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黒檀の家具で揃えられている部屋――。


その上座。


仰々しい屏風と二脚の椅子が目につく。


椅子の後ろでは、女人を象徴する紅色の牡丹の花が、花弁をあますことなく広げている。


ジオンの命で特別に描かれたものだ。


うつろな様子のミヒへ、卓上に夕餉を並べているユイがやさしく声をかけた。


「ウォル様も、そろそろお越しになりますよ」


うんと小さく頷きながら、ミヒはあくびをかみしめた。


「あらあら、本当にお目覚めが悪いようで。何も、無理にお起きになる必要はなかったのに。屋敷にいるのは、気のおけない者だけなのですから……」


燭台《しょくだい》に明かりを灯しながら、ユイはくすりと笑う。


今、屋敷には、ユイに料理番、あと数人の下男しかいない。


気心しれた者だけを残し、他の者達には休みを与えていた。


侍女達は、好奇心おおせいで噂話が欠かせない。


王の婚礼は格好の餌食となり、ここのところ、気もそぞろで仕事も手につかない有様だった。


ミヒにいらぬ気苦労をかけてはと、ウォルが皆に、休みを与えた為、お陰で屋敷は静まり返っている。


「……いやな夢をみたの」


「また、いつもの夢を?」


ミヒの呟きに、ウォルの声が問いかけてきた。


ミヒは慌てて入り口に目をやった。


「まあ、ウォル。なんだかいつもと感じが違う」


「少し蒸すからね。衣を変えてみたのさ」


「紗《うすぎぬ》の衣とても素敵だわ」


ミヒはうっとりした瞳をウォルにむけた。


燭台の明かりが衣を照らし、空色の生地が光っている。


「それで、また夢をみたんだね?どんな風に?」


「ええ、でも……いつもと違っていた」


口ごもるミヒをなだめるかのように、ユイが給仕を始める。


ウォルは席につき、小さく頷いて、差し出された盃を受けた。


「私ね、誰かに抱き抱えられていたの」


「誰かにミヒが?きっと、ジオンだろう。あの時、ジオンがミヒを抱き上げたから」


「……あの時?」


ミヒは首をかしげてウォルを見た。


何気に発してしまった言葉に、ウォルは顔を曇らせる。


「私は夢の話をしているのよ?」


「ああ、そうだったね。ミヒの見た夢の話だった。暑さのせいでなんだか、おかしなことを言ってしまったようだな」


注がれた酒を口に運びながら、ウォルは言葉を濁した。

朱(あけ)の花びら

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