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第十五章 二つの目覚め
第十二話 重なる想い 前編
「ダイチッ!!」
抱きとめた身体が、苦しげに大きく上下している。
荒い呼吸がジントの首筋に掛かった。
ジントは震える手で、背中へ突き刺さった矢を掴む。
黒く濁った矢先。
嫌な臭い。
間違いない。
毒だ……!
「っ………!!」
ジントは歯を食いしばり、矢を引き抜いた。
「ぅぐっ………!」
ダイチの身体がビクリと跳ねる。
傷口から血が溢れた。
「ダイチ!!しっかりして!!」
その時
「ジンちゃんっ!!危ないっ!!」
シュンタが叫ぶ。
——ビュンッ!!
再び、風を切って飛んでくる矢。
ジントは反射的に身を屈めた。
ダイチを抱きかかえたまま、地面へ身体を伏せる。
——ドスッ。
矢は頭上すれすれを通り過ぎ、背後の木へ突き刺さった。
「……っ!」
ジントの腕に力がこもる。
「ジント!!ダイチ!!」
ハヤトの声が響いた。
振り返ると、ハヤトが二人の白装束を相手に剣を交えていた。
「はぁっ!!」
黄金の光を纏った大剣が、振り下ろされた剣を受け止める。
激しい衝撃。
足元の土が大きく抉れる。
「くっ……!」
ハヤトは歯を食いしばりながら、そのまま剣を押し返す。
「……よそ見している暇はありませんよ」
白装束の男は、赤い目を細め、怪しげに笑みを浮かべる。
ハヤトは眉を顰めた。
その剣先が喉元を狙う。
咄嗟に体を捻り、その男を脚で蹴り飛ばす。
するともう一人が横から迫る。
「——っ!」
頬を風の刃が掠め、髪が数本、宙へ舞った。
ハヤトは構え直す暇もなく、大剣を横薙ぎに振るう。
白装束の男が後方へ跳び退いた。
息を切らしながら、ハヤトは再び剣を構える。
そのすぐ横では。
「はぁっ!!」
ジュウタロウが、三人の白装束を相手に細剣を振るっていた。
一人の杖を弾き、そのまま踏み込む。
「……そこだ」
柄で相手の腕を打ち、体勢を崩したところへ足を払う。
男が地面へ倒れる。
だが。
「っ!」
背後から別の男が放った火球が、
ジントとダイチへ迫る。
ジュウタロウは振り返る。
その瞬間細剣が銀色に輝いた。
——ザンッ!!
放たれた氷の斬撃が、火球を真っ二つに切り裂く。
爆ぜた炎が夜の森へ散った。
「……ジントには、指一本触れさせない」
静かな声。
その表情には、普段の冷静さが残っていた。
けれどその呼吸は荒く、額には汗が滲んでいた。
そして
「くっ……!」
シュンタの声。
リュートを激しく掻き鳴らしながら、必死に白装束達の動きを乱している。
「こっちや!!」
鋭い旋律が響く。
白装束の一人が動きを止めた。
その隙を逃さず、シュンタが炎を放つ。
轟音と共に、男が後方へ吹き飛ばされる。
だがその直後、別の男がシュンタへ迫る。
「——っ!?」
シュンタは咄嗟に身を捻った。
杖が肩を掠める。
「ぐっ……!」
痛みに顔を歪めながらも、リュートを構え直し、再び弦を掻き鳴らす。
「まだや……!」
炎が夜の森を照らす。
剣閃が走る。
魔法が飛び交う。
怒号と足音が重なる。
それでも三人は一歩も退かなかった。
ただ、ジントとダイチを守るために。
その光景を、ジントはダイチを抱きかかえたまま見つめていた。
「……みんな……」
声が震える。
そしてダイチ。
呼吸が乱れている。
みるみる顔から血の気が引いていく。
ジントは慌てて傷口へ手を当てた。
だが。
「っ………!」
感情が暴れて、魔力が上手くまとまらない。
その間にも、ダイチの呼吸がどんどん浅くなっていく。
「ダイチ……!!ダイチっ!!」
必死に名前を呼ぶ。
冷たくなっていく手を、強く握り締める。
「今、治すから……!!」
もう一度傷口へ手を当てる。
淡い月の光が滲む。
けれど。
手が震える。
呼吸が乱れる。
集中出来ない。
ーー怖い。怖い。怖い……!
頭の中が真っ白になる。
助けなきゃ。
治さなきゃ。
早く、早く……!
