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25話 1900スポット ウイング小学校 バレンタインデーとエルフ
教室は、
いつもより静かだった。
机の並びは変わらない。
人数は多い。
それでも、
空気が少し違う。
リカは、
前髪を整えきれず、
上着の袖を指で引っ張る。
腰元で、
電子マネーのキーホルダーが
小さく鳴る。
手には、
包み紙に包まれたチョコ。
形はいびつ。
角が少し欠けている。
隣の席の友達は、
髪をきっちりまとめている。
手帳を胸に抱え、
深呼吸を一回。
後ろの席では、
派手めな服の子が
笑っている。
いつもより声は低い。
廊下に出る。
1900スポットの校舎は広く、
人が多い分、
すれ違いも早い。
気になる男の子たちが、
並んで立っている。
その中に、
耳の先が少し長い子がいた。
エルフ。
制服は同じ。
背丈も同じ。
でも、
耳だけが違う。
目が合う。
すぐに、
お互いに視線を外す。
一歩前に出る。
手が震える。
声が出ない。
少し間があって、
深く息を吸う。
チョコを差し出す。
「……どうぞ」
小さな声。
相手は、
一瞬固まって、
それから両手で受け取る。
「ありがとう」
声は低め。
耳が少し動く。
それだけ。
それで終わり。
教室に戻る。
席に座る。
机の上は、
いつもと同じ。
でも、
胸の奥が
少しだけ軽い。
今日は、
そんな一日だった。