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つぎの日の朝、わたしはまた机にすわった。昨日のお手紙を見返して、
「やっぱり、字がへたすぎるかも…」と顔をしかめた。
“おにいちゃん”の“に”が、にょろにょろ蛇みたいになってるし、
“なおして”は、どこか変な形。
これじゃあ、星の女王さまにわかってもらえないかもしれない。
「もう一回、きれいに書こう!」
そう思って新しい紙をひろげた。
でも──
“おねがいします”を書こうとしたら、
「お」の丸がはみ出して、紙の外に。
“ね”のしっぽが長すぎて、次の字とくっついてしまった。
三回書いても、ぜんぜん上手くいかない。
「うぅ〜…」
消しゴムでごしごししたら、紙がやぶけてしまった。
わたしは鉛筆を机に置いて、
ほっぺをふくらませてふて寝みたいに机に顔をのせた。
そのとき、部屋に入ってきたお兄ちゃんが言った。
「何してるの?」
「お手紙書いてるの。でも字がかけないの」
お兄ちゃんはふふっと笑った。
「下手でもいいんじゃない? ミナの気持ちは、字より強いんだから」
わたしはぱちっと顔を上げた。
──気持ちのほうが大事?
机の上のくしゃくしゃの紙を見て、
「そうだよね。女王さまはきっとわかってくれる」
胸の中がふわっと軽くなった。
わたしは昨日の字が曲がった手紙を、
大切に胸に抱きしめた。