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僕が常田さんに聞きたいことはこうである。
「常田先生の考える「その世界」とはどのようなものですか。常田さんのこれまでの研究から予想できませんか。」
僕がこう言うと数秒間常田さんは目を瞑って俯いた。そしてこう切り出した。
「絶望の世界だよ。」
「え!?」
「聞こえたでしょう。絶望の世界です。人間もロボットも争いが絶えない、やがてこの星の地上では生活出来なくなる。何故だか分かるかね?」
「…分かりません。」
「人間に匹敵する最強の存在が一つ増えてしまうからですよ。生物というのはね、種族が違えば勿論、同じ種族でさえ「頂点」を獲るために争う。他を「支配」するためにね。これまでこの地球は人間という種族が頂点を維持してきた。それが感情の持つ高性能ロボットが湧いて出たらどうなると思います?」
「…人間はロボットを排除しようとする。ということでしょうか。」
「その通り。そしてロボットも黙ってやられてはくれないでしょう。感情を持っているのだから。戦争になりますね。ただ、あくまでロボットは人間の手で作られるものだから、弱点を知っている人間の方が有利かも知れませんね。案外争いはすぐに決着がつくかもしれません。でもここからです。」
常田さんは自分用に用意していたコーヒーを一口啜ると続けた。
「人はトラブルを乗り越えたら強くなると言いますが、人類規模だと話は変わる。大規模な戦争により地球は荒れて住む場所を求めて争いが起こるかもしれないし、はたまた人間に紛れ込むロボットが出てきて人間同士で疑心暗鬼に陥るかも。二次三次の争いが起こり、やがて地上では生活出来ないほど地球は荒れ果ててしまうでしょう。」
「…そうですか。正直残念です。僕の夢に賛成な意見が聞けると思っていましたから。」
常田さんはもう一口コーヒーを啜って、
「あくまで可能性の話です。和也くんがつくる世界ならこうはならないかもしれない。聞き流したいのであれば構いません。ただこれだけは分かってほしい。私は君より長い年月をかけて研究をしてきた。様々な分野を研究して、様々な人物や物に出会い、歴史を学び、たくさんの経験をした。その上で出した答えがこれなのです。」
「ショック受けてるね。」
帰りの車で鈴原教授が言う。
「はい。あんなにネガティヴな意見だとは思わなくて。鈴原教授は知っていたのですか。」
「…いや。知らなかったよ。」
なんとなく嘘だと分かる。多分教授は僕に覚悟を決めて欲しかったのだ。これから僕がしようとしていることは、良くも悪くも、世界を変えてしまうかも知れないのだから。