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ドン。
ドン。
ドン。
有人は祖父の車から運び込んだ古文書を、自分の部屋へと積み上げた。
思っていた以上の量だった。
「これ全部読むのか……」
思わず苦笑いする。
床には大小さまざまな古文書が並んでいる。
革張りのもの。
木の表紙のもの。
角が擦り切れ、今にも崩れそうなものまであった。
有人は一冊手に取る。
「この中のどれかが、あの本の続きだとは思うんだけどなぁ……」
頭を抱える。
文字そのものは読めない。
なのに意味だけは頭へ流れ込んでくる。
不思議な感覚だった。
「どれだ……?」
表紙をめくる。
最初のページ。
『戦争』
違う。
次。
『崩壊』
また違う。
さらに別の本。
『魔人』
『裏切り』
『聖戦』
国の名前らしき単語も見える。
だが。
「……グラディウスが出てこない。」
パラパラとページをめくる。
違う。
また次。
違う。
次の本。
また違う。
ページをめくる。
閉じる。
別の本を開く。
めくる。
閉じる。
それを何度繰り返しただろう。
夕日が差し込んでいた部屋は、いつの間にか橙色へと染まっていた。
「はぁ……」
有人はベッドへ倒れ込む。
天井を見上げながら息を吐いた。
「結局、分かったのは少しだけか……」
ノートを開く。
今まで整理した内容が書き込まれている。
――白銀騎士団が所属する王国。
その周辺で大規模な戦争が起こる。
相手国は『デュラハン』。
“砂の国”として知られる王国。
激しい争いの末、両国は和平条約を締結。
敵同士だった二つの国は、やがて同盟国となる。
だが。
それから年月が経ち。
王国の首都。
王都は崩壊する。
しかし、その理由だけはどの古文書にも記されていなかった。
「……まだ全然足りないな」
部屋には、まだ山のように古文書が積まれている。
いつか。
一冊一冊が繋がり。
散らばった欠片が組み合わさり。
本当の歴史が完成する日が来るのだろう。
だが。
有人の頭から離れない人物がいた。
「……魔王。」
アルド。
セレスティア。
この物語の中心にいる二人。
そして、ふと一つの疑問が浮かぶ。
「そもそも……」
「この本を書いた人って、誰なんだ?」
戦争を知っている。
世界情勢も知っている。
白銀騎士団の内部まで知っている。
それだけではない。
魔王アルドの正体。
女神セレスティアの存在。
普通なら誰も知るはずのない秘密まで記されている。
それなのに。
この古文書は、ずっと昔から祖父母の家の物置に眠っていた。
「一体……何者なんだ。」
その答えは、まだ見えない。
コンコン。
部屋の扉が軽く叩かれた。
「有人ー!」
母の声が聞こえる。
「ご飯できたよー!」
「あっ、もうそんな時間か。」
有人はノートを閉じた。
古文書を丁寧に積み直し、机の上へ置く。
「……また今度考えよう。」
立ち上がる。
部屋の電気を消し、扉を開ける。
誰も知らない歴史。
誰も知らない魔王。
そして。
まだ誰も読んでいない古文書。
その続きが、静かに有人を待っていた。
コメント
1件
第26話「ピースの欠片」、読んだわー。有人が古文書を必死に漁って、少しずつ世界のピースを集めてる感じがすごく丁寧に描かれてて良かった。特に「グラディウスが出てこない」ってところで焦ってるのが伝わってきて、こっちも「どこにあるんだよ!」って気持ちになった。最後の「本を書いた人って誰?」って疑問、本当に気になるわ。誰も知らない歴史と魔王の謎、じわじわ解像度上がってくのが最高。続き楽しみにしてる🔥