テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
連休明け、優子は朝一番に、立川駅前にある立川産婦人科を訪れていた。
前日、拓人に避妊していない状態で中に放たれ、緊急避妊薬を処方してもらうためである。
予約しないで来院し、彼女が診察を受けたのは正午近くだった。
女医の院長は、優子を淡々と診察をした後、アフターピルを処方する。
副作用があるかもしれない、と医師に言われ、彼女の腹の底が、鉛を落とされたようにズシリと重くなった。
(副作用か……。それよりも、近くに産婦人科があって、本当に助かったよ……)
産婦人科を後にした優子は、深い安堵のため息をつく。
拓人に黙ったまま、外出した彼女は、まだホテルへ戻る気がしない。
優子は、近くのカフェに立ち寄り、昼食を摂る事にした。
彼女が滞在しているホテルから、ほど近いカフェは、人気があるらしく、ランチタイムも満席だった。
優子は、カフェの一番奥にあるボックス席に案内され、窓に映るファーレ立川周辺を眺めている。
(ここのカフェ…………豪と話し合いをしに来たっけ……)
二年ほど前の記憶を手繰り寄せながら回想していると、カフェの店員が注文を取りにきた。
和風パスタのランチセットをオーダーした優子は、再び、視線を窓越しの夏空へ向ける。
あのホテルに滞在できるのも、あと一週間。
彼女の手元にある金は、五百万ほどになった。
刑務所を出所してから二ヶ月間、万引きしようとしていた所で拓人に拾われ、その日のうちに身体の関係を持ち、売女として、元上司の松山廉とも関係を結んだ日々。
同伴した際、廉から『ずっと好きだった』と言われたのは、彼女にとって嬉しかった事。
けれど、元恋人だった本橋豪を忘れるために、廉の気持ちを利用してしまった。
誰かに愛されたい、愛して欲しい、と思いつつ、手段は身体の関係を持つ事になっている。
『あんたの言う愛ってヤツは……セックスなんだろ? ヤれれば……男なら…………誰でもいいんだろ?』
昨日の朝、拓人に指摘された事だけど、思い返しても、耳が痛い。
しかも、男に、立川から去ると言われている。
(身の振り方を考えろって……いきなり言われても、自分が、どうしたいのかも、よく分からない……)
ぼんやりと考えていると、カフェの店員が料理をテーブルに並べられた音で、優子は我に返った。