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お兄ちゃんは、わたしよりずっと大きくて、なんでもできる人だった。
木登りも、川で魚をつかまえるのも、
いつもわたしに教えてくれた。
でも最近は、布団からあまり出てこない。
ひたいに手をあてると、いつも少しあつくて、
顔も前より白い。
「大丈夫だよ、ミナ」
お兄ちゃんはわらって言うけれど、
その笑顔はどこか弱くて、
わたしの胸がぎゅっと痛くなる。
お母さんは心配そうに薬草を煮て、
おばあさんに祈りをささげてもらっている。
でも、まだ良くならない。
──どうしたら、お兄ちゃん元気になるの?
その夜、わたしは星空を見ながら思った。
あの女王さまなら、きっとお兄ちゃんを助けてくれる。
だって、笑顔花も、卵も、
女王さまの魔法のかけらだったんだから。
「お願いを、ちゃんと伝えなくちゃ」
そう決めたら、胸の中がすこしあたたかくなった。
でも、どうやって女王さまに気持ちを伝えればいいんだろう。
──そうだ。おてがみを書こう。
小さな机に紙を広げて、
わたしは鉛筆をぎゅっとにぎった。