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「もしかして、その手紙ってブライトから?」
私がそう尋ねれば、リュシオルは黙って立てに頷いた。
私は彼女の反応を見て、何か引っかかりつつも、ブライトから一体何のようだろうと、受け取った手紙の封を切って開けてみた。攻略キャラからの手紙、あの腹黒の双子や、アルベドは聖女殿から離れた所に住んでいるから来て欲しいって手紙も度々来るし、アルベドに関しては会えないかとかも来るわけだけど、思えば、ブライトが何処にすんでいるのかとかは全く知らなかった。攻略キャラからの手紙、もしイベント事だったらどうしようとお思いつつ、エトワールのストーリーでは、今までに大きなイベントと言えば星流祭ぐらいだったため、今回はイベントではないだろうと私はふんだ。もしそうだったとしても、どう動けば正解だとか分かるはずもないからなるようになれである。
私は、手紙の内容を読んでいく。
そこには、簡潔に、会いたいから来て下さいという文が書かれていた。家に招待したいという内容。
私は、それを読んで首を傾げることしか出来なかった。
「ねえ、リュシオル」
「エトワール様?何でしょうか」
トワイライトも前にいるからか、他の原因があるのか分からないが、リュシオルはかしこまったようにそう言うと、私の顔色を伺ってきた。
彼女も私が何を言いたいか察しているみたいで、さすがだなあと思いつつ私は手紙を彼女に返した。
「ブライトってさ、忙しいんだよね」
「はい、ブリリアント卿は、魔道騎士団の団長である侯爵様の不在中、侯爵代理として領地経営をしております。その仕事量は多く、いずれ騎士団の団長も継ぐことになりますし、災厄の対策やらも重なって……」
「そう、なんだよね。なのに、私に会いたいって言ってるんだ」
そうね。とリュシオルは目を細めた。
コソッと耳打ちしてくれた話では、ブライトはゲームの中でも忙しい方で、後々分かったみたいだがあまり身体が丈夫じゃないそうだ。まあ、見る限り白い肌に、優しそうな疲れたような目をしているわけで。ブラコンという設定は、彼と実際会ってから大分変わったけれど、儚いって印象を受ける。それに、この国の魔道騎士団の団長を継ぐこと、団長である父親を持っていることからかなりプレッシャーと仕事を任されているのだろう。彼もまた期待されていて、期待に応えるために寝る間も惜しんで。そこまで考えて矢っ張り腑に落ちないというか、可笑しいと私は首を傾げる。
勿論、他の攻略キャラの事を詳しく知っているわけじゃないし、頻繁に会うわけでもないから、把握しきれていないところはあるだろうけど、ブライトは攻略キャラの中で一番謎めいた人物だった。何を考えているのか分からないこともそうだけど、神殿にふらっと現われる程度で、いつも何処にいるかとか何をしているかとか一切わからないのだ。
「本当に、ブライトからの手紙なのかな……?」
と、私が聞けば、リュシオルは彼でない可能性はないと強く言った。
曰く、家紋の刻まれた印鑑や、スタンプと言ったものは他の人が使えない、持てないようになっているらしいのだ。だから、悪用しようにも出来ない。確かに、そう言われると、リュシオルが持ってきた手紙の封蝋に刻まれていた花、フリージアはブライトの所の家紋になるだろうし、彼があの花を大切にしていたことから彼の家紋はフリージアと言うことになるだろう。
その手紙は、ブライトからのもので間違いないらしい。
「まあ、会いたいって珍しいなっては思うけどいってきた分けだから私は、会いに行こうと思うよ」
そう、リュシオルに私は意思を伝えると彼女はまた困ったようなかおをした。
まだ、何か困ったことがあるのかと聞けば、彼女は首を横に振るばかりだった。
「いやな胸騒ぎがするの」
「嫌な胸騒ぎ?」
「そう」
リュシオルの言葉は要領を得ず、私は首を傾げる。
そんな私をみて、リュシオルは少し考える素振りをしてから、口を開いた。
それは、リュシオルにとっての違和感の話だった。
「エトワール様が言ったとおり、ブリリアント卿は忙しい方だから、手紙を出す暇なんてないと思うの。あったとしても、それは必要最低限、緊急収集だったり、急用があったときぐらい。だから、会いたいという理由だけで手紙を出すのはどうかと……いや、何か理由があったのかも知れないけれど、それでも不思議というか違和感というか」
まあ、これはあくまで私の考えなんだけどとリュシオルは言うと口を閉じた。
私は、彼女の意見を聞いた後、トワイライトと顔を見合わせた。彼女も、私達の話を聞いていたみたいで、ブライトからの手紙に酷く驚いているようだった。別に仲が悪いわけではないし、まあ嫉妬を向けていたりもしたけれど、私と彼女の師匠でもあるから、断る理由も拒絶する理由もないのだろう。
私はどうするべきかと頭を悩ませた。行く方向ではいたけれど、リュシオルの話から、口調からいって欲しくないともとれて、どうすればいいのか分からなくなった。
でも、行かないという選択肢もない。
この間ようやく仲直りできた彼と、彼が言ったまだ話せない、勇気がないと言った話の内容に関してのことかも知れないし。
私は、リュシオルに返した手紙に目線を落す。会いたいとだけ書かれた手紙。どうして、会いたいのかとかそういうのは一切書かれていない。
大きくため息をついて私は、立ち上がる。
「お姉様?」
「会いに行こう、ブライトに」
そう言って、私はリュシオルとトワイライトに微笑みかけた。
不安げな表情をしながらも、彼女達は小さくはいと言ってくれた。
「あ、でも私場所分からないから、リュシオル案内とか……」
そう私が尋ねると、リュシオルはやれやれと言った感じで首を振った後、馬車の準備と行き先について教えてくれた。トワイライトも一緒に行くことになった為、護衛の二人を連れて行くことにもなって。本当は、手紙が来てからその日に行く事なんてないらしいが、私はどうしても気になってその日に行くことになった。変な人と思われてしまうかも知れないけれど、私だって会いたいって言われた相手に、会いに行くんだしこれぐらいいいと思った。
それに、ブライトの所なら大丈夫だろうと楽観視していたところもある。
そして、馬車を走らせ、帝都をでて私達は北へと向かった。ブライトの屋敷がある町まで、さほど遠くはないが、ここと比べると寒いと言われていて昼間の気温も少し低いらしい。
道中も、リュシオルは浮かない顔をしていたし、トワイライトもそんな彼女を見て心配していた。確かに、嫌な胸騒ぎがするときはいかない方がいいとかそうは思うけど、私はそれよりも手紙の内容が気になって仕方がなかった。あっちから会いたいなんて言われたことなかったし、まあ理由が何であれ彼の好感度を回復できればとも考えていた。
そうして、私達はブライトの屋敷に着くと、そこには彼の家の家紋であるフリージアが沢山咲いていた。
屋敷の前に馬車を止めると、慌てたように騎士が近付いてきて、何用ですかときき、トワイライトの顔を見ると驚いたような表情を浮べていた。本物の聖女が尋ねてきたことに驚いたのだろうが、ブライトが呼んだにしては、その反応がまた引っかかってしまった。
それから暫く経って、騎士がブライトを呼んできて私の前に彼もまた慌てた様子で近寄ってきた。
アメジストの瞳を大きく見開いて。如何してとでも言うように。幽霊でも見るような彼の瞳を見て、私とリュシオルの嫌な予感が的中してしまった気がした。
「エトワール様、どうしてこちらに?」