しばらくして宅配ピザが届き、四人で賑やかに会話しながらシェアして食べている時。
「それしても葉山さんも、相当なイケメンですよね? 俳優さんみたい」
奈美の言った言葉に、豪がピクリと片眉を上げて即座に反応した。
「なぁ奈美。俺の前で葉山に対してそんな事言うなよ。後でたっぷりとお仕置きするぞ?」
そんな豪の言葉に、怜も速攻で反応する。
「お仕置きって……どんなお仕置きだよ。お前の事だから、エロいお仕置きでもするんだろ?」
「当たり前だろ」
「やだ豪さん…………もう恥ずかしいからっ!」
夜も深まり始め、男性陣のトークも若干エロい方向になってきて、豪と怜の会話に女性陣二人が揃って頬を桜色に染めた。
奏はわざとらしく、んんっと軽く咳払いをする。
「奈美もご馳走様で〜す……」
恥ずかしいと言ってる割に喜んでいる親友を見やり、敢えて白けたように奏が突っ込んだ。
「しかし豪の奥さんに対する溺愛っぷり、マジでハンパないな」
「お前も女性を好きになったら、これでもか! ってくらいに一途だろ?」
「ああ、そうだな……。それは昔から変わらない……」
豪の問いに、どこか切なさを含ませて答えた怜。
視線を伏せるように、ティーカップを見つめながら言った彼の言葉に、奏の胸の奥が抓られたように、キュンと鈍い痛みが走った。
(この胸の奥がキュッと締め付けられる感覚って何? ……恋煩い?)
奏は隣にいる怜を横目で見ると、憂いを帯びた彼の表情に、男の色香を感じてしまった。
奈美の夫、豪も男の色気があると思うが、それ以上に、怜の放つ艶っぽい雰囲気に、奏はむせ返りそうになってしまう。
(ヤバい……葉山さんをもっと好きになってどハマりしたら…………)
奏は、隣から放たれる妖艶なオーラから耐えるように、拳を作り、ギュッと握った。
昼から訪れていた奈美の自宅に、奏は結局、二十一時過ぎまでお邪魔していた。
「奈美。私、そろそろ帰るね。旦那さん、遅くまでお邪魔しました」
奏は、本橋夫妻に一礼すると玄関へ向かい、奈美は目を細めて彼女に答える。
「奏、また遊びに来てね。今度会った時は、うちのピアノで連弾しようね!」
「音羽さん、是非また遊びに来て下さい。そうだ、怜。お前、彼女を送ってやれよ」
奏に挨拶した後、怜に向けて企むようにニヤリと口角を上げた。
「ああ、そうするよ。豪、奥さん、遅くまでお邪魔しました」
「おう、また遊びに来いよ」
「葉山さん、是非また遊びに来て下さいね」
怜と奏が軽く会釈し、手をヒラヒラと振って玄関を後にし、ドアがバタンと閉まる。
「さてあの二人…………どうなるかな……」
豪がポツリと呟くと、奈美は夫を見上げながら答える。
「どうなるか楽しみだね」
「それはそうと、葉山にイケメンって言った奈美に、これからお仕置きしないとならないな?」
「もうやだ豪さん……」
豪は奈美の髪にそっと触れ、奈美は顔を赤らめて羞恥心を浮かばせている。
二人は、そっと手を繋いでリビングに戻っていった。