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第37.5話:買い物とカナルーン
昼下がりのスーパー。
水色のパーカーに短パン姿のまひろは、カゴを片手にレジ前の端末へ向かった。
隣にはラベンダー色のブラウスにベージュのスカート、イヤリングをつけたミウが並んでいる。
端末画面には淡い緑色のインターフェース。
カナルーン入力の光が流れ、まひろは声に出しながら指で打ち込んだ。
「スーパー」
↓
「ニンジン フタツ」
↓
「トマト ヒトツ」
↓
「ミライリンゴ ヒトツ」
↓
カイケイ(商品確定)
↓
ケッサイ(ドットコード決済)
【レジの画面にドットコードが浮かび上がり、スマホをかざして決済が完了するとピッと音がなった。 】
↓
オワリ(買い物終了)
商品がカナルーン入力でカゴに登録され、レジ係も不要だった。
「ぼく、入力するだけでお買い物が終わっちゃうの、まだ不思議な感じするなぁ」
まひろが無垢な瞳で呟くと、ミウはふんわり微笑んで答えた。
「え〜♡ これが“カナルーン入力”なんだよ。
みんなで同じことばを使うから、安心できるの。だからみんな“カタシン”って呼んでるんだよねぇ」
スーパーのスピーカーからは柔らかいアナウンスが流れる。
「協賛野菜と協賛果物で、今日も安心の食卓を」
市民は当たり前のようにカナルーン入力を使い、
その文化を「カタシン=安心のことば」と呼び、誇らしげに受け入れていた。
だが天井に取り付けられた小型カメラは、“未来防犯法”に基づき、
すべての入力をリアルタイムで監視していた。