テラーノベル
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渋谷駅周辺まで、のんびりと歩いている途中で、優子は最大手の携帯電話会社のショップを見つけた。
以前使っていたスマートフォンは、果物のアイコンで有名な人気機種。
彼女は、最新型の人気機種を選び、カラーはブルーを選んだ。
諸々の手続きや説明を受け、ショップを出たのは、およそ一時間後。
その足で、大手家電量販店に向かい、スマホケースと液晶保護ガラス、充電器を購入。
液晶保護ガラスを貼り付けてくれるサービスを利用し、ケースもさっそく装着、これでスマートフォンが使える状態になった。
腕時計を見ると十七時前、拓人と落ち合う時間まで、まだ一時間半以上ある。
何をして時間を潰そうか、優子は考えを巡らせながら歩いていると、Hearty Beautyの旗艦店が見えてきた。
(懐かしいな。在職中、ここの店舗にも、何度か手伝いに行ったっけ。今さらだけど、本社は……どうなっているんだろう?)
店の前を素通りしつつ、優子は思い立ち、かつての職場へ向かってみる事にした。
渋谷駅東口から、徒歩三分ほどの場所にある、七階建ての自社ビル。
在職中と変わらない佇まいに、優子は、おずおずと歩いていくと、ちょうど退社時間と重なっているせいか、正面玄関から人が出てくるのが見える。
そこへ、彼女の後ろから、黒塗りのハイヤーと思しき車が走り抜け、ハザードランプを点滅させながら、正面玄関の前で止まった。
優子は焦って、ビルの細い路地に隠れると、様子を伺う。
長い髪を、きっちり後ろに結んだ女性が、車から降り、続いて出てきたのは、ダークネイビーのスーツに身を包んだ、松山廉だった。
仕事中というのもあり、少し濃い目の顔立ちは、キリッと精悍な顔つき。
先に車を降りた秘書らしき女性に声を掛けた後、彼は、正面玄関へ入っていく。
元上司の背中を、優子は、遠目からぼんやり見つめていると、建物に入る直前、いきなり廉が振り返った。
何かを探すように見回しているようにも見え、退社していく社員が、すれ違いながら彼に挨拶をしている。
廉の様子を伺った女性が声を掛けると、彼は短く返事をしたのか、正面玄関の中へ消えていった。
(ヤバい…………バレちゃったかな。っていうか……私、かなり怪しい女じゃん……)
優子は、踵を返すと、小走りで渋谷駅に戻っていった。
かつての職場に行くのは、これで最後。
廉も元気そうだったし、彼女は少しホッとする。
(憧れのブランド名に、大きく深い傷を付けた私が、もう本社に行ってはダメ……)
彼女は、人の流れに乗りながら、渋谷の雑踏の中に消えていった。
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