僕はさすがに心がざわざわしだして、何も起きていなければいいのに。おじいちゃんの言ったように、みんなが無事でありますようにと願っていた。
僕の後ろにいる藤堂君は顔を俯かせていたが、顔を上げて、
「裏の畑で遊んじゃいけないことと関係あるのかな?」
藤堂君と篠原君には、そこで人形の手足が埋めてあったことは聞かされていないのだろう。ただ単に、遊んではいけないと言われたか、もうスイカを割るなとでも言われたのだろう。
だから、僕はとても優しい嘘を吐いた。
「きっと、裏の畑でスイカを割りすぎて、困ったことにカラスが増えたんじゃないかな」
裏の畑で割ったスイカたちは、近所の人たちが畑仕事がてらきちんと埋めていた。カラスがついばむことはあるかも知れないけれど、それなら割らなくても同じことだと思う。
「俺、知ってる。あそこでカカシの手足がたくさんでたんだってさ。母ちゃんと父ちゃんが話ている時に、こっそり聞いたんだ」
篠原君は強がりな性格だった。
「へえ」
僕は事実が曲がっていることを良しとした。
藤堂君はそれでも気味が悪いと思っているようだ。
「あんまり。スイカを割りすぎてカカシに怒られちゃったのかな?」
藤堂君は身震いした。
羽良野先生が体育館への入り口付近で、僕を心配そうな顔をして見つめていたが、目が合うと瞬時に優しく微笑んだ。僕はそのせいでざわざわした心を抑えて、嫌でも何かに備えて身構えた。
古い木の香りが充満する体育館へと入ると、羽良野先生はみんなにクラス順に整列したままの状態で、校長先生の話が始まるまで、僕たちに体育座りをしているようにと言った。
他のクラスの子供たちも不穏な空気を察しているようだ。
体育館のステージの中央に設置された教壇にいる校長先生が羽良野先生と何やら話している。別のクラスの子供たちも体育館へと入ってきた。みんなが列を組んで体育座りをしていると、僕はその中に亜由美はいるかと、探したけれど、見つからなかった。
「おっほん! みんな静かにしていてくれ。これから、全校生徒全員は保護者の方々の迎えがくるまでこの場で待機となった。保護者の方々がくるまで、みんな慌てたり騒いだりしないように」
校長先生の言葉で、みんなが騒ぎ出した。
「何があったのかな?」
藤堂君は少し震える声を発している。
「裏の畑のことじゃないよね」
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