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烈火を思わせるような酷暑の季節が過ぎ去り、まだ夏の名残りを引きずっている十月下旬の土曜日。
親友の音羽奏と、おにーさんの弟、葉山怜の挙式と披露宴が、立川の結婚式場にて執り行われる。
美花は、ラメが入ったミルクティベージュの長袖ボレロに、黒いキャミソールとワイドパンツのセットアップ、ボレロと同系色のパンプスを合わせ、髪はそのまま下ろして会場に入った。
広大な敷地には、大きな邸宅風の洋館が三棟と、独立型のチャペル。
所々に手入れの行き届いたガーデンが点在し、秋らしくなりつつある青空に、木々の深い緑と、芝生の萌黄色が鮮やかに映し出されていた。
ヨーロッパのリゾート地を思わせる結婚式場は、美花の職場から近い事もあり、徒歩で会場に向かった美花は、エントランスを通り抜けると、ロビーのソファーで、奈美と夫の豪が腰を下ろしているのが目に入る。
「あっ! 美花、おはよう! こっちこっち!」
「美花ちゃん、久しぶりだね。おはようございます」
美花に気付いた本橋夫妻が立ち上がると、手を小さく振られた。
「なみプー、ゴーちゃま、おはようございますっ」
美花が二人に歩み寄っていくと、『ゴーちゃま』と呼ばれた豪が、プッと小さく吹いた。
「ちょっとぉ! 美花、豪さんにも、ついに変な呼び方をし始めたの?」
奈美が、アーモンドアイの目尻を若干吊り上げ、頬を膨らませている。
「まぁ奈美、怒んなって。俺をそう呼ぶって事は、恐らく美花ちゃんにとって、俺に対して少しは親しみがあるって事だろ。あ、でも美花ちゃん。俺には奈美っていう愛妻がいるから、俺に惚れても無駄だぞ?」
「大丈夫ですよぉ。ゴーちゃまがイケメンで紳士で優しい男性なのは私も認めるけど、私の好きな男性のタイプと違いますしっ」
美花がいたずらっ子のように、ニヤリと唇を緩める。
「お? 美花ちゃん、なかなか言うねぇ〜」
豪も、片側の口角を微かに上げて笑みを返す。
「お二方も、変わらずラブラブですねっ」
サテン生地にパステルブルーのミモレ丈ワンピースを着た奈美と、ダークグレーのフォーマルスーツに、リングが付いたパステルブルーのアスコットタイを合わせている豪を見て、美花は、ポイントで色を揃えている所に、夫婦仲が円満なのを感じる。
「お、もう少しで挙式の時間か? チャペルに移動しようか」
豪が腕時計を見ながら呟くと、美花は、本橋夫婦と一緒に教会へ向かった。