テラーノベル
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「それ、かなりやべぇヤツじゃん。警察には?」
「言ってない。だって、あくまでもインターホンを鳴らされたり、後を付けられたりするくらいで……実害があるわけじゃないもの」
「何かあってからじゃ遅いけど……まあ、そうだよな。その程度じゃ警察もすぐには動いてくれねぇか」
「うん……。何とかして正体を突き止めたいんだけど、なかなかね」
「職場ではどうなんだ? そういう怪しい視線とか感じたことは?」
「そうだね……職場ではないかな」
「ってことは、職場の人間ではなさそうか。元カレとかは?」
「えー……ない、とは思いたい。でも、最近急に始まったことだから元カレって線はないと思うんだよね」
「そっか」
界人は少し考え込むように黙ったあと亜佑美を見る。
「まあ、とにかく気をつけろよ?」
「うん。ありがとう」
そう言って亜佑美は少しだけ笑ったので、一旦は安心したものの界人は気にしていた。
その日の昼休み、亜佑美はいつものように同僚たちと連れ立って昼食を食べる為に会社の外へ出た。
すると、普段なら昼休みを一緒に過ごすことなどほとんどない界人が後ろから声をかけてきた。
「俺も一緒にいい?」
「北丘が? 珍しいね」
「まあ、たまにはいいだろ」
「もちろん、いいよね?」
「うん」
界人も加わり近くのカフェへ向かった。
昼食の間はいつもと変わらない様子で亜佑美も界人も安心していたのだけど、店を出て会社へ戻ろうとした時だった。
ふいに界人が亜佑美の横へ並び、周囲には聞こえないほどの小さな声で呟いた。
「……尾けられてる」
「え?」
思わず立ち止まりそうになった亜佑美に界人は前を向いたまま続けた。
「振り返るな」
その一言で亜佑美の背筋が凍る。
「…………誰か、分かる?」
「いや、分からない。けど、さっきからずっと後ろにいるんだよ、多分偶然じゃない」
界人の声は低く冗談を言っているようには聞こえなかったので、亜佑美は平静を装い前を向いたまま歩き続けた。
心臓の鼓動だけが大きくなっていくのを感じ不安になる亜佑美だけど、
「大丈夫、何かしてくるようなら今は俺が守ってやるから」
界人のその言葉に安心して何とか会社に戻ることが出来た。
その後、同僚たちと別れて界人と二人きりになる。
「帽子被ってマスクしてたから顔は分からねぇけど、背は低くめで小太りってとこだな。そういう風貌の男に心当たりは?」
「…………ない」
「そっか……。とりあえず、この情報はお前の彼氏にも共有した方がいいな。教えておいてやれよ」
「う、うん……そうだね、ありがとう」
こうして亜佑美は界人に言われた通り、朝陽に情報共有することにした。
亜佑美からメッセージを受け取った朝陽は内容を確認するなりすぐに電話をかけると、数回の呼び出し音のあと電話が繋がった。
「もしもし亜佑美さん。大丈夫なんですか!?」
開口一番、心配そうな声を響かせる。
『うん……ごめんね、急に』
「謝る必要なんてないですよ。それで、その男に心当たりは?」
『ないの……。だから誰なのかまでは分からなくて……』
「そうですか。でも容姿が分かっただけでもこれから気をつけるのに役立ちますから」
『うん……そうだよね』
少し安心したような亜佑美の声に朝陽も僅かに息を吐く。
「でも……よく分かりましたね。確認する時、相手に気づかれたりはしなかったんですか?」
『あ、その……相手に気づいたのは、私じゃないの』
「え?」
『実は、同期の男の子に被害のことを話してて。それで、たまたまお昼を一緒に食べに行った時に後をつけられてることに気づいてくれたの……』
《同期の男の子》という言葉を聞いた瞬間朝陽の鼓動が大きく跳ね、脳裏に浮かんだのは以前亜佑美と楽しそうに歩いていた界人の姿だった。
(あの男の人か……)
そう思った途端、それまで感じていた心配とは別の感情が朝陽の胸の奥から湧き上がってくる。
亜佑美が被害のことを相談していただけでなく、昼食まで一緒に食べていた事実に胸の奥がざわついて仕方がなかった。
『朝陽くん?』
突然黙り込んだ朝陽を不思議に思ったのか、電話の向こうから亜佑美が名前を呼ぶ。
「……あ」
その声で朝陽はハッと我に返った。
「す、すみません……」
『どうしたの?』
「いえ、とにかく……詳しい話はまた後で聞かせてください。もう仕事に戻らないとならないので……すみません」
自分の気持ちを悟られないよう何とか平静を装うと、昼休みの終わりを告げるチャイムが無情にも鳴り響いた。
『うん、分かった。忙しいところごめんね。お仕事頑張ってね』
「はい、亜佑美さんも頑張ってください」
『ありがとう』
名残惜しさを覚えながらも朝陽は電話を切った。
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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#大人ロマンス
瑠璃マリコ
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重田💋(omoda)
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コメント
1件
今回のエピソード、すごくハラハラしました……。界人くんが「尾けられてる」「振り返るな」と低く囁く場面、一気に緊張感が走って鳥肌が立ちました。それでいて亜佑美さんを守ろうとする頼もしさも感じられて、彼の存在が心強いなと。そして最後、朝陽くんが“同期の男の子”という言葉に嫉妬する描写がとても人間らしくて。好きな人が誰かに相談してる、しかも一緒にご飯……って、そりゃ胸がざわつきますよね。心理描写が繊細で、感情移入しながら読めました🌷