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今日から新婚生活のスタートだという日がとうとうきてしまっても、怖くて一度も自分の性癖を話せなかった。何が悪いのかがまず自分でわかっていないんだ、なのにどう説明したらいいのかなど、考えがまとまるはずがなかった。
一緒に少し豪華な夕飯を作り、お酒を飲みながらのお祝い。唯の好きなお店で買ったケーキと、彼女の紅茶も頂く。食後にはソファーに座って、再び酒を片手に色々な話をした。
ちょっとした沈黙のあと、どちらともなく、惹かれ合うようにキスをする。それは段々と熱を帯び、舌を絡める激しいものになっていった。
彼女の胸に自然と手がいきそうになった時、「…… 司さん」と甘い声で呼ばれ、手が止まる。
(俺は何をやっているんだ。——マズイ、このまま流されてはダメだ)
必死に衝動を堪え「おやすみ」と言い、俺は自分の部屋へ逃げる様に入って行った。
唯を傷つけてしまっただろうか?
どう見ても期待していたし…… 。
でもダメだ。ちゃんとまずは話さないと、手なんか出せない!
唯にまで事後に別れを告げられたら、もう生きていける気がしなかった。
深夜三時。全然眠れない…… 。
普段は疲れのせいですぐ寝てしまうのに、今日はずっともやもやとした感覚がどうしても消えない。
仕方なくゆっくりと体を起こし、ベッドから出る。部屋からそっと出て、居間を通り、唯の部屋のドアを音も無く開けた。静かな部屋に聞こえるのは彼女の穏やかな寝息だけだ。
ドクンッ…… ドクンッ…… ドクンッ——
自分の心臓の音がやけに大きくて耳に障る。息が荒れ、何も考えられなくなってくる。ただ本能のままに動く体。自分が自分じゃないみたいな気さえする。魂が抜けて、体だけが勝手に動いていくみたいな感覚だ。
そっと唯の眠るベッドに上がり、彼女の布団をはぐ。酒が入っているせいなのか、唯が起きる様子は無い。
触れないよう気を付けながら唯へと覆い被さり、顔を近づける。
(…… いい香りだ)
頬に軽くキスをし、首を甘噛みしてパジャマの上からそっと胸に触れる。体はすごく小さいのに、意外にも自己主張の激しい大きめの胸は横になっていても存在感がある。そのギャップでより一層衝動的な感情が胸にわいてしまい、ボタンを丁寧に外し、パジャマをよけた。
露わになった唯の素肌はとても綺麗で、自分の跡を残してしまいたくなる。ブラをクッと少しずらして胸の尖りを舐める。すると、唯の体がピクッと反応した。
起きたか?……いや、寝息に乱れはない。
ホッとした瞬間、ふと我に返った。
(——何をやっているんだ俺は!)
慌ててボタンを閉め直し、ベッドから降りて自分の部屋へ戻る。音を立てない様に何て気を使う余裕は全く無かった。
「——はあはあはあ…… 」
走った訳でもないに呼吸が苦しい。心臓の鼓動も異様に早く、体が熱くてしょうがない。
「どれだけ自制心が無いんだ、俺は…… 」
頭をかきむしり、布団へともぐりこむ。自然と自分のモノへ手が伸び、この日は無心で自慰行為に走ってしまった。
それからというもの、毎日のように自分の欲求を必死に押える日々が始まった。
何も知らない唯は平気で俺に抱きついてくるし、キスも求める。友人の新婚夫婦の夜の話なども、「すごいよねーびっくりしちゃうよ」と言いながら、恥ずかしそうに話してきた。
『頼むから止めてくれ』とも言えず、俺は徐々に仕事へと逃げるようになっていった。
(これじゃまずい。俺はもっとちゃんと、唯に幸せになってもらいたいのに)
寝れない日も続いた為、俺は縋るような気持ちで知り合いの医者の元へ行く事を決めた。