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その日理紗子は順調に執筆を続けていた。

沖縄から戻って以来信じられないくらいに筆が乗り調子が良い。

スランプはどこへやら? といった感じで今は書きたい事が山ほどでトイレに行く時間も惜しい。


ずっと引きこもっての執筆は以前だったら飢える寸前まで行ったが今回は健吾から貰ったレトルト食品のお陰でなんとか生き延びられそうだ。だから健吾には感謝しかない。


でもさすがにそろそろ新鮮な野菜や果物が食べたい。

執筆の方も少し落ち着いたので今日は久しぶりに買い物にでも行くかと理紗子は久しぶりパソコンの電源を落とした。


ジーンズとTシャツの上に麻のカーディガンを羽織るとエコバッグを手にして外に出る。久しぶりに外の空気を吸った気がした。


9月も終わりに近い夕暮れの街中にはなんとなく秋の気配が漂っていた。


仕事帰りの人達が慌ただしく行き交う交差点を見てなんだか懐かしい気持ちが蘇る。

会社帰りに同僚と待ち合わせて飲みに行ったりショッピングをして帰ったり。そういう事とは無縁の生活だなと改めて思う。

しかしその生活に戻りたいかと言われれば答えはNOだ。理紗子は自分には今の生活が向いている事がわかっていた。


スーパーへ行くとかなり混んでいた。

理紗子は買い物かごを手にして店に入って行く。その時中から出てきた女性客と派手にぶつかってしまった。

理紗子は咄嗟に謝る。


「ごめんなさいっ」

「いえ、こちらこそすみません」


相手の女性はそう言うとハッとして理紗子の顔をまじまじと見た。


理紗子の方も女性を見る。歳は理紗子と同じくらいか少し上だろうか? とても可愛らしい雰囲気の女性だった。

女性は左手の薬指に結婚指輪をはめていた。この辺りに住む若奥様だろう。

その時女性が突然言った。


「水野リサさんですかっ?」


突然名前を言われたので理紗子は驚く。


「えっ? あ、はいっ」


するとその女性は満面の笑みで嬉しそうに笑った。


「私、横山真麻と申します。先生の本を全部持っています。映画も観ました! 先生の大ファンです!」


理紗子がぶつかった相手は健吾の妹の真麻だった。


「本をご購入いただいたようでありがとうございます」

「先生がお近くにお住まいだとは知りませんでした。うわぁ嬉しい! このスーパーにはよく来られるのですか?」

「あ、はい。あなたもお近くですか?」

「はい、すぐこの近くです。あ、すみません、プライベートのところを図々しく話しかけちゃって。でも憧れの人にお会い出来たのでつい興奮しちゃって」

「いえ、こちらこそ、本当にごめんなさいね」

「そういえば先生うちの兄をご存知ですよね」

「お兄様?」

「はい、あ、兄は佐倉健吾といいます。先日兄から先生の本とサインをいただきました。本当にありがとうございました」


それを聞いて理紗子はびっくりした。彼女は偶然にも健吾の妹だと言うのだ。こんな偶然ってあるのだろうかとかなり驚いている。


「いえとんでもないです。それにしても佐倉さんの妹さんにここでお会いするなんてびっくりです」

「私もです。まさか先生にお会いできるなんて!」


そこで真麻はハッとして言った。


「あ、なんかお買い物中にお引き留めしちゃってすみません。では私はこれで失礼します」


真麻はニッコリ笑って会釈をすると店を後にした。

理紗子は真麻の後ろ姿を見送りながら呟く。


「イケメンの妹さんはやっぱり美人さんなのね」


理紗子はニッコリ微笑むと改めてスーパーで買い物を始めた。


一方スーパーを後にした真麻は憧れの作家に偶然出会い胸がドキドキしていた。それと同時に別の興奮が押し寄せる。


(お兄ちゃんがあのプレゼントを渡す相手はきっと彼女だわ!)


真麻はそう確信した。


真麻がそう確信した理由は理紗子とぶつかった時に漂って来たローズの香りだ。あれは間違いなく『bonheur』社の製品だ。


最近の水野リサの呟きサイトには南の島を旅している時の写真が何枚もアップされていた。

水野リサは最近まで沖縄にいたのだ。そこでピンとくる。


(確定ね!)


兄の健吾が今夢中になっている相手は水野リサだったのだ。そして兄は彼女を追いかけて石垣島へ行った。


真麻は心臓のドキドキが止まらなかった。この衝撃の事実を早く夫に伝えたい。

真麻はスキップしたい気持ちを抑えながら足早に自宅マンションへ急いだ。


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