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「海だ〜!!」
そう言いながら砂浜を走る畑葉さん。
「走ったら危ないよ」
そう僕が遠くから言うも
「分かってる〜!」
と返事するのみ。
しかも足は止めないで。
聞いてるんだか聞いてないんだか…
それはそうと畑葉さんの水着の柄は桜柄。
いつものように。
ヒラヒラのフリルが付いていて可愛らしい。
ちなみに家族は遠くの方でBBQの準備をしている。
張り切っちゃってこっちが気まずい。
「あ、古佐くん!私の水着、どう?」
そう言いながらクルリとフリルと共に回る。
「…悪くないんじゃない?」
素直に『可愛い』って言えばいいのに。
そう心の中の僕に言われてしまう。
『可愛い』なんてそう簡単に言えるものじゃない。
「ふふっ、顔真っ赤〜!!」
そう言いながら僕をおちょくる畑葉さん。
「楽しいね〜!!」
そう言いながらどこからか持ってきたバケツで簡易的な砂のお城を作る畑葉さん。
本当にそのバケツどこから持ってきたんだろうか。
楽しそうだから聞くに聞けない。
その時、
「おにーちゃんとおねーちゃんは『かっぷる』なの?」
と後ろから声が聞こえ、振り向く。
そこに居たのは2人の子供。
女の子1人と男の子1人。
「それとも『ふーふ』?」
答えないでいるとどんどん事が大きくなっていく。
「僕たちはカップルでも夫婦でも無──」
「秘密」
僕が答える前に畑葉さんがそう答える。
そして僕の耳元でこんなことを言った。
「子供の夢壊すなんて有り得ない」
って。
まぁ確かにそうだけれど…
『子供の夢』って程じゃないと思うんだけど…
「えー!!秘密だって!」
「ろまんちっく?だね!!」
僕がそう思っている最中も子供たちははしゃいでいる。
「あ、これ返すね」
そう言いながら畑葉さんは持ち主が分からなかったバケツを子供たちに返す。
「おねーちゃん達、ばいばーい!!」
そう言って子供たちと別れた後、
謎に気まずい雰囲気に包まれる。
でも、こう思ってるのは僕だけかもしれない。
だって畑葉さんは楽しげに海で泳いでいるから。
あ、そっか。
さっき子供たちの笑顔を見て畑葉さんを思い浮かべたのは、笑った顔が似ているからか。
そう1人で納得していると急にどこからか水が飛んでくる。
犯人は畑葉さん。
「んへ、びっくりした?」
『んへ』って何だよ…
可愛すぎる…
心の中で悶えていると
「ごめん、怒った?」
と悪いことをして叱られた後の子犬のような顔を向けてくる。
「怒ってない、びっくりしただけ」
そう答えると
「良かった!」
と満面の笑みを浮かべた。
あの後、強引に腕を引っ張られ、
クタクタに疲れるまで海で泳いで遊んだ。
「楽しかったね〜!」
そう言いながら一緒に家族の元へ向かう。
水も滴るいい女な畑葉さん。
ちょっと目のやりどころに困る。
「ちょうどいい時間に来たわね!」
そう言いながら母さんは焼き上がった肉や野菜が乗っかったお皿を僕と畑葉さんに渡してくる。
「それ、何してんの…?」
母さんは網の上に四角いフライパンを置き、
何かを作っていた。
見覚えのある形。
でもBBQでわざわざする?
そう思いながらも聞く。
「卵焼き作ってるだけだけど?」
さも『当たり前でしょ』みたいに言ってくるが、BBQでは卵焼きなど作らないはずなんだけれど。
そう思うのは僕だけなのだろうか。
「卵焼き?!」
「私も食べたいです卵焼き!」
そんな中、1番興奮していたのは畑葉さんだった。
「いいよいいよ〜!食べなさい〜!」
そう言いながら母さんは畑葉さんのお皿に焼き上がった卵焼きを次々と乗せていく。
そして僕のお皿には2つだけ。
まぁいいんだけれども。
「やっぱ美味しい〜!!」
そう言いながらバクバクと卵焼きを頬張る畑葉さん。
『やっぱ』ってことはどこかで食べたことあるんだろうか。
そう思ったが、すぐに思い出す。
あの関節キス事件の時だ。
僕の中では事件並みの出来事。
あの時に食べたんだっけ?
そんなことを思い出しながら僕の口にも卵焼きを入れる。
甘い。
「美味しい、けど」
「今回は甘いのなんですね!」
どうやら畑葉さんも気づいたようだ。
「あれ、凛ちゃん私の卵焼き食べたことあったっけ?」
「古佐くんと会いたてくらいの時に貰って食べました!」
「あらそう」
『貰った』というより『奪った』の方が正しい気が…
そう思いながらも、口に肉を突っ込んで声に出さないようにする。
そんな僕を見て
「お肉好きなの?」
「私の分もいる?」
と言いながら強引に僕のお皿に肉を乗せてくる。
まだ『いる』とか『いらない』とかの返事言ってないんだけど…
そう思いながらも
「ありがと…」
と返す。
「やっぱBBQと言ったら〜?」
「マシュマロ〜!!」
畑葉さんよりはしゃいでいるのは母さん。
相変わらずだ。
ちなみに父さんはというと、遠くで何やら食べている。
多分、おつまみとビール。
行きの運転手は父さんだったけど、
帰りの運転手は母さん。
それが古佐家である。
てか隠れて食べないでこっちに来ればいいのに。
そう思いながらも、理由の検討はある程度ついている。
多分、母さんに『飲みすぎ』って怒られるからだろうなぁ…
そう思いながら、熱々のマシュマロで盛り上がる母さんと畑葉さんを眺める。
「古佐くんも食べる〜?」
そう言われ、
断ろうと口を開けると、
またもや強引に口にマシュマロを突っ込んでくる。
よく家族が居る前でこんなこと出来るなと思いつつも、『美味しい』なんて呟いてしまう。
だって本当に美味しかったから。
僕がマシュマロを焼くと焦げ焦げになっちゃうけれど、僕の母さんは『マシュマロ焼きのプロ』と言っていいほどにマシュマロを焼くのが上手い。
「そういえば気づいたら、もう夏休み終わっちゃうね…」
「そうだね」
「あと3日で学校だもんね」
そんな他愛もない話をしているとBBQの片付けをしていた母さんがすごいことを提案してきた。
「お泊まり会する?」
って。
「ぇ?」
と僕が呟きを零す中、
「いいんですか?!」
「全然構わないわよ!」
と話を進める畑葉さんと母さん。
「お泊まり会って言っても畑葉さんの寝る部屋無いじゃん」
そう反論すれば
「琉叶の部屋があるでしょ」
なんて言われてしまう。
いや、男女が同じ部屋ってアウトじゃないの?
そんな疑問が浮かぶ。
「じゃ、明日から5日間、お泊まり会ね!」
手をパチンと鳴らしながらそんなことを言う母さん。
てっきり学校行くまでの3日間だと思っていたのに。
心の中でため息を零しながらも、僕の胸は高鳴りっぱなしだった。
「ね、楽しみだね古佐くん!!」
そう言いながら僕に顔を近づけてくる畑葉さん。
思わず、1歩下がりながら『うん』なんて短い返事をする。
急に近づかれると、この高鳴りがバレそうで少し怖い。
いや怖いというか恥ずかしいというか…