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#普通
野々さくら
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ありあ
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MW9月号発売から数日後。
龍河から呼び出された怪異探求倶楽部の一同は、待ち合わせ場所であるファミレスへとやって来ていた。
約束の時間より少し早く到着した店内には、まだ龍河の姿はない。
「ちょっと早めに着いちゃったね」
信愛が店内を見回しながら言う。
「頼んでて良いって言ってくれてるし
とりあえず何か頼んじゃおっか?」
茜がメニューを手に取りながら続けた。
「なら、ひとまずドリンクバー頼んどく?」
さくらの提案に、信愛が頷く。
「あ、そうしよっか」
それから一同はドリンクを手に、他愛もない話をしながら龍河の到着を待つことにした。
しばらくして、さくらがテーブルの上に置かれていた『MW』9月号を開く。
「てか馬場さんの記事の反響凄いよね」
「ほんとそれだよね」
信愛も笑みを浮かべながら頷いた。
「売り上げも凄いらしいですよ
今で50万部近いらしいですし」
朝陽がそう口にすると、信愛が興味深そうに首を傾げる。
「それってどのくらい凄い事なんだろ?」
「調べてみたら、週刊文秋の平均部数が
45万部みたいなんでそれよりも
売れてるって事になりますね」
「オカルト雑誌がそこまで売れるってあるの?」
驚いたさくらが目を丸くする。
すると焔垂が、以前の記事を思い出したように口を開いた。
「確か『ノストラダムス』とか『口裂け女』が
ブームだった頃に40万部を記録したのが
これまでの最高らしいから過去最大になるな」
「あーあ、ポマードのやつか」
茜が納得したように頷く。
「口裂け女の話題で一番最初にポマードが
浮かぶヤツ、昭和生まれ以外に居るんだな」
焔垂は茜の言葉に苦笑いしながら返す。
「じゃあ馬場さん偉業じゃん」
茜の言葉に、朝陽も頷いた。
「ですね」
信愛はスマートフォンへ視線を落とす。
SNSでは今もなお、西鉄雄の名が飛び交っていた。
「それにツミッターもヤバい事になってるしね」
「ああ、それね!」
さくらもすぐに反応する。
「みんな『西鉄雄さんを忘れない』の
ハッシュタグで投稿してるもんな」
焔垂が言うと、茜は改めて今回の騒動の大きさを実感したように呟いた。
「こんな大騒ぎになるなんてビックリって感じ」
しかし、さくらの表情にはわずかな疑問が浮かんでいた。
「でもさ?発売された直後は大炎上してたよね」
「それね!めっちゃ心配したよ」
信愛も当時を思い出して頷く。
すると朝陽が、ふと疑問を口にした。
「何で馬場さんは発売と同時に
動画投稿しなかったんですかね?」
「同時に?」
茜が聞き返す。
「考えてみてくださいよ」
朝陽は皆の顔を見渡した。
「あの動画の西さんの音声が本人だと
認められたから炎上は鎮火したですよね?」
「だったら最初から同時に
投稿してれば良かったくないですか?
そうしてれば炎上する事も無かったのに」
その指摘に、信愛がハッと目を見開く。
「あ!確かにそうだよね!」
すると焔垂が、どこか意味ありげに呟いた。
「計算したんじゃないかな?馬場さんは」
さくらが怪訝そうに焔垂を見る。
「計算って?」
「馬場さんってさ、霊貴冥孤の件で炎上してただろ?」
焔垂の言葉に、茜がすぐさま反応した。
「だからこそ慎重にするべき!って話でしょ?」
「だから、その炎上を逆に利用
したんじゃねーのか?って話をしてんだよ」
「炎上商法って事ですか?」
朝陽が尋ねると、焔垂は小さく頷いた。
「おそらくな・・・」
「炎上商法ってあれだよね?わざと
反感買う様にして注目を集める的なヤツ」
さくらの説明を聞いた焔垂が、勢いよく指を差す。
「そう!それだよ!」
「なんでわざわざそんな事するわけ?」
茜はまだ納得できない様子だった。
「霊貴冥孤の炎上もそうだったけどさ
瞬く間に!って感じだったろ?」
信愛が当時を思い返すように頷く。
「確かに炎上って一気に
燃え広がるって印象あるよね」
「炎上ってポジティブな言い方をしたら
注目が集まってるバズ状態で
短期間での拡散力がエゲツないんだよ」
焔垂の説明に、朝陽が納得したように頷く。
「確かにそうですね。ちょっとの
事でも一瞬で拡散されますよね」
「さらに馬場さんはついこの前
炎上したばかりで、ネットユーザーも
『次またやらかす』って注目してたはずだ」
「なるほど・・・」
茜がようやく話の意図を理解し始める。
「だから馬場さんが仮に完璧な記事を
書き上げても揚げ足取りして炎上させられてたよ」
さくらが呆れたように肩を落とした。
「『何でも炎上させなきゃ死んでしまう病』
みたいなヤツ、確かに居るもんね」
「今回、馬場さんはそれを利用したんだよ」
「なるほどね」
信愛は感心したように呟いたが、そこでふと、ある言葉を思い出した。
「馬場さんも『あんたの事は俺が絶対に世間に
伝える』って西さんに言ってたもんね」
焔垂は力強く頷く。
「だから炎上を利用して、西さんの事を
より多くの人に伝えようとしたんだよ」
「ネットユーザーが頼んでもないのに
勝手に拡散してくれるからね」
茜が皮肉交じりに言う。
「そういう事」
朝陽はここまでの話を頭の中で整理し、静かに呟いた。
「で、記事がある程度拡散された
頃に動画を投稿したわけですね」
「だから西さんの事で皆んながここまで騒いでるのは
馬場さんのマーケティング力の賜物って事になるな」
信愛は、感心したように呟いた。
「馬場さんって、もしかしてすっごい人だったのかな?」
「かなり頭いいと思うよ」
焔垂はそう答えると、さらに自分の考えを続けた。
「しかも皆んなが使ってるってハッシュタグは
馬場さんが最初に使い始めたタグだしな」
信愛が目を見開く。
「最初からトレンド入りを意識してたって事だね」
「凄すぎて言葉がみつからないね」
さくらも感心したように呟いた。
一同は馬場龍河という人間の|強《したた》かさを痛感する。
そんな横で朝陽だけは何か引っかかっているようだった。
「でもですよ?レコーダーの西さんの音声を
バス会社の人と遺族が本人で間違いない!
って認めてくれなかったら
どうするつもりだったんですかね?」
その問いに、焔垂の表情が僅かに曇る。
「そこなんだよな・・・疑問は」
少し考え込んでから、焔垂は続けた。
「あれが無かったら炎上は鎮火してなかったろうしな
まぁ、そこは後から本人に直接聞けば良いだろ」
「まぁ、確かにそうだね」
さくらが頷いたところで、茜がふと時計に目をやった。
「てか馬場さん遅くない?」
信愛も時間を確認する。
「確かに遅いね。何かあったのかな?」
その時だった。
焔垂が突然、入口の方を指差した。
「あ!来たみたいだぞ」
その声に全員が一斉に振り返る。
焔垂が指を差した先には、息を切らしながら慌ただしくこちらへ走ってくる龍河の姿があった。
「あ!やっと来た!」
コメント
1件
×××さん、第171話読みました!馬場さんの炎上商法の裏側をキャラたちが推理していく展開、すごく面白かったです。確かに「炎上は逆に利用できる」って発想は頭いいなと感心しました。でも朝陽の「もし音声が認められなかったら?」という疑問が残る終わり方で、次が気になりますね!龍河本人が来たところでどんな話になるのか、続きが楽しみです。