風呂場でお湯をたっぷり吸って重くなった服を脱ぎ捨て、互いの体にバスタオルを巻いて寝室まで彼女を運んだ。脱いだり拭いたりの作業を『自分で出来る』と、悲鳴をあげて彼女が拒否しようとするのを無視してお世話させてもらった。
(これで、イレイラが夫婦の営みに対し持ちそうな不安要素は無いはずだ!)
横抱きしているイレイラの体を、そっと夫婦のベッドにおろす。長い黒髪が白いシーツの上で散る様子は二度目でもうっとりしてしまう。本当にとても綺麗だ。この姿を永遠に見つめていたのに、一握りで散らしてしまいたい衝動にも駆られ、相反する想いに心臓が鼓動を早める。
イレイラが窓の外を見て不安げな顔をしたので、天蓋を閉めてあげたら、少し安堵した顔を見せてくれた。昼夜問わず、場所も厭わずに抱きたい僕とは違い、真昼間から営みに入る事にイレイラは抵抗があるのかもしれない。
僕もベッドに上がり、最後の一箇所も閉めて完全に個室状態にすると、厚手の布地のおかげで薄暗い空間になった。だけど見え難いままではつまらないので、淡い小さな光を数個手から出し、空中に浮かべて彼女の様子が見える様にする。
「綺麗ですね」と言ってくれたので良かった。これでその光を使って僕が何を見ようが、文句は言わせない。
「君の方がとっても綺麗だよ。嬉しいな、やっと…… 君に触れられる」
その事が嬉しくて嬉しくて、堪らない。僕はイレイラの頰に触れ、その柔らかな白い肌をそっと撫でた。
「…… え?」
「ん?」
「い、いえ!そう、ですね!うんっ」
少し驚いた顔をイレイラがし、顔を逸らした。一体どうしたんだろうか?
「どうかしたの?何か気になる事でもあった?」
僕の問いに対し、くっと一瞬イレイラが喉を詰まらせた。まるで言い難い何かを腹に抱えているみたいだ。
「…… これからの事を思うと、その…… 恥ずかしくて」
ちょっと何かを誤魔化された気がしたが、『恥ずかしい』には納得出来る。
「恥ずかしい?——そうか…… あ、じゃあいい事思い付いた」
「どうしたんですか?」
ベッドの上で横になったままのイレイラが、不安げな瞳を僕に向ける。それに対し、僕はニッと笑ってから魔法を発動させた。——次の瞬間、イレイラの体を包んでいたバスタオルをマーメードラインの白いウエディングドレスに変え、頭には長いベールをかぶせてみる。
「これだったら恥ずかしくない?バスタオル一枚じゃ心許ないもんね」
「そ、そういう意味じゃっ」
そう言いながらも、少し体を起こして衣装に目をやった彼女の表情は少し嬉しそうだ。的外れな事をしたって程ではないのだろう。
「えっと、もしかして…… このまま、す…… するんですか?」
(頰を染めて、恥じらうイレイラが可愛すぎる!)
そう叫びそうになったあたりから僕の脳は完全に煮詰まって、思考するという行為が出来なくなり、目の前の愛しい妻を獣の様に貪ってしまった。
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