テラーノベル
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条件が出揃うと仕事を休んでいる今のうちに決めてしまおうと、二人はさっそく不動産会社へ向かった。
希望する条件を伝えるといくつか候補となる物件を紹介してもらい、その中から気になった物件を実際に見て回る。
立地や間取り、周辺環境などを二人でしっかり確認していき、最終的に二人が選んだのは亜佑美の職場から徒歩十分もかからない場所にあるマンションだった。
駅にも近く、二人が求めていた条件の多くを満たしている。
唯一の問題は想定していたよりも家賃が高いことだった。
「いい物件が見つかって良かったですね」
物件の契約を終えた帰り道、朝陽が満足そうな一方で、
「うん……。だけど予定してた家賃よりだいぶ高めだよ? 本当に良かったのかな」
亜佑美は少し不安そうな表情で隣を歩いていた。
立地が良くセキュリティーもしっかりしているからこそ家賃が高くなるのは仕方がないと分かっていても、当初の予算から大きく外れてしまったことが気になっているようだ。
そんな亜佑美の様子に朝陽は、
「そこは俺が多めに持つので大丈夫です」
「朝陽くん……」
「それに、あのマンションなら亜佑美さんの職場から駅までの道にありますから北丘さんに送ってもらう時も丁度いい場所だと思いますし、何よりセキュリティーがしっかりしているので多少は安心ですから」
家賃のことばかりを気にしていた亜佑美とは違い、朝陽が一番に考えていたのは亜佑美が安心して暮らせる環境で、朝陽にとって何よりも譲れない条件だった。
「……ありがとう」
小さくこぼれた亜佑美の言葉に朝陽は照れたように笑った。
「どういたしまして。これから二人で暮らす家ですから妥協したくなかったんです」
「……そっか」
その言葉に納得した亜佑美は、これ以降家賃についての話をすることは無かった。
新居が決まった週末、朝陽と亜佑美は界人と陽向を自宅へ招き、四人で食卓を囲んでいた。
食事も一段落したところで朝陽が新居について報告すると二人は嬉しそうに頷いた。
「そっか、無事に決まったんだな」
「良い物件があって良かったな」
二人から祝福され朝陽も亜佑美もほっとしたように笑っていた。
「ありがとうございます。北丘さんには、これから負担をかけてしまうことも多いと思うんですけど……亜佑美さんのこと、よろしくお願いしますね」
そう言って頭を下げる朝陽に界人は気にするなとばかりに笑った。
「任せて。いつでも力になるから」
すると陽向もすぐに続ける。
「俺も協力するからいつでも言ってよ、兄ちゃん」
「ああ、陽向もありがとう」
「それで、いつ引っ越すの?」
「急なんだけど、二週間後の土曜日に」
「その日なら予定もないし、手伝えることがあれば手伝うよ」
「手伝ってくれるなら有難いです」
それを聞いた陽向も手を挙げるようにして言った。
「俺もその日はバイトないから行けるわ」
「なら頼むよ」
「業者には?」
界人の問いに朝陽は首を横に振る。
「鍵はすぐにもらえるので、運べる物は少しずつ自分たちで運ぼうと思ってるんです。家具や家電もこの機会に買い換える物も多いので、北丘さんや陽向が手伝ってくれるなら業者には頼まなくても大丈夫かもしれません」
「そうだな。男三人いれば家具なんかも何とかなりそうだ」
「確かに」
そんな三人の会話を聞いていた亜佑美が申し訳なさそうに口を開いた。
「北丘くんも陽向くんも……ごめんね。迷惑ばっかりかけて」
その言葉に界人は笑って首を横に振る。
「気にするなって」
「そうそう。困ったときはお互い様」
二人の言葉に亜佑美は胸の奥が温かくなる。
新しい生活を始めることへの不安はまだ完全になくなったわけではない。
それでも自分たちを気にかけ力を貸してくれる人たちがいる事実が何より心強かった。
管野アリオ
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#大人ロマンス
桃下結衣
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重田💋(omoda)
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コメント
1件
第71話、読ませていただきました。新居が決まって、いよいよ二人の生活が形になりつつあるのが嬉しいですね。朝陽が「亜佑美さんが安心して暮らせる環境」を何より優先する姿勢にじんわりきました。家賃を気にする亜佑美に「俺が多めに持つ」と言い切るのは頼もしい。界人と陽向が手伝いを申し出るシーンも温かくて、孤独じゃないんだよって伝わってくるのが良かったです。不安はまだあるけれど、支えてくれる人がいる心強さ──こういう関係性が丁寧に描かれていて、ほっとしますね。