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異変に気づいたのは数日後。
服を貸して、お風呂に入れて、ご飯をあげて。
人間みたいに懐く変な子だな、とは思ってたけど。
玄関で「行ってきます」って言った瞬間。
「やだ」
そう言った。
はっきり、言葉で。
「……え?」
見たら、女の子が立ってた。
猫だったはずの子。
ぶかぶかの服着て、涙目で。
私の袖を掴んでる。
正直。
ちょっとだけ、怖かった。
理解できないものは、普通怖い。
でも。
それより先に思ったのが。——ああ、この子、ずっと独りだったんだな。
ってことだった。
あんな顔、知ってる。
昔の自分と同じ顔。
誰かいなくなるたびに、世界が終わるみたいな顔。
「……そっか」
気づいたら、頭撫でてた。
「大丈夫。どこにも行かない」
不思議と、すんなり受け入れてた。
人になろうが猫になろうが、どうでもいい。
この子が、この子なのは変わらないから。
「もか」
そう名前を呼んだら。
世界が終わったみたいな顔してた子が、急に笑った。
……だめだ。
って思った。
こんなの。
手放せるわけない。この笑顔見ちゃったら、もう無理だ。
たぶん私は。
拾ったんじゃなくて。
拾われたんだと思う。
この子に。
私の、静かだった生活ごと。
全部、連れていかれた。
「……しょうがないな」
小さな体を抱き上げる。
軽い。びっくりするくらい軽い。
だから決めた。
せめて。
この子が重さを感じるくらい。
ちゃんと、生きさせてあげよう。
もう二度と。
「助けて」って顔、させないように。
それが、私の役目。
家族って、たぶん、そういうことだ。
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