テラーノベル
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画面の消えたスマートフォンを見つめながら朝陽は思う。
同期とはどのくらい仲が良いのか。
普段から昼食を共にしているのか。
お互い、どう思っているのか。
そんなことばかりが頭をよぎる。
「……俺、何やってるんだろ……」
自分でも呆れる程の嫉妬心に朝陽は小さく息を吐いた。
亜佑美を心配しているはずなのに、気づけば別の男の存在に心を乱されている。
そんな自分の感情に苦笑しつつ、朝陽は仕事へ戻っていった。
一方亜佑美は、
「……朝陽くん、元気無かった……また心配させたよね……負担かけ過ぎてるし……」
朝陽の様子がどこか変だったことが気になり、昼休みの出来事といい不安な気持ちは増していくばかりだった。
仕事を終えた亜佑美が休憩室で朝陽が迎えに来るのを待っていると、スマートフォンが震えた。
確認するとメッセージが届いていて、道路が混んでいて少し遅れそうだという。
「まだ帰らねぇの?」
そこへ声をかけられて顔を上げると界人が立っていた。
「うん。彼が来るのを待ってるの。道路が混んでるみたいで少し遅れるって」
「ふーん」
界人はそれだけ言うと亜佑美の隣に腰を下ろし、持っていた缶コーヒーのプルタブを開けて何気ない様子で口をつける。
「あのさ、お節介かもしれねぇけど、俺も何か協力出来ない?」
「え?」
思いがけない申し出に亜佑美は目を瞬かせた。
「お前の彼氏じゃ勤務中まではどうにもならないじゃん? その点、俺なら助けられるし」
「確かに……そうだけど」
亜佑美が戸惑いながら答えると界人は缶コーヒーを片手に苦笑した。
「まあ、彼氏からしたら面白くねぇかもしれないけどさ、ストーカー被害って甘く見てると危ねぇだろ。協力出来る人間は多いほうがいいと思うんだよな」
その言葉に亜佑美は思わず息を呑んだ。
「……ありがとう。私が話したせいで、余計な心配かけてごめんね」
「別に、気にすんなよ」
「その……私としては事情を知っててくれる人が身近にいるのはすごく心強いから」
亜佑美は一度言葉を切り、少しだけ考えてから続けた。
「だから、そのことも含めて彼にも相談してみるね」
「ああ」
それから少しして亜佑美のスマートフォンに着信が入る。
「朝陽くん、お疲れ様」
『お疲れ様です。今、着きましたよ』
「ありがとう。あのね、朝陽くんと話したいって人がいるんだけど、少しだけいいかな?」
『話したい人?』
電話の向こうから返ってくる声がほんの少しだけ低くなる。
「その……同期の男の子なんだけど……」
亜佑美がそう告げると朝陽は一瞬黙った後、
『……分かりました。構いませんよ』
「ありがとう」
朝陽の返答に亜佑美はほっと息を吐いた。
「それじゃあ今から一緒に降りていくね」
『はい』
それだけ言って切られた電話。
朝陽の鼓動は煩いくらいに騒がしい。
(あの男の人が、俺に何の話があるんだろ……)
突然の展開に心を落ち着け、平静を装いながら亜佑美たちが来るのを待っていた。
「朝陽くん、お待たせ」
亜佑美がそう声をかけると、その隣にいた界人が一歩前に出た。
「……どうも。初めまして、北丘です」
軽く会釈をして名乗る界人に朝陽も同じように頭を下げる。
「初めまして。藍島です」
互いに簡単な挨拶を交わしたものの、どこかよそよそしい空気が残る。
「……この辺りだと例の男がいるかもしれません。ひとまず場所を変えましょう。乗ってください」
朝陽が周囲を警戒しながら車を示すと、
「……失礼します」
促された界人は後部座席へ乗り込み、亜佑美は助手席に座った。
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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走り出した車内はどこか気まずい沈黙が流れている中、ふいに亜佑美のスマートフォンから着信音が鳴る。
「あ、陽向くんからだ」
「陽向から?」
朝陽が尋ねると亜佑美は小さく頷いた。
「きっと朝陽くんは運転中だと思って私にかけてきたのかも。出るね」
「はい」
そう言って亜佑美は通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『あ、亜佑美サン? もう兄ちゃんと合流した?』
「うん。今、一緒にいるよ」
『そっか。俺、今××駅にいるんだけど、拾ってほしいんだよね』
「そうなの?」
亜佑美は電話口に返事をしてから、運転中の朝陽へ顔を向けた。
「陽向くん、今××駅にいるから乗せてほしいんだって」
「分かりました。それならちょうどいいですね。そのままどこか店に入って話をしましょうか。陽向も一緒に」
「うん。それがいいね」
亜佑美は再びスマートフォンに向き直る。
「陽向くん、これからそっちに向かうから少し待っててくれる?」
『分かった。じゃあ改札出たとこで待ってる』
「うん」
こうして急遽、陽向とも合流することになり、駅に到着すると近くのコインパーキングに車を停めて三人は陽向の待つ場所へ向かう。
「陽向くん、お待たせ」
亜佑美の声に陽向がこちらへ振り向くと、その視線が亜佑美や朝陽の後ろにいる界人へと移り、開口一番率直な疑問を口にした。
「……そいつ、誰?」と。
コメント
1件
みぅです🖤 うわ…62話、すごい空気感だったね。 朝陽くんの嫉妬心、自分で「何やってんだろ」って思っちゃうとこ、すごく人間らしいなって思った。しかもそれを表に出さずに平静装ってるところがまた切ない。 界人くんが「協力できる人間は多いほうがいい」って言った言葉、めっちゃグッときた。ストーカー被害に真剣に向き合ってくれてる感じがして。亜佑美さんもちゃんと「彼に相談してみるね」って言えるの、いい関係だなあ。 最後の陽向くんの「…そいつ、誰?」で終わるの、続きが気になりすぎる〜〜!!笑