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#普通
野々さくら
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ありあ
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「うー・・・ん」
信愛はしばらく悩んだ末、覚悟を決めるように顔を上げた。
「ちょっと怖いけど、頼んでみるしか無いか」
自分に言い聞かせるように呟く。
「これしか良い案思いつかないし」
不安げな表情を浮かべながら、信愛はスマホを取り出した。
「頼む?なにかアテがあるのか?」
宗太郎が尋ねると、信愛はスマホを握ったまま答える。
「お母さんに頼んでみるしか無い」
「お母さん?」
さくらが首を傾げる。
「人形を調べたいから、保育園に入園させる
演技してくれなんて、他の人に頼めないし」
「まぁ、確かにそうかもしれませんけど・・・」
朝陽が納得しつつも、不安そうな表情を見せる。
「怒られない?」
茜の心配に、焔垂も頷いた。
「だよな、俺もそれが心配だよ」
信愛自身、その可能性は十分に分かっていた。
「まぁ、イチかバチか怒られる覚悟で頼んでみるよ」
信愛は震える手で母・銚子に電話をかけた。
◇ ◇ ◇
その頃、白縫家では多摩雄と銚子が話をしていた。
「確か信愛は先生の家で勉強会してるんだったな?」
「ええ、そうよ」
「なら久しぶりに昼飯、外に食べにいくか?」
「あら、珍しいわね。どういう風の吹き回し?」
銚子が意外そうに尋ねると、多摩雄は軽く笑った。
「いや、別に深い意味ないよ
たまには良いかもと思っただけだよ」
「まぁ、久しぶりに食べに行こうかしら」
「よし!決まりだな」
「ならすぐに支度──」
銚子が立ち上がろうとした、その時だった。
スマホから着信音が鳴り響く。
「あら?誰からかしら?」
画面を確認した銚子は、わずかに目を見開いた。
「あら?信愛からだわ」
「信愛?何かあったのかな?」
「さぁ・・・」
突然の娘からの着信に首を傾げながら、銚子は電話に出た。
◇ ◇ ◇
「はい? もしもし?」
電話の向こうから銚子の声が聞こえ、信愛は少し緊張しながら口を開いた。
「あ、お母さん?私だけど今、電話大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。どうかしたの?」
「あのね、実はお母さんに相談というか
何というか・・頼みたい事があるの」
「何?」
信愛はどう切り出すべきか迷いながら、慎重に言葉を選んだ。
「私さ、友達と一緒に先生の家で
勉強会やるって言ってたでしょ?」
「ええ、そうね」
「実はあれ・・・嘘なんだよね」
「嘘?何よ嘘って」
銚子の声色が変わる。
「ならアンタ、今どこに居るわけ?」
「あ、いや、先生の家に居るのは
本当だよ?けど勉強会じゃなくて・・・」
「なくて?」
信愛は観念したように、これまでの経緯を説明した。
宗太郎から相談を受け、ひよりの様子が変わってしまった原因が本当に人形にあるのかを確かめるため、その人形を保育園から持ち帰って調べたいこと。
そして、そのためには保育園の関係者を装う必要があること。
話を聞き終えた銚子は、しばらく黙り込んだ。
「なるほどね・・・」
やがて事情を理解したように呟く。
「要は、その奥さんが変わってしまった原因が
本当にその人形にあるのか調べるために
持ち帰りたいから私に協力しろって事ね?」
「う、うん・・・できたら保育園の
関係者のフリをしてもらいたいの」
銚子は小さく息を吐いた。
「まぁ、そうした方が奥さんを
無駄に刺激しないでしょうしね」
「うん・・・」
「はぁ~・・まったく。詐欺師の件と言い
バスの件と言い、何でこうも次から次に
余計な事に首を突っ込むかな、アンタ達は!」
「ご、ごめんなさい・・・」
叱られた信愛は、思わず身を縮こませる。
だが、銚子も信愛の性格はよく分かっていた。
呆れながらも、人形のことが気になっているのは事実だった。
「まぁ、でも確かにその人形は気になるわね」
少し考えた末、銚子は腹を決める。
「分かったわ。住所送ってちょうだい。すぐ向かうから」
「ありがとう!」
信愛の声が一気に明るくなる。
「なら後ほど──」
「あ、待って」
「今度はなに?」
信愛は申し訳なさそうに、もう一つの頼み事を切り出した。
「出来たらさ、なんて言うか・・・
スーツみたいな感じの服装で来てくれない?」
「はぁ?スーツ?」
「いかにも『園長先生』みたいな感じの服」
一瞬の沈黙。
そして、電話の向こうから銚子の苛立った声が飛んできた。
「なによ、その大雑把な注文は!」
「ご、ごめん・・・」
「まぁ、いいわ・・分かった分かった」
呆れたように答えながらも、銚子は結局引き受けてくれた。
「要は、園長先生が挨拶に来たって思って
もらえるような正装で来てくれって話よね?」
銚子が要約すると、信愛は待ってましたと言わんばかりに声を弾ませた。
「そうそれ♬正装♬それが言いたかった♬」
「はいはい、分かった分かった
着替えたら連絡するわ」
「ありがとう」
「はい、なら後ほどねー」
◇ ◇ ◇
通話が切れる。
スマホを下ろした銚子は、深くため息をついた。
「はぁ~・・・まったく」
呆れながらも、結局は愛する娘の頼みを断れない。
そんな銚子の様子を見ていた多摩雄が、不思議そうに声をかけた。
「どうかしたのか?」
「ああ、あなたごめん。ちょっと
急用が入ったから、外食はまた今度ね」
突然の予定変更に、多摩雄は首を傾げる。
「何かあったのか?」
「信愛からちょっと呼び出されちゃったのよ」
「信愛から?」
「何やら気になる人形を見つけたんですって」
「に、人形?」
思わず聞き返す多摩雄に、銚子はそれ以上の説明を避けるように立ち上がった。
「詳しくは帰ったら話すから」
「あ、ああ・・それはいいけど・・・」
多摩雄は少し心配そうに銚子を見つめる。
「あまり無茶するなよ?君はその力で過去に──」
その言葉を遮るように、銚子はあっけらかんと笑った。
「大丈夫だってば。まったく
あなたは心配性なんだから」
「心配するさ!君は天縁──」
「大丈夫!心配ないから!」
再び言葉を遮ると、銚子は部屋へ向かおうとする。
「なら、ちょっと着替えてから行ってくるわね」
「ああ・・・気をつけてな」
「はいは~い」
軽い返事を残し、銚子はそのまま部屋へと消えていった。
一人残された多摩雄は、妻が消えた先をじっと見つめる。
「まったく・・・」
小さく呟きながらも、その表情から不安は消えない。
「危機感が足りないな・・・
信愛にばかり言ってられないぞ」
多摩雄はそう呟きながら、しばらく銚子の消えた部屋を見つめ続けていた。
コメント
1件
「はる。」だわ。今回は信愛がお母さんに助けを求める話ね。銚子さんの「呆れながらも結局は娘の頼みを断れない」ってとこ、めっちゃ親の愛を感じたわ。電話での「スーツみたいな…」「正装♬」のやりとり、めっちゃ可愛くて笑った。多摩雄が銚子さんの過去の力(天縁?)を心配してるのも気になる…次回、銚子さんがどう動くのか楽しみ!