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「下剤を飲んでの腹痛があんなキツイもんだなんて、知らんかった……」
琉成のベッドの上に寝っ転がり、げっそりとした顔をしながら言った。
腰にバスタオルを一枚巻いただけの無防備な姿で、コレでは上げ膳状態だと自覚しながらも、何もする気が起きない。体力はもうゼロだ。下剤なんか人生の中で初めて飲まされたが、あんな覿面に効くものなのかと驚くばかりだ。
「もういい、早く俺を殺せ……」
常に空腹状態だって事以外は健康体だった俺には未経験の痛みだったせいで、こうやって話すのすらしんどい。『便秘体質の奴らはあんなもん飲んで、しょっちゅうこんな思してんのか?』と考えると、尊敬の念すら抱くレベルだ。
「あはは!何それ、大袈裟だなぁ」
あんなもんを飲ませた本人はいつも通りのニコニコ顔で腹が立つが、腕どころか指一本も動かない。
「大袈裟だろうが何だろうが、もうどうでもいい……。何か意図があってやってんだろ?ならもう好きにしろよ……」
常に何も無いに近いだろう腹ん中を下剤なんかで更に無理矢理空っぽにさせられて、しかもその後連れ込まれた風呂場では尻の中までご丁寧に洗浄されたせいでもう、何もかもどうでもよくなってきた。
「内臓食い破って、血肉を飲み欲して、もう全てお前のもんにすりゃいいだろ?なんたって誕生日なんだからな」
「何それ、最高なんだけど」
自分のベッドの端っこに座り、腹を抱えて笑っている琉成も半裸状態で、腰にはバスタオル一枚だ。清一程では無いが、同年代の中では比較的しっかりと筋肉があって高身長な図体では、同じサイズのバスタオルを巻いているはずなのに小さく見える。
「……お前ってどんな時でも笑ってんのな」
「そりゃね、心底楽しんでるから。圭吾と居るといつだって楽しいんだもん」
「……(あー、くそっ)」
懐っこい笑顔でサラッと言われると、簡単に油断してしまう自分を刺したくなってきた。
「さて、と」と言って、琉成が腰を上げる。そしてベッドの上にあがってくると、二人分の体重のせいで少し軋むのも気にせず、大の字になっている俺の脚に跨って座った。
「……どけろって、重いから」
視線だけを琉成の方へ向けると見事に割れた腹筋が目に入り、『……清一といいコイツといい、んとにズルイよなぁ』と心の中だけで溜め息を吐いた。
「やーだ。まだギリギリ誕生日のうちに、プレゼントもらいたいからね」
「プレゼント?……あぁそっか、何が欲しいんだ?俺明日休みだし、そっちも空いてるなら何か買いにでも行くか?だけど高いもんは無理だかんな」
「大丈夫、お金はかからないから」
「んじゃ、料理作れとか?」
「んんーっ。この状況でよくそんな発想になれるねぇ。ホント圭吾は可愛いなぁ」
体を倒し、琉成が俺の上に覆い被さってくる。腕を立てて体を支えてくれているので今は重くは無いが、脚には異物が当たっている感触があり、奴の呼吸はひどく雑で笑い顔なのに瞳の奥には恍惚とした色がある。
「……わかってて言ってんだけどな、流石に」
「だよねー知ってた。現実逃避ってやつだ」
「したくもなんだろ……何で俺は、誕生日だからって理由だけでダチに襲われてんだよ……ったく」
琉成から視線を逸らし、ボソッと独り言みたいに呟いた。
「ンンンーッ⁉︎——ダチ?」
表情が一転し、琉成の顔色がサッと青いものに変わっていく。
「……どうした?急に」
「待って!俺の認識に間違いが無いのなら、『ダチ』って友達だよね?」
「ソレ以外にあんのか?」
「……まさか、充と清一達と俺って、同列だったりするの?」
「……ちょっと上くらい?」
そう言った途端、琉成の体が崩れ落ち、俺の体の上に完全に覆い被さった状態になった。
「重っ!ちょ!」
何キロあんだ!太ってないだけ随分マシなんだろうが、それでも成人間近な男の体は重いったらありゃしなかった。
「皆の前で、『友達』言われるのは全然気にしてなかったけど……照れてるのか?くらいに思ってたけど……」
「……照れ?何の話だ?」
「彼氏相手に、二人だけの時にまで『ダチ』は無いでしょ!『ダチ』は!」
バンバンと布団を叩き、俺の頭へ駄々っ子みたいにしながら顔を擦り付けてくる。
「彼氏……」
(誰が?誰の?)
疑問符しか頭に浮かばず、キョトン顔で言った。
「それとも、もしかして俺って彼女だった?」
パッと顔を上げたと思ったら、琉成がアホな事を叫んだ。
「いや、絶対に違うだろ。立派なチンコがあんだろうが」と言って脚を動かす。そのせいでゴリッと勃起したモノが擦れたからか、「んぁっ」と甘い声を出して琉成が体を震わせた。
「立派だなんてそんな……褒めたって、ココからは精液くらいしか出せないよ?」
「煩え、この変態。オッサンみたいな事言うなや」
「だってぇ、立派って褒めてもらえたらやっぱ嬉しいやん?」
ニコーッと笑っているので、もう機嫌が回復した様だ。
「んじゃ今日は、この立派なチンコで圭吾に彼氏らしい事してあげるねー」
やばっ。機嫌治らんくてよかったわ、またアホな事を言い出しやがった。
「待て!スティッ!今日はもうヤッたろうがっ」
「アレは最高だったね。またしよう!」
「やるわけねぇだろ!」
「えー圭吾だってすんげぇ興奮してたじゃん。二回出してさ、しかもさココ……触ってすらいなかったのにだよ?」
体を少し浮かし、琉成が俺の股間へ手の伸ばして人の陰茎に触れる。色めいた雰囲気でもないせいで無反応だったモノを愛おしげな顔をしながら優しく撫でられ、ソレは容易くタオルを押し上げ始めた。
「あれぇ?この手は『ダチ』のもんなのに、勃っちゃうんだ」
根に持っているみたいだが、だからって『彼氏』とは一体。確かに、俺達がやってる事は親友の一線を軽く超えている事をわかってはいたが、だからって『彼氏』は飛躍し過ぎじゃないか?
「え?何、お前、もしかして俺の事好きなの?」
そう言った途端、また琉成の体が崩れて俺の体の上に落ちてきた。
「ぐはっ!」
筋肉も体力も無いってのに二度も喰らった衝撃が体に響く。
「……ソレ意外に、毎日喰べる理由なんてある?」
悲しげな声で言われても、『好き』だなんて初耳だ。
いっつも聞く言葉は『喰べたい』やら『美味しそう』やらだっていうのに、そこからどうやって『そうか、コイツは俺が好きで、俺達って付き合ってんだな』って思える要素は何処にあるってんだ!
「だけど、『好き』って言われてないぞ?んなんでわかるわけ無いだろ」
「言ったよー!初めて喰べた日に、ちゃんと言ったぁ」
また駄々っ子みたいに体を揺らし、頭を擦り付けてくる。ガキくさい行動なのに、不思議と可愛く感じられるのは、犬要素のせいだろうか。
「トイレで言われた戯言を、愛の告白だと思う馬鹿が何処に居るってんだ!」
「流したんだね⁉︎」
「トイレだったからな!——って、馬鹿かお前はっ。くだらねぇ事言わせるな!つまらな過ぎて顔から火が出るわ!」
「もういいだろ?退けって!」と言って、琉成の体に蹴りを入れる。だけど「やだー!」と言われ、唇をぷにっと指でつつかれた。