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管野アリオ
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あの日、朝陽への気持ちに気付いてからというもの何も手につかず、平日は仕事をミスしないようにこなし、夜は自宅で朝陽のSNSアカウントを眺めたり、未だに続くメッセージのやり取りを楽しんでいた。
そんな中、明日の金曜日の仕事終わりに朝陽を誘って飲みでも行こうかと思っていた亜佑美の元に友人から電話が掛かってきた。
「もしもし?」
『亜佑美、お願い助けて!!』
開口一番、半泣きの声が飛び込んできたことで亜佑美は思わずスマートフォンを耳から離しかけた。
「え、何? どうしたの」
『明日の合コン、一人来れなくなっちゃったの! 今必死に探してるんだけど全然見つからなくて……! お願い、亜佑美参加して!!』
「いや、私、合コンはもう……」
『一次会だけでいいから! 本当にお願い!』
畳み掛けるように頼み込まれ、亜佑美は困ったように眉を下げる。
正直、気は進まなかった。
以前ならまだしも、今はそういう場に全くと言っていい程興味が湧かないから。
けれど、これまで何度も誘ってもらった恩もあることからここで突っぱねるのも悪い気がして、亜佑美は小さく息を吐いた。
「……分かった。今回だけだからね」
『ありがとう亜佑美!! それじゃあ詳しいことはメッセージで送るから』
「了解」
通話を切ると亜佑美はソファーにもたれたまま天井を見上げてため息を吐き、
「……はぁ、何で引き受けちゃったかな」
そう嘆きつつ、今更どうにもならないことを嘆いても仕方ない、合コンは本当に今回限りにしようと改めて心に誓って気持ちを切り替えた。
翌日の仕事終わり、待ち合わせの居酒屋は金曜の夜らしく賑わっていた。
「亜佑美! こっちこっち!」
友人に手を振られ席へ向かうと、既に男性陣も揃っている。
「すみません、仕事が定時に終わらなくて……」
そう一言謝りながら空いている席に座った亜佑美が正面に視線を向けると、整った顔立ちに落ち着いた雰囲気を纏った爽やかイケメンが笑みを浮かべている。
以前の亜佑美なら、間違いなく“当たり”だと思うだろう。
「亜佑美さんって、すごく綺麗ですね」
「あはは、ありがとうございます」
「さぞモテるでしょう?」
「いえ、そんな……」
そう答えながらも、心は驚く程動かなかった。
乾杯や自己紹介を終え、各々が会話を振っていく中、亜佑美の向かい側に座る男――間宮 力弥は今回の合コンで一番当たりの男だった。
顔良し、性格良し、気遣いも完璧で、高学歴高収入、将来は実家の大病院の後継者。
誰がどう見てもハイスペックな男で亜佑美の理想そのものとも言える。
それなのに亜佑美は一切興味が持てず、会話をしながらもふとした瞬間に思い出すのは朝陽のことだった。
結局、全く乗り気にならない合コンは二時間程でお開きになり、
「今日はありがとう、本当に助かった!」
「ううん、どういたしまして」
「ねぇ、間宮さんめっちゃハイスペ男子で亜佑美の好みじゃん? 狙わないの?」
「うん、私はいいかな」
「本当に!? 一体どうしちゃったのよ、亜佑美」
「どうもしないよ。とにかく彼はパス。それじゃ、またね」
居酒屋前で友人と別れた亜佑美は駅へ向かって歩き出す。
それから少しして、
「亜佑美さん!」
後ろから名前を呼ばれて亜佑美が振り返ると、
「……間宮、さん」
そこには力弥が立っていた。
亜佑美に追いついた力弥はほっとしたように表情を緩める。
「よかった……会えて」
「あの……何か?」
突然のことに困惑する亜佑美をよそに、力弥は少し躊躇うように視線を揺らした後、小さく息を吸うと、
「あの、少しお時間頂けませんか?」
そう用件を口にする。
その言葉でこれまでの経験上、亜佑美は力弥が何を言いたいのかは何となく察する。
「……すみません、今日はちょっと……」
事を荒立てたくない亜佑美は出来るだけ柔らかく断ると力弥は一瞬だけ表情を曇らせ、
「それなら、後日時間を作って頂けますか?」
諦めきれないようで、日を改めて時間を作って貰えるかを確認する。
「それは――」
曖昧にしていてはいけないし、期待を持たせる方が失礼だと思い直した亜佑美が覚悟を決めて口を開きかけた、その時、
「木葉さん?」
ふいに横から掛けられた聞き慣れた声に亜佑美ははっとしてそちらへ視線を向けると、
「……っ」
そこには朝陽が立っていた。
合コンに行く前も最中も駅へ向かう時もずっと会いたいと思っていた朝陽が目の前に居る。
その事実は嬉しいが、今この状況下で会いたくは無かった亜佑美。
一見いつも通り穏やかな表情を浮かべているようだけど、亜佑美の隣に立つ力弥を見た瞬間、朝陽の瞳が僅かに鋭さを帯びた。
「……知り合いですか?」
「あ、えっと……」
合コンに参加していたことは朝陽に話していないこともあり、どう答えようか悩んでいた亜佑美。
そんな中、力弥が朝陽へ向き直り、
「すみませんが、亜佑美さんは今私と話をしているところなので、遠慮していただいても宜しいでしょうか?」
遠回しに朝陽に立ち去るよう話をするも、
「あの、申し訳ないですけど、私からお話しすることはありませんので、これ以上は困ります……」
亜佑美が自分から話すことは何も無いと伝えると、力弥は言葉を詰まらせた。
そんな二人を前にした朝陽は、
「用件は済んだみたいですね。送りますから帰りましょう、木葉さん」
力弥が見ている目の前で亜佑美の手を取り、どこか牽制するような瞳で力弥を見た朝陽は亜佑美の手を繋いで歩き出した。
手を引かれた亜佑美は力弥に視線を向け、「失礼します」と一言告げると、朝陽と共にその場を去って行った。
コメント
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うわっ、亜佑美が合コンに行ったところを朝陽に見られちゃった…!(ドキドキ)現れた朝陽の瞳の鋭さと、そのまま手を繋いで連れて行くシーン、めっちゃ“俺の女”感出てて痺れた。ハイスペ男子・間宮さんよりも朝陽の引き締まった横顔を選ぶ亜佑美の気持ち、すごく分かります🥀 次どうなるんだろう…!