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コンクリートの冷たさが膝に伝わるが、それ以上に亮太さんの存在そのものが冷たかった。
「なんでっ……どう、して……ここに……っ?」
息がうまく吸えない。
酸素が足りず、視界がチカチカと明滅する。
亮太さんは涼しい顔で俺の前にしゃがみこむと
俺の顎を強引に持ち上げ、無理やり視線を合わせさせた。
「本当に鈍感ですよね……危機管理能力がまるでない。僕に毎晩あとをつけられていたことにも気づかないぐらいなんですから」
言葉の端々に、粘つくような執着が潜んでいる。
「同窓会。楽しそうでしたね。皆さんと談笑しながら笑っている様子……遠くから見ていましたが、とても素敵でしたよ。そしてとても──不愉快でした」
「なっ、な、んで……それ……っ」
「見てましたから。他の男の車で送ってもらって、あんなに幸せそうな顔をして……先回りしてここで待っていたんですが、恋くんは誰の物なのか、もう一度徹底的に教え直さなければならないようですね?」
ぞわりと鳥肌が立つ。
彼の目の奥には光など微塵もなく、ただ真っ暗な執念が渦巻いている。
「いっ、いや……け、警察……呼ぶ……呼ぶから……!」
震える声で精一杯の抵抗を口にする。
唇が痙攣し、言葉が上手く紡げない。
床に尻をついたまま、背後の壁に必死に背を押し付けようともがくが
足は恐怖で鉛のように固まり、立ち上がる力さえ奪われていた。
スマホを探す指が、何度も空を掴む。
焦れば焦るほど、ポケットの入り口が分からなくなる。
「……へぇ? 警察?できもしないくせして」
亮太さんの目が一瞬鋭く細まり、嘲るような笑みが浮かんだ。
次の瞬間、亮太さんが壁を強く蹴りつけた。
衝撃が壁を伝って俺の背中を揺らし、心臓が跳ね上がる。
「相変わらず、口答えしかしないんですね。可愛くない」
その声には明らかな苛立ちが混じっていた。
亮太が一歩踏み出す。
靴底が地面を擦る音が、死神の足音のように響いた。
逃げ場はない。背後のドアが、冷たく俺の背中を拒んでいる。
(尊さん……っ、助けて、怖い……)
頭の中で必死にその名前を叫ぶ。
あの日、「いつでも呼べ、お前の盾になる」と言ってくれた尊さんの力強い声が、意識の底で反芻する。
震える指がようやくスマホを捉えた。
ポケットの中を掻き回し、滑り落ちそうになるのを必死に堪えて取り出す。
画面の明かりが眩しい。
ロック解除のパスコードを打ち込む指が、自分のものではないように滑る。
(早く……早く……尊さん……繋がって……!)
「はぁっ……はぁっ……」
過呼吸寸前の息遣いの中、やっとの思いで連絡先から「尊」の名前を見つけ出す。
タップする動作さえも指が痙攣して上手くいかない。