なのに、大切な人を失う恐怖がジントの心を押し潰していく。
その時。
ふと顔を上げたジントの目に入ったのは、森の奥、再び弓を構え狙いを定める白装束の姿。
ジントは息を呑む。
目を見開いたまま、動けない。
すると突然、ふわっと胸に温かいものを感じる。
以前シュンタに貰った結界石が、懐の中で淡く光を放っていた。
ジントは震える手でそれを取り出し、強く握り締める。
「……お願い……、守って……!!」
その瞬間、淡い月光のような光が広がった。
二人を包むように、静かな結界が展開される。
ーーバチッ!!
飛んできた矢が弾かれた。
木の間をすり抜けて迫る火球も、結界に当たってふっと消える。
やがて。
外から響く戦いの音。
魔法の光。
叫び声。
全てが遠ざかっていく。
誰にも邪魔されない、二人だけの空間が生まれた。
それでもダイチの身体からは、徐々に力が抜けていく。
歯を食いしばり、ジントが傷口に手を当てた、その時だった。
「……ジ…ント……」
弱々しい声。
ジントが顔を上げる。
「ダイチ……?」
ダイチはゆっくりと、身体を起こそうとした。
「ダメ!!動かないで!!」
ジントが叫ぶ。
けれど、ダイチは止まらない。
震える腕で身体を支え。
苦しそうに息をしながら。
必死に、ジントへ向き直った。
荒い呼吸。
血の気の引いた顔。
震える身体。
それでも真っ直ぐ、ジントを見つめる。
青い瞳が、優しく細められた。
「……好きや……ジント……」
ジントの瞳が大きく見開かれる。
「ずっと……好きやった……」
言葉を紡ぐたび、ダイチの呼吸が苦しそうに揺れる。
それでも、止めない。
「お前が……何でも、構わへん……」
震える手が、ジントへ伸びる。
「……好きなんや……」
ジントの瞳から、涙が溢れ落ちた。
止まらない。
ぽろぽろと、次々に零れていく。
ダイチは震える指で、その涙をそっと拭った。
「俺……、言ったやろ……」
掠れた声。
「……守るっ…、て……」
苦しそうに息を吸う。
それでも、微笑もうとする。
「最後、まで……お前のこと……」
「……守らせて、くれ……っ」
「……ダイチ……!!」
ジントがダイチを強く抱き締めた。
「ダイチ……ダイチ……っ!!」
涙で視界が滲む。
その瞬間。
走馬灯のように記憶が溢れ出した。
幼い頃。
森で出会った日。
秘密基地。
手を引かれた帰り道。
何度も名前を呼んでくれた声。
いつだって、ダイチはそこにいた。
当たり前みたいに。
隣に。
大切な、かけがえのない幼馴染。
いつしか、失うことが怖くなった。
自分が消えてしまうと知ってから、
余計に。
だからこそ、傍にいるのが辛かった。
なのに、ダイチはずっと真っ直ぐだった。
守ると言ってくれた。
離れないと言ってくれた。
その言葉を。
今まで受け取れなかったその想いを。
ーー俺は、今、やっと全部受け取るから。
ジントは涙でぐしゃぐしゃになった顔のまま、必死に声を絞り出した。
「……ダイチ………俺も好き……」
声が震える。
「ダイチのこと……大好き………っ」
ダイチの瞳が揺れる。
嬉しそうに。
安心したように。
けれど。
もう何も言葉には出来なかった。
ジントはさらに強く抱き締める。
「だから……死なないで……」
泣きながら叫ぶ。
「ダイチのいない世界なんて……
意味がない………っっ!!」
その瞬間、結界石の光が静かに揺らめいた。
けれど守れるのは外から来るものだけ。
時間は止められない。
毒が巡ることも。
命が薄れていくことも。
そして次の瞬間。
ふっと、ダイチの身体から力が抜けた。
そしてジントの腕の中で、その鼓動が、静かに止まった。
𝕔𝕠𝕔𝕠
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#み!るきーず
ぷりんねこ
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comi
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はる☻
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コメント
10件
涙でぐちゃぐちゃになってらたらすごい事態になっててびっくりしました😭 まさかシュンタが買ってきた謎の石がここで活躍するとは……! 次回も気になって仕方がないです!
え、ちょ、、、え?? やっとお互い気持ちが伝わったのに…… 続きが気になってやばい😨😨続き気長にお待ちしています!
えぇ!?最初号泣してたのに、最後で涙が止まってしまいましたよ? ちょっとこれは…由々しき事態ですよね!?ねぇ!?