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(気が滅入る色だ……。)
部屋に下がったウォルは、物思いにふける。
(……仕方ない。仕方なかった。)
収まりのつかない胸のうちを、どう扱って良いかわからない。
どかりと、窓辺の長椅子に寝ころぶと、ウォルは、窓の彼方に霞む紅色を見た。
……一日は長い。
だが、明日はもっと長い一日になるだろう……。
――色とりどりの花びらが、大河に飲みこまれていく。
空には黒い狼煙の筋が不気味にのびて、あたりでは馬の嘶《いなな》きがこだまする。
駆《か》ける。
馬は駆ける。
ひたすら駆ける。
花が綺麗だと、声がする。
その幼子《おさなご》の声は透き通り、物恐じ一つ感じさせない。
――崖から、花びらが舞っている。
落ちて、
大河に飲み込まれ、
花びらが……。
違う!
ミヒ!!違うんだ!
見てはいけない!
――体中に激痛が走ったかのような気がして、ウォルは思わず叫んだ。
……夢。
「寝込んでしまったのか……」
ちいさく伸びをして、かるく頭を振る。体はじっとり汗ばんでいた。
開かれていた小窓からは、少し冷たい空気が流れ込んできて、見える空は、すでに茜に染まっている。
いやな夢を見てしまった。
ことのほか頭が重く、汗を含んだ衣の肌触りが、不快きわまりない――。