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19 - 【最終章】第1話 夫の心境

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2023年09月27日

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逆プロポーズされるという、嬉しくも情けない一日から少し経ち、俺は既婚者となった。

階級は警部補へと昇進し、若くて可愛い妻を得た俺は、端から見れば幸せな生活を送っているように見えるだろう。

実際、生活や仕事、妻にもなんら不満は無い。むしろ幸せ過ぎて怖いくらいだ。

だが、最近とにかく気が重い…… 。

家に帰るのも気が引ける。

妻の唯は本当に何の問題は無い。家事も料理も、忙しい俺の代わりによく頑張ってくれている。


問題があるのは、俺自身だ。


自分の欲求がコントロールできない事に、かなり参ってきているのだ。今の生活を維持する為に一番必要な、自制心や理性が欠落しそうな毎日。

いったい、どうしたらいいんだ——




俺の初めての性的な経験は高校の時だった。近くにある、別の高校に通っていた子とだった。知らない子にいきなり告白されて驚いたが、特に問題も無かったから付き合う事にした。

半年後、彼女の方から迫られて行為に及んだのだが、終わった直後にフラれた。

『こんな人だと思わなかった!』の言葉とビンタ付きで。

正直、彼女が何故怒っているのかさっぱりわからなかった。何が悪かったのかを振り返って考えようともしなかった。

別に、彼女を失う事など怖くもなかったから。


その後も数人の女性から告白され、最初の彼女と同様にそれなりの期間が経っても手を出そうとしない俺に焦れ、襲われる様に行為へと到るが、初めての時の様にフラれた。

『こんな事ついていけない』

『こんな人だとは思わなかった』と、決まりの台詞付きで。


(最中は相手も喜んでいたようにしか見えなかったのに、何故そこまで言われるんだ?)


何度も何度も絶頂を与え、何の不満があるというんだ。

…… 理解できない。

いったい何が悪い。


でもそれ以来、俺は誰とも交際する気になれなくなり、付き合いを申し込まれても全て断るようになった。誰かと肉体的関係を持つという事自体、したくなくなった。




妻となる唯と出逢い、四年間の空白期間を経ての交際。

今回は同じ失敗はしたくない。今までと違って、自分からもちゃんと好きだったからだ。


失いたくない、傷つけたくない。


しかもこんな訳の解らない理由でなど、唯にはフラれたくなどない。もっと時間をかけて互いを知り合ってから、きちんと今までの事を話して、抱き合う機会でも持てればと思っていた。

手も繋がない。

もっと触れたくなるから。

キスもしない。

もっと君が欲しくなるから——


なのにだ!交際が始まった一ヵ月半後には唯から逆プロポーズをされてしまった。

高級ホテルの最上階レストラン。夜景に囲まれた中でのそれは、とてもいい思い出にはなっているが、『結婚はいくらなんでも早過ぎるだろう』と、してしまった今でもちょっと思う。でも、断れなかった。愛しているのに断れるわけがなかった。

初めて手を繋いだのも、キスをしたのもこの日だ。

帰りのエレベーターの中。二人っきりになった途端、今まで押えてきた情念が表に出てしまい、俺は唯に欲情してしまった。扉が開き、別の客が乗ってこなかったらどうなっていた事か…… 。


その後。両家への挨拶などで慌ただしい中籍を入れ、部屋を探す暇がなかったので俺のマンションで新生活を始めることになった。

生活のし易さを優先してしまったせいで、独身のくせに広めの部屋を借りる羽目になっていたんだが、こうなると結果としては良かったのかもしれない。

荷物置きくらいにしか使っていなかった部屋に唯の荷物を入れて、彼女専用の空間を作る。『私の部屋はいらないよ?』と引っ越し前に言われたが、一緒に寝る事など絶対に出来ないので、『あると便利だぞ』と誤魔化した。

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