「はぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁ……」
大通りから少し離れた細い道を歩きながら、俺はクソデカため息をつく。
「げ、元気を出してください、ヤヒロさん。あれは不慮の事故のようなものですから……ね?」
そんな俺をセージが一生懸命に励まそうと、必死に声をかけてくれる。君は本当に天使かな?
結論から言おう、シラギクの店からつまみ出された!
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簡単なあらすじ!
魔力量や属性を調べる水晶に振れようとした俺の横から、妹が乱入して先に水晶にタッチ!
妹に先を越された俺は、渋々妹の後に調べることに。だがしかーし! ここで問題は起きた!
俺の目の前には今、粉々に砕けて破片の塊になったものが一つ!
その周りを取り囲む六人! そのうち、俺を含めた五人が気まづい表情を浮かべている、そんな中! 残り一人はというと、目の前の破片のを見ながら『どうしてこうなった』のかという戸惑いと悲しみ……。そして何より、今回に限っては『誰も悪くない』という『不慮の事故』のせいで、誰にぶつけるのが正解なのか分からない……『行き場のない怒りで呆然なう』という、立ち尽くしている状況なのだ!
現場からは以上!
……と、まぁ、真面目に話をしよう。
なんで砕けたのかは分からない……だが、身内贔屓を差し引いたとしても、今回はこのトラブルメーカーな妹が100%悪いとは思えず……正直、俺自身もどうすればいいのか分からない。
「えっと、その……すまない、シラギク……」
俺は状況が掴めないながらも、絞り出すように謝罪の言葉を口にする。
対する、シラギクはというと。やや放心状態ながらも、ミジンコ並みの理性で返事をするのがやっとだ。
「いえ……大丈夫、です。これは何と言うか……『事故』みたいなものですもんね。私だって、ちゃんと分かってますよ、はい……」
口ではこう言ってはいるが……視線はブレにブレまくり、身体や言葉は小刻みに震えていて……と、誰がどう見てわかるほど動揺している。
「ご、ごめ……ごめんなさ……」
「ほ、本当に……誰も怪我とかなくて、良かったです……はい」
妹の言葉を遮り、シラギクは額に手を当てながら小さく呟く。
「本っっ当……何してくれてんだよ、クソ異世界人ども。正直、フレイファイア女公爵様の関係者であるロキさんや神官様との繋がりがなければ、今すぐにでも即死の呪いで殺したいところですがあえて『思わず死を懇願したくなるほど、ギリギリ死なない程度の生きた状態での地獄』を味わう呪いをかけてやりたい……いや、いっそうのこと女公爵様関係なく、思いっきり呪いをかけてもいいのでは……?」
シラギクさんが、とんでもないことを言い出しなすった。
分かる。大事なもの……プレミアムがつくコレクションが壊されたら動揺するし、怒るのも分かる。俺だって大先生たちの直筆サインとか、数量限定の特典とか壊されたらブチギレる。例えそれが妹だろうと伊織だろうと、多分……いや、確実にブチギレる自信がある。
だからこそ、今は……!
「ま、まってくれ、シラギク……いや、シラギクさん。ウチの妹も本当に悪気はなかったんだ……というか、どうしてこうなったのか俺たちもよく分からないんだ。だからまずはその、話し合いを……」
「呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪……」
分かってはいたけど……めちゃくちゃ怒ってらっしゃるぅぅうっ!
今すぐ本当に呪われそうなくらい抑揚のない声で、シラギクは何度も『呪』という言葉を繰り返し吐き続けている。
……かと思えば。突然『ジロッ』と視線だけをこちらに向けられ、あまりの恐怖に俺たちは「ヒッ…!」小さく悲鳴をあげる。
「あの、大変申し訳ないのですが……私が皆さんをうっかりと呪い殺す前に、この部屋……いえ、この店から出てってもらってもいいですか……?」
どこからともなく取り出した杖を構えたシラギクが、『今すぐにでも殺したい』とばかりの表情を浮かべながら静かにそう言う。
「も、もちろん……喜んでぇ……」
俺は両手を胸の前に上げながら何度も頷き、元のルートを辿って店頭まで戻る。
こうして俺たちは、シラギクの店をあとにしたのだった……。
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