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「はぁはぁっ――はぁ!」
三人は人気の無い閑静な住宅街まで逃げてきた。
「――っ!? はぁ……」
振り返り、追跡されていない事が分かった三人は安堵したのか、ようやく一息吐いた。
「で、どうすんだよ!? 出頭しねえと……」
かの警告を忘れていないのか、一人がそう促す。
「馬鹿言ってんじゃねぇぞ! 捕まっちまうだろうが!」
それをよしとしないのか、もう一人が彼に掴み掛かった。
「でもよ……次は無いって!」
そうなのだ。強がってはいても、全員が痛感していた。
もう二度とあんな思いはしたくない――と。
「こうなったら集合かけんぞ!」
だがそれでも出頭したくはないのか、一人が携帯を取り出した。
「やっ……殺る気かよ?」
「このままじゃ捕まっちまうだろうが! なあに、人数集めてアイツら埋めちまえば問題ねぇ」
「でも普通じゃねぇよ奴等!」
つまりは出頭したくはないので、その前に幸人と悠莉を集団で始末する算段らしい。もっとも一人だけみたいだが。
やはり彼等に反省は無かった。
「じゃあどうしろってんだよ!?」
「どっかに匿ってもらうとか……」
在るのはただ、罪の擦り付け合いと身の保身。
「――あっ!?」
醜い言い争いをしていた彼等だが、何かに気付いたのか同時に振り返った。
「いや……い、今のは冗談で」
「こ、これから出頭しようと……」
三人は何を突然言い出したのか。それは彼等以外の“第三者”に向けてに他ならない。
彼等は全員、驚愕にうち震えている。
「な……何? ま、まだ何か――っ!?」
携帯を手にした一人が、何かを言い終わる瞬間だった。
「――っあびぃぃぃっ!?」
言い残し、そして沈黙。
「…………は?」
何が起きたのか、その他二人にも理解出来ない。
それは余りに一瞬の事。仲間の一人が鮮血と共に――弾けるように、五体が四方に分断されていたのだから。
「えっ……えぇっ!?」
細分化された“生体”だった各パーツに、仲間の生前の面影等何処にもない。
ただ息も詰まる程の飛び散った血による臭気が、直後に充満してきた。
「うっ――うわぁぁぁ!!」
「たっ――助けっ!?」
それが“殺害”された事を理解した頃には時、既に遅し。
残りの二人は絶叫と共にこの場から駆け出そうとしたが――
「――っ!!!!!!!」
その直後に彼等の五体も一瞬で四方に分離し、辺りに散らばっていた。
閑静な住宅街に突如展開された、酸鼻極まる地獄絵図。
「フフフ……」
その中に佇む者――
「間違いない……この魂の音色」
その遠目に見るものは何なのか。
映すは遠ざかっていく姿――
「やっと見つけたよ――“アミ”」
この凄惨な地獄を他所に、感慨深く呟いて。
「今はまだ……だが――」
それを最後に、この場から姿を消していく――
“今度こそ、貴女を幸せにしてみせる”
意味深な声だけを残してーー。
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