テラーノベル
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紙の上に鉛筆をにぎって、わたしは大きく「ほし」と書いた。
でも、つぎの言葉が出てこなかった。
「ええと……“おねがいします”って、どう書くんだっけ?」
お兄ちゃんやお母さんはいつもスラスラ書いてるけど、
わたしはまだぜんぶの字を覚えてない。
ときどき、ひらがながぐるんってひっくり返っちゃうし、
似ている字はどっちがどっちかわからなくなる。
でも、どうしても伝えたいことがある。
わたしは鉛筆をぎゅっとにぎりしめて、
ちょっとずつ書いていった。
「おにいちゃんを、なおしてください」
途中で字が大きすぎたり、
“なお”が“さお”になっちゃったりしたけど、
それでも心をこめて書いた。
最後に、小さな星の絵を描いた。
きらきらしてほしいから、
えんぴつの線を何度もなぞった。
書き終わった紙を見て、
わたしは深くうなずいた。
──これで、星の女王さまに届くはず。
でも、どうやって渡せばいいんだろう?
空はあんなに高いし、
わたしの声はきっと届かない。
「……だれかに、お願いしなきゃ」
そう考えながら、窓の外に目をやると、
森の奥で、小さな光がゆらりと動いた。
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