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「Rから預かっている言葉がある」
老人は静かに立ち上がった。
逃げるべきか。
話を聞くべきか。
俺は美咲を見る。
美咲も迷っている。
老人は少し笑った。
「警戒するのは正しい」
「この状況なら、私もそうする」
その口調は落ち着いていた。
組織の人間なら、もっと強引なはず。
「あなたは誰なんですか」
俺が聞く。
老人は少しだけ考えてから答えた。
「ただの清掃員だよ」
「……え?」
「貸倉庫の掃除をしている」
意外な答えだった。
「Rとは、その仕事で知り合った」
老人はポケットから小さな鍵を取り出した。
銀色の古い鍵。
持ち手には数字が刻まれている。
**28**
「これを君に渡してほしいと頼まれた」
俺は鍵を受け取る。
冷たい。
でも少しだけ重い。
「これは何ですか」
「私も知らない」
老人は首を振る。
「Rは中身を教えてくれなかった」
「知れば巻き込まれるから、と」
美咲が口を開く。
「Rは無事なんですか」
老人の表情が曇る。
「……昨日までは生きていた」
その一言だけだった。
俺はそれ以上聞けなかった。
生きていた。
でも今日は分からない。
老人は腕時計を見る。
「もう行きなさい」
「ここに長くいると目立つ」
「最後に一つだけ」
老人は俺をまっすぐ見た。
「Rはこう言っていた」
一拍置く。
「**鍵は扉を開けるためじゃない**」
「……え?」
「**閉じるために使え**」
意味が分からない。
俺が聞き返そうとした時だった。
老人はもう歩き出していた。
「待って!」
呼び止めても振り返らない。
角を曲がる。
俺と美咲も追いかける。
でも。
そこには誰もいなかった。
一本道。
隠れる場所なんてない。
「消えた……?」
美咲が小さくつぶやく。
その時。
俺の手の中で鍵が小さく揺れた。
カチャッ。
鍵の持ち手が外れ、中から丸められた紙が落ちる。
「中に何か入ってる!」
急いで広げる。
書かれていたのは住所でも地図でもない。
たった一つの数字。
**204**
そして、その下に手書きで一言。
**『時間がない』**
(第三十五話へ続く)
コメント
1件
おお、第34話めっちゃ刺さったわ……!「鍵は扉を開けるためじゃない、閉じるために使え」って台詞、物語の全体像が一気に深まった気がして震えた。老人の存在感も絶妙で、「ただの清掃員」って名乗るあたりが逆に怪しくてカッコいい。鍵の仕掛けで204の数字が出てきたのも、次の展開にワクワクが止まらん。時間がないって急かされてる感じ、るしゅさんの構成力マジで好き🔥