきたはずなのに、ルシンダの目にはまだ出会った頃の愛らしい姿が重なって見えてしまう。


「分かったわ。また明日一緒に乗りましょう」

「うん、いってらっしゃい!」


えっ、ここは乙女ゲームの世界? でも私は魔術師を目指すので攻略はしませんから

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