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私は絵のヌードモデルをやっているの。仕事を終えて、服を着ようと着替え室になっている倉庫に入ったら、子どもたちが入ってきちゃった! とっさに紙がいっぱい入った水槽の中に隠れたけど、これ、何?
「うわっ、すげー、物がいっぱいじゃん」
「ほんとだ。いろいろあるね」
どうやら子どもたちは私のことには気がついていないらしい。ほっとした。男の子と女の子の二人組みたいだけど、声しか聞こえないからよく分からない。
「これなんだろ? 箱?」
「あ、ダメだよ。触っちゃ」
「いいじゃん。ちょっと見るだけだって」
その会話を聞いているうちに、なんだか悪い予感がしてきた。この子たち、もしかして、私の入ってる水槽に近づいているんじゃ……。
「やめなさいよ。そんなことしたら怒られるよ」
「だいじょうぶだって。バレないようにやるし」
「もう……」
でも、どうしよう? 今ここで飛び出したら変だし……。とりあえずこのままじっとしておこう。
「ほら、見てみようぜ」
「だから、ダメだってば。勝手にいじったら怒られちゃうよ」
「大丈夫だって」
「まったく、しょうがないんだから」
そう言いながらも女の子の方が先に折れたらしく、「まぁいっか」と言いながら、二人とも私の入った水槽の近くにやってきた。ドキドキしながら待っていると、二人は水槽の中を覗き込んできた。でも私はたくさんの紙に隠れて、見えないはず。きっと安心できるはずだけど、それでも緊張する。心臓の鼓動が速くなっていくのを感じた。
「あれ? なんか書いてあるぞ」
「ほんとだ。なんて読むんだろう? こっちにもたくさんあるね」
「なんだろ? 文字っぽいけど……」
「あ、わかった。これ、去年のお祭りで使った、くじ引きだよ」
「ああ、そっか。じゃあ、くじ引いてみようぜ」
「えー、かってにさわっちゃダメなんじゃない?」
「いいじゃん、一回くらい。それに、こんなにあるんだから一個くらいなくなったっておかしくないし」
「そうだよね。うん、やってみよっか」
え? いや、ちょ、ちょっと待って!? 私は思わず止めようとしたけれど、そんなことしたら見つかっちゃう。二人の手が水槽の中の紙に触れていた。
「ん?」
男の子の手が止まる。そして紙を裏返して見た。
「なんだ、何も書かれてないじゃないか」
「え? うそ? 本当だ。なんで?」
「はずれだったんだよ。きっと」
「うーん、残念。せっかく当たりと思ったのに」(
ふぅ、危なかった……)私は胸を撫で下ろした。もし見つかっていたら大変なことになっていたかもしれない。(続く)