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27 - 【後日談】 幻想的現実・最終話(秋穂芙弓・談)

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2025年06月03日

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ちゃぷんっ……と 雫が水の中へ落ちる音で目が覚め、重い瞼をゆっくりと開けた。服は着ておらず、どうやら私はお湯の中に居るみたいだ。周囲は湯気で満たされおり、数秒してやっと、此処が風呂場なのだと理解出来た。


「あぁ、やっと起きたみたいだね」

「……ロイさ、ん?」


ゆっくり振り返ると、濡れた金髪をかきあげる仕草をするロイさんと目が合い、不覚にもドキッとした。いつも眼鏡をかけている彼の裸眼状態を見たのはこれが初めてかもしれない。

青空みたいな綺麗な瞳と薄い唇が笑みを浮かべている。どうやら私は、浴槽の中で後ろから彼に抱擁される形で、お風呂に浸かっている様だ。私の髪は後頭部で結い上げられており、洗った後みたいに濡れている。


(もしかして彼がやったのだろうか?もしくは『彼』が)


「こういう時は、芙弓が軽くて助かるね。力が入っていなくてグッタリしていても、僕だけで洗えたし」

「……ら?」


「うん。『彼』に抱っこさせて、僕が洗ったんだよ」


防水だと教えた記憶はないのだが……やはり本当は知っていたのか。知っていながらもお風呂には侵入して来なかったのは『彼』なりに気遣いだったのか。その事がわかり、私はちょっとだけ『彼』の方見直した。


「本当に気を失うとは思わなかったよ。後で僕が到着するまでの間に、どれだけ『僕』と遊んでいたのか観ておかないとなぁ」

はぁと溜め息をつき、ロイさんが私をギュッと抱き締める。

「観ておくって……何を?」


「録画だけど?」


「……んな!」

私は驚き、咄嗟にロイさんから離れようとした。だが、彼の私を抱き締める力が強くなり、腕から抜けられない。


「僕の愛は重いって前に言わなかった?雪乃や仕事、友人達とかに分散されていた分がこれからは全部芙弓に向くんだから、君はこの先大変だねぇ」


そう言う声は完全に他人事だ。

「お、重いとかの問題じゃ無い!盗撮なんか犯罪だ!」

「仕事で忙しいんだし、仕方ないだろう?」

「仕方なくな——んあっ!」

突如後ろから首筋を噛まれて私は声をあげた。肌に噛み跡にそって血が滲み、それをロイさんが舐め取る。

「何にも怖くないから、安心して堕ちておいでよ」

ロイさんの手が私の手の方へと伸びてきて、私は手袋を外されている事に気が付いた。

「ダメ!」

止めるのも無視し、ロイさんが私の手を握り、遠慮無しに指を絡める。恋人繋ぎをするみたいに右手を捕まれ、私の中に彼の思念が大量に流れ込んできた。

「んんんっ……あぁ」

逢えないでいた間にロイさんが想っていた事の全てが体の中に溢れてきて処理出来ない。脳の中に素手を押し込まれ、無理矢理思考や記憶を書き込まれていくみたいだ。

「……これで、おあいこだよね?」


(自分も曝け出したのだから盗撮しても許せとか……し、信じらんない)


少し痛む体を震わせ、私は何度も荒い呼吸を繰り返す。殆どが仕事に関しての事だったし、そもそも情報量が多過ぎてさっぱり理解出来なかった。何やら大事な事も混じっている筈なのに、見事にそれらは見逃した気がする。

「あ、この後、『彼』に今の情報を追加しておいてあげてね。次は僕に代わって仕事に出てもらいたいから」

「……へ?」

間抜けな声で、私はゆっくりとロイさんの顔を見上げた。

「今度こそは、本気でしばらく芙弓と居たいからね。次は『彼』に働いてもらおうかなって。出来るよね?」

「無理じゃ、ないかな、流石に。動こうが、『彼』は所詮『人形』だよ?」

「あ、そうだ。いつまでも『彼』ってのもなんだし、これからは『ロイド』って呼ぶのはどうだろう?」


『コイツ、話を逸らしたな』とは思ったが、『彼』に名前を贈るのは賛成だった。


……だけど、本当はあまり褒められた行為じゃない。精巧過ぎる『人形』に名前を贈ると感情移入が過ぎるからと言う理由で、かなり早い段階から師匠には止められていたし。実際問題、私が引き篭もった最大の理由となった人形達も『名前』のせいで『本物』と『人形』の境目が薄れて結果的には『セクシャロイド』にされるという末路を辿ったのだから。でも——


「……いいと思う」


素直に頷く私の頭に「良かった」と言いながら、ロイさんがキスを贈ってくる。

「決まりだね」

ロイさんの言葉に頷くと、彼が左手に握っている物が目に入り——絶句した。

「んー?あ、気が付いちゃったかい?」

私の反応に即座に気が付いたロイさんが左手を開き、握っていた物に付いていた紐に指を通して、ソレをブランッと揺らして見せてくる。

「コレは防水らしいからね。此処はお風呂だし……ね?」

瞬時に考えを理解し、私は逃げるべく体力の回復したであろう体を動かし、湯船の縁に手を置いて立ち上がった。ロイさんが追加で何をしたかろうが先に逃げてしまえば関係の無い話だから。


「……ねぇ。その体勢の方がコレを入れやすいって、何で思い付かないかなぁ」


ロイさんは呆れながらそう言うと、私の秘部へと楕円形の玩具をグッと押し付け、迷いなくナカに沈めてきた。行為に続く行為によりほぐれたままになっていた膣内に難無く玩具は入り込み、もう嬌声をあげるしか出来ない。お尻を突き出すみたいになりながら、私は浴室の壁に手をつき、体を支えた。

「もっとしようね…… 芙弓」

うっとりとした顔でロイさんが私の太腿に舌を這わせる。


「逃がさないよ。僕を捕まえた責任は、キッチリ取って貰わないと」


彼の声の中に少しの怒りを感じる。……ロイさんはまだ本心では憤りを感じたままなのかもしれない。実妹への片思いだけで綺麗に完結していた世界にヒビを入れた、私という存在に対して。


(この『手』くらいしか取り柄のない私に、ロイさんの複雑な想いなんか受け止めきれるのだろうか?)


少しの恐怖を感じたが、水の滴る濡れた手で肌を優しく撫でられただけで、全てがどうでもよくなってしまった。ただひたすらに快楽を求め、浴室の中は淫楽に満たされる。

『人生』に多大なる影響を与える程に大事な事をこの先も見逃したまま、私はこの家に閉じこもり続け、この先も生きていく事になるのだろう。『もうそれでもいいかな』と思う辺り、『憧れ』や『惚れている(かもしてない)』という感情は、なんとも恐ろしいものだ。



【後日談・完結】

